― はじまりの裏側 ― (4)a
【境界】の様子が気にはなっていたが、此岸でも問題が生じていたため、一切の関わりを断って大陸で過ごしていたときのことだ。
なんの前触れもなく膨大な記憶が洪水のように流れ込んできた。
入ってきたとはいえ、時間にすれば一分に満たなかっただろう。だが、直接受け取ったのは最初の頃以来だ。
誰の記憶だと辿っていけば、最後の方は目が見えないのかなにも映っておらず、大半は薄暗い空間をただ眺めているだけの記憶。さらに遡るとようやく別の情景が現れたが、思わず眉をひそめた。
かなり昔の時代だ。それが、なぜ今になって……?
気づくなり愕然とした。
今しがた死んだ者は、【境界守】として定められていたものだった。
これはまずい……ものすごくまずい!
なにも見ることも聞くこともなく、無言のまま感情を動かすこともなく彼岸へ渡った【境界守】の状態は最悪だった。
(急ぎ戻らなければ――!!)
死んで彼岸経由で戻ればすぐだが、それでは駄目だ。これはおそらく此岸から対処しなくてはならない。さらに余計な消耗を控えなくてはならない。
忙しなく棲家を始末し、大陸を離れる段取りをつけ終えた頃、二人目の記憶が流れ込んできた。
焦燥感ばかりが募り、荒れる海原を強引に渡らせ、ようやく陸地に着いたとき、三人目が彼岸へ渡った。
いや、己のもとにきた【魂】の残渣以外の彼は、新しき生命になることはないだろう。
この者の状態は、前の二人とはあまりにも違っていた。




