― はじまりの裏側 ― (2)b
……両親とは似つかぬ色を左眼に宿した赤子は、産み落とされてすぐ父親によって、投げ捨てられた川面に浮かびながら思案していた。
己の記憶二人分、子供、さらには幼いまま彼岸へ渡ってしまった見たこともない孫……。
なにが原因で己は、己とかつての血に連なる者の記憶を有しているのか。
いや、己自身の記憶だけならばまだわかる。彼岸では削ぎ落としきれなかった【魂】が、此岸に戻ってきたがゆえと断定できる。
だが子や孫は、己よりも妻たちの性質の方が色濃いはずだ。己とはただ血が繋がっているだけである。なのになぜ? そして、いつまで?
そう、それが肝心だ。血が途切れるまで、連なる者すべての記憶を有しなければならないのか?
(なんとしても、この原因を突き止めなければ――)
川に流され、見知らぬものに助けられても、必死に己の過去をさらっていた。
助けられた人に育てられていたとき、ふいに思い出した。兄に押しのけられたため、出遅れて産まれたせいで両親から初めて浴びせられた、あの忌々しい言霊を。はっきりと――。
だが、対処するには遅すぎた。せめて最初に此岸で生きていたときに、相殺あるいは緩和させておけば、まだ救いはあった。
兄の血に連なる者がいなくなれば……。
だがこれも無理だ。すでにかなりの数のものが此岸にいるし、己が殺すこともできない。それに、己の血に連なる者が彼らを護ろうとするだろう。
あれこれ考えた挙句、最終的になにもしないことにした。唯々、此岸で勝手に過ごし(時に己の血に連なる者を陰日向に助けてやり)、死ねば彼岸へ渡ってを繰り返し、己と血縁の記憶を淡々と有していった。(ありがたいことに、最初以外の己には生殖能力がまったく備わっていなかった)




