― はじまりの裏側 ― (2)a
日が昇るとともに、するりと生まれてきた兄は盛大な産声をあげ、両親に祝福されると、日嗣の御子となった。
日が暮れてから再度産気づいたものの、宵闇が深くなるまで母を苦しめた末、ようやく産み落とされた弟は、生きも絶え絶えな母親とそれを気遣う父親にしばらく無視されていた。
なぜならその赤子は、産声をあげることなく、闇を凝縮させたような黒い右眼、星を散りばめたような青銀色の左眼がしっかりと開かれていたために。
やがて両親は、産まれたばかりの弟に残酷な言霊を与えた。
――兄たる日嗣の御子と、その血に連なる者を、己と己の血に連なる者で、永久に護れ。すべての血が絶えるまで……――
兄は自由気ままに動き回り、弟は静かに兄を護り続けた。
やがて、兄弟はそれぞれ妻を迎え子も生まれた頃、兄は両親からすべてを受け継いだ。弟は四人の妻から生まれた子供八人を祖とさせ、兄やその妻子らを護るための道筋を創った。
子供らがさらに血を繋げていこうとする頃、兄をかばったために弟は彼岸へ渡った。
ようやく己の役目は終わった……はずだった。
……おぞましいものを見るかのように凝視している父親の瞳に映っている己を見て、産まれてきたばかりの赤子は、泣きもせず戸惑っていた。
黒い右眼と青銀色の左眼。そして産まれてから死ぬまでの記憶を持っていることに……。
(なんでことだ――)
新しい両親にも疎まれながらも、前世の記憶を奥底に押し込めどうにか成長した頃、またしても戸惑った。
前触れもなく知らない人の生い立ちが、頭の中に入り込んだ。いや、その中の情景には覚えがあった。前世の己の子の一人の記憶だった。
さらに時がたち、二人目、三人目の子の記憶を取り込んでから彼岸へ渡った。




