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― 立春に還る ― (4)d
松伯から聞き取りをしながらも、女の様子を窺っていた。不完全な状態だが、最低限の情報は自動的に得ているように感じられた。
「のう、シキ? この女はまこと生きとるのか? 起きとるようだが、おかしいぞ?」
「正確には半分死んでいるようなものですね。【魂】が抜けています。さて、どこで落としたのか……」
此岸で抜け落ちたなら、蘇生は可能だが。
とりあえず、女の耳元に六カ所の国を囁く。その中の一国に微かに反応があった。念のため、並びを変えて再度囁く。やはり同じ国で反応する。
「ほう、この状態でも聞こえておるのか。我の声にはまったく反応しなかったのに。面白いな……」
松伯も女の動きに気づいたようだ――脅え、逃げるような微かな身じろぎに。
「氷見の井戸から入り込みましたね」
北陸の小藩だ。
立ち上がり棚から虫籠を取ると、松伯を振り返る。
「しばらく出かけてきますが、外を見たり出たりしないように」
どうなっても知りませんよと、好奇心の虫を抑え込ませ、女が逃げないように注意しておいてください、と小声で告げる。
「うむ。大人しくしていよう」
反抗することなく頷いてきた低く重い声を背に、姿を消した。




