― 立春に還る ― (2)a
二月初頭の休日――。
珍しくなにも予定がないため、一人のんびり新聞をめくっていた手が、ふと止まった。
目に飛び込んできたのは、老舗デパートによる創立記念セールの一面広告。その告知の文字ではなく、使用されている写真だ。
見覚えは……ある。昔、見たきりなのに、不思議とはっきり……。
コロン。
自動的に還るように施したはずのものが、なぜ残っていて、しかも今になって表舞台に出てきたのか。だが、知ったからには、さてどうやってと考え始めた矢先、それが落ちてきた。
開き切った真っ黒な松笠――このタイミングでくるかと、手に取ろうとすれば、タシッ、コロコロとテーブルから転がり落ちた。
空中で難なくすくいあげ、はたいた犯人、もとい長いしっぽではたき落して、新聞の上にドカッと座っている犯猫を見据える。右眼が青、左眼が黒のほっそりとした黒猫だ。
「なにが気になってんの?」
ややハスキーな声が黒猫から発せられた。が、それを不思議がることなく片手で黒猫のあごをくすぐり、片手で松笠をもてあそんでいた。
「そんなに気になるなら、いつものように占じればいいじゃない……」
とっくの昔に死んだ人間を調べるぐらい簡単でしょ――。たしったしっと不機嫌そうにしっぽを振っている黒猫を無表情に見つめる。
「……なぜ調べる必要がある。出てきたからには回収する。どこにあろうと、どんな状態だろうと、ただ、それだけだ」
え、なにそれ? と目を丸くしている黒猫を抱えると開催場所を確認し、外出の準備をするために立ち上がると、重さを全く感じさせない黒猫を床に放った――。




