― 立冬に迷う ― (5)d
父にいつまで突っ立ってるんだと呆れたように言われるまで、私たち三人は立ちつくしていましたね。
一息ついたのを見て、父はテーブルに置かれた封書の一つを姉夫婦に渡し、庭園の管理人として、平屋に住むようにと言い渡しました。
姉夫婦は一切のためらいもなく了承しましたね。後で聞いたところ、子供はそれぞれ一人暮らしをしていること。住居である団地が近々建て替えられること。また義兄は書道家、姉は日本画家として活躍しており、ともに利用できる広いアトリエが欲しかったこと。そして驚いたことに姉は、結婚前にすでに義兄や義両親に、あの庭の管理人として就くことを伝えていたというのだ。そして義兄と二人で、頻繁に庭師から手ほどきを受けていたらしい。
次に父は、私にも別の封書を渡し、中を見ろと言ってきました。入っていたのは、四枚の名刺と、広範囲な土地の権利書です。
驚いて父を見ると、苦笑しながら、
「井戸端のみは保持して、後は好きにしろと申せられた。理由は儂に問うな。ただお前のことが頭に浮かんだらしい。いやならお前から断りに行け」
私はただ、「わかった」とだけしか言えませんでした。
父も何も言わず、軽くうなずくと、あの庭について、一族の役割について、そしてあの少女について語った後、「庭を頼む」とだけ言いました。それが、父の最後の言葉です――。




