↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
境界守  作者: 琥珀猫
PR
29/89

― 立秋に誓う ― (4)c

 ――さて、ある一人の男がいた。いや少年である。北の地に生まれ、左眼が青いせいで山に捨てられ施設に放り込まれた、がりがりに痩せ細った十歳の子供であった。

 ふらふらになりながらも一年ぶりに来たのを見るや、どつかれて転んだところで頭を膝に押しつけられた。

「たわけ、このたわけっ、シキのたわけ~!」

 ポカポカと叩きながら櫻妃が耳元でわめいた。力が込められていないから、さほど痛くはないが、叩かれ続けるとさすがに堪える。

 「わかった、わかったから……」

 叩くのをやめた代わりに、今度は両頬をぐいーっと引っ張ってきた。肉などろくについていないから、こちらの方が痛い。

 「ほうひ……ひゃめひゃいや……」

 離すやいなや、ぽかんと頭をひとつ叩いてきた。

 「いつからそんなに暴力的になったんです?」

 「うるさいっ。知らんわ、このたわけ!」

 やれやれ、しばらく黙っているか、ちょっと疲れ気味だし……。

 「のう、シキ。無理をせず彼岸にしばらくいたほうがよいのではないか?」

 泣きそうな顔を素直に晒して覗き込んでくる。だが、発育不良な体を酷使しているのは承知の上だ。

 「二人にも同じことを言われたけど、できるときにやっておかないと……」

 「そちは強情だからのう……」

 はあっと深くため息をつかれたが、そういえばと話を変えてきた。

 「妙な言伝ことづてがあるらしい」

 「誰に?」

 「わからん」

 「なにそれ?」

 「いや、持ってきたものは、そんなに多くはない……」

 主に西から南に坐している【境界守】たちからだという。

 「でだな。てんでばらばらの短い言伝なんだが、ちと気になるものがあるのだ」

 いくつもの単語を言ってくる。字面が違えば異なる意味合いだ。だが……。

 身を起こすと、常にポケットに忍ばせてあるいくつもの小石を取りだし放る。ばらばらと散らばった黒と白の小石を見つめ、拾い、また放る。それを何度も繰り返す。

 最後に放ったものをじっと見つめ、チッと舌打ちをして小石を仕舞い、ぽすっと櫻妃にもたれて目を閉じる。

 「いやだなー、なんで同じことをしないといけないんだよ。……いやだなー、なんでこうなるんだよ。誰の采配だよ……。意味あるのかよ……」

 「……シキ?」

 櫻妃が優しく髪を撫でてくるが、今はなにも見たくない。棒切れのような細腕で目を覆い隠し、ぽつぽつと愚痴を紡ぎだす。

 しばらくして目を開けると、片腕をあげ櫻妃の顔に添えた。

 「誰の意思であれ、それが必要であればやってやる。動けというなら賭してでも動いてやる。文句などいわせるものか。完全に完璧にやってやる!」

 だから櫻妃、今世で会うのはこれで最後だ……。

 触れてくる腕を下ろさせ、櫻妃は気にするなとかぶりを振った。

 「さようか。なれば今は休め」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。