― 立秋に誓う ― (3)d
そのまま何歩か歩くと、いきなりあたりが白っぽくなった。
「久しぶり、白丸、黒丸。通らせてもらうよ」
「どうぞなのです、シキ」「通行料は置いていくのですよ、シキ」
「わかっていますよ」
愉しそうに笑いながら、抱えている瓢箪を二つ、彼ら(ぼくの半分ぐらいの大きさで立っている白ネズミと黒ネズミ)に渡してといわれたので、どうぞって渡すと、彼らは嬉しそうに受け取って、
「行ってくるといいですよ、坊ちゃん」「楽しんでくるんですよ、坊ちゃん」
手(前足?)を振ってくれたので、ぼくも振り返した。
歩きだす前に姉さまに、歩いている間は目を閉じて声を出さないようにといわれたので、ぎゅーって目をつぶる。
どのくらい歩いたのかわからないけど、立ち止まって誰かと話していたので、そろそろと目を開けてみた。
「久しぶり花蓉。通らせてもらうよ」
「おや、かわいい同行者つきですか、シキ」
ぼくと同じぐらいの年の着物を着たおかっぱ頭の女の子に、三つめの瓢箪を渡すと、また歩き始めた。
「久しぶり、吉翁……おやどうしたんだい?」
目を開けたら、お坊さんみたいな恰好をしたおじいさんが、バタバタ走り回っていた。
「これ……です! これっ! なんとかしてくだされ!!」
「蜂か?」
風呂敷を足下に置くと、ポケットから紙を取り出し、ブーンっておじいさんを追いかけ廻しているもの目がけて飛ばした。紙は蜂にぶつかるとくしゃくしゃって丸くなり、どこかへ消えていった。
「いきなり……現れてっ……ずーっと……」
ぜーぜー喘いでばたって倒れてしまったおじいさんを放っておいて、姉さまは同じような紙を何枚かどこかに飛ばしていた。
「ちょうど入口に巣を作ったんだな。駆除しといたから、もう大丈夫だよ。ほら」
「た、助かります、シキどの……」
まだ起き上がることができなそうなので、ぼくから最後の瓢箪を取り上げ、おじいさんの側に置いた。
風呂敷を持ち上げたので、また歩くんだなあと目をつぶろうとすると止められた。
「声を出さないと約束できるなら、開けていてもいいよ」
いいの? って首を傾げると、別に見るものはないが、少し長く歩くからいいらしい。
姉さまの姿を見ているだけでも安心できるので、お口にチャックをしたけど、話したいときは? 「今のように頭に浮かべなさい」
歩きながら姉さまは、足を止めた場所は【境界】というこの世でもあの世でもないところで、彼らは【境界守】と呼ばれる番人のようなものであって、ここは【境界】を繋ぐ通路であるとのこと。次の【境界】が目的地であり、一年に一日だけ会いに行くこと。
この世でどの辺にあるの? って思ったら、ぼくの家の近くの無人の神社、市内のお寺、県内のとても大きな神社にある池で……これから行くところは南の地方にあるとのこと。
それとぼくはいわゆる幽体離脱状態であり、体はちゃんとベッドで寝ているんだとか。
頭にいろいろ浮かべると、答えられることは話してくれた。(姉さまは普通に声に出して話している)
えっ、なんで普通に会話してんのかって? だって姉さまだから……じゃ駄目? でも、姉さまが色々不思議なことができるのは、小さいころから知っているし。これもナイショだけどね、ぼくが生まれる前からのつき合いなんだ。だから、今さら驚かないよ。




