乙女 12
ルリアはネックレスの入った箱を見つめたまま、固まっていた。
頭の中には前世の小説とゲイルの言葉がぐるぐると回っている。情報の整理と理解が追い付かない。
「ルリア」
しばしの沈黙の後、ゲイルがルリアの名前を呼んだ。ルリアの顔を見つめる瞳には困惑と少しの安堵が浮かんでいた。
ここ数十日、ルリアの全身から感じていた拒絶感が消えている。
全く身に覚えのない浮気を疑われ、理不尽な思いはあるものの、ようやく話ができ、問題点と解決策の見えてきた現状に少しの安堵を感じていた。
名前を呼んでも返事が返ってこない。
今度はルリアの頬に触れながら、もう一度名前を呼んだ。
「…ルリア」
ゲイルに触れられ、ふいに顔を挙げたルリアの瞳いっぱいにゲイルが写る。
(近っ!!)
ルリアの心臓が跳ねた。
動揺のあまり、一歩下がりながら、踵を返した。
「あっ……わ、わたし……へやっ……部屋に戻りっ」
ルリアが扉に駆け出しながら、言いかけたセリフは、ゲイルの腕の中に捕まった事で途切れてしまう。
「駄目だ。話は終わっていない。」
ゲイルの優しい声の中に含まれた、絶対に逃がす気のない強い意思を感じたルリアは、肩をびくりと跳ねさせた。
昔から、ゲイルが声を荒げたことはない。怒りや悲しみ、謗りや呆れは、あえて優しく話す言葉の奥に含ませていた。
後ろから抱き込まれる様にして、腰に回された腕の強さに、逃げなければと焦りながら、腕を引き剥がそうとするが、びくりともしない。
片手に抱えていた箱が視界に入る。
箱を渡した隙に逃げようと、後ろ手に箱を差し出した。
「こっ、これを……」
ルリアの意図を察したゲイルは、箱を受け取らずに小さく息を吐いた。
「…………そうだな。本来収まるべき場所へ収めよう。」
ゲイルは、ルリアの腰を掴んだ腕を少し緩めると同時に、引きちぎってしまったルリアのネックレスを握ったままの手をルリアの膝下に入れ、横抱きにする。そのままソファへと戻り、腰をおろした。
ルリアを膝に乗せ、腰を掴んだ腕はそのままで、引きちぎってしまったネックレスをルリアに渡す。
「……このネックレスの対は誰が持っている?」




