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第一章3「冒険の始まり・・?」

第3話です。今回も読もうと思っていただきありがとうございます。


そして紅葉は相変わらずです。

 

「ーー初めて言われたな。」


 綺麗と、名前の感想には適さないであろう言葉に対し、苦笑の笑みを浮かべながら目を逸らし、返答した。


 その心境は、表向きではあるものの白黒世界に多少なりとも慣れてきていた反面、何処か納得できておらず、心の底から面白みのかけらもない世界を受け入れることができそうにもない、といったように複雑そうだ。


 そんな解けずにいる絡まった糸に、刃を差し込んでくるように、紅葉が心配そうに少しの沈黙の後に、とある提案をしてきた。きっと、表情に出ていたのだろう。


『ま、自己紹介も済ませたことだし、そろそろ移動しよっか!

 多分君って此処、初めて来たと思うし、せっかくだからこのあたしが直々に案内をしてあげよーじゃないの!』


 それは、まさしく地獄に舞い降りてきた救いの糸だ。やはり膝枕をされていた状況から自己紹介をしてーという流れが終わり、圧倒的に気まずい空気が流れてもおかしくはなかった。そんな空気を破壊する前に、そもそも作らせまいと、先陣を切ってくれた紅葉には多少なりとも感謝をしなければならない、なんて彼は密かに考えながら頭の後ろを掻きながら待ちきれなさそうにしている紅葉に言葉をかえす。


「そりゃ嬉しい限りだな。よろしく頼むぜ紅葉!」


 一瞬、彼女が面食らったような表情をしたことはーー彼以外知ることはないだろう。



 ◆◇◆◇



「はぁ....はぁ....ちょ、今これどこ向かってんの??」


 どうやら先ほどまで彼らがいたのは名前も、高さもわからない山の山頂だったようだ。それも息も絶え絶えになりながら、彼は我先にズカズカ進む紅葉にできる限りの声量で問いを投げ飛ばす。其れを聞いた紅葉は体ごと振り返り、後ろ歩きをしながらかなり漠然とした回答をする。


『街よ』


 流石の彼も漠然としすぎた回答に、はぁ?と喉から出そうになるところを抑え、再び質問をする。


「街ってさっきの場所か???今のオレがいったらかなり不味くねぇか??」


 そもそも彼が召喚された場所が街かどうかも不明ではあるが、少なくとも人がいたり、建物があったりと、街と仮定しても不自然ではないだろう。召喚された場所を街と、彼は自身の不安を打ち明ける。

 それを聞いた紅葉は首を傾げながら彼にかける言葉を選んでいた。その様子に「おーい」なんて掛け声を言葉をかけるも紅葉は一切反応を見せない。どうやらかなり深く考えているように見える。


『あぁーー!!君そういえば意識なかっtーーーーあああああ!?!?!?』


 束の間の沈黙の後、突如として声を上げた紅葉だったが、躓いたのか、物凄い勢いで急斜面を転がっていく。必然的に声も遠くなっていき、紅葉が言わんとしたことを聞き取れなかった。

 後ろ向きで、尚且つ整備されていない坂を下れば、必然的に辿り着く結末であることを紅葉は理解していなかったのだろうか。もしやコイツは非常に頭がよろしくないのだろうか。

 今の一瞬の出来事から彼が思い描く紅葉の人物像は、大きく変化してしまった。初め出会った時、慣れないこの世界で唯一頼もしい存在だと思っていたがーーもしかするとただのドジっ子精霊人かもしれない。


「何してんだあいつ.....」


 ため息をつき、あまりにも華麗に転がっていた紅葉の軌跡を急いで辿っていく。其れが自分の問いの答えにつながることを信じて、モノクロの木が生い茂る道を一歩一歩進み始めた。



 ◆◇◆◇



 長い長い軌跡を経て、おそらく山の麓と推定できる場所にたどり着いた。ところどころ荒れていたのを見るにおそらく体勢を直そうとしたことが見て取れる。


『やあやあーー!!』


『あれれ??随分と遅かったじゃないの!体力ないねぇ〜』


 山の麓にあるベンチに腰をかける紅葉は傷だらけだった。あまりにも目立つ赤色のジャージには黒い泥のようなものがこべりつき、彼女の髪は気持ちよく寝ている所を、叩き起こされたかのようなボサボサの寝癖の如く、杜撰になっていた。少々早くなった声で恥ずかしい自分の失態を隠すように、彼女は目を泳がせ、強がっていた。


「ーーふっ」


 あえて彼は紅葉の慌てふためいた様子に触れることなく、鼻で小馬鹿にしたような笑いを見せる。俗にいう嘲笑というものだ。まさか異世界に来て初笑いが嘲笑になるとは思ってもいなかったがーー其れを本能的に、馬鹿にされていると読み取ったのだろうか、紅葉がすかさず言い訳を並べ始めた。


『違うの違うの違うのーーー!!!!』


『あれは急に話しかけてきた君のせいでリズムが崩れたし、しかもこの山の斜面すっごく滑るの!!絶対あたしのせいじゃないからーーー!!』


 必死に弁明する紅葉に憐れむような視線を送る。とはいえ、たしかに彼が話しかけたのが事の発端にあるのは隠しようがない事実であるため、彼はこれ以上は触れないでおこうと、同意だけして話をすり替えようと。


「ーーそ、そうだな」


「まぁ正直今知りたいのは紅葉のドジなんかじゃなくてーー結局オレたちは何処についたのかが知りたい」


『だーかーらー!!.....ふぅ....そ、そうね。今あたしたちがいるのはローム山の麓。まぁあたしたちが来た方向とは違うから安心していいと思うよ』


 可愛い女の子には意地悪をしたくなるのは男の性だ。わかったように同意したが、わざとらしく意地悪をしてみたが、これ以上は紅葉に通じないようだ。彼女は深呼吸をし、己を落ち着かせて本当に彼が知りたかったことについて語り始めた。

 ローム山ーー彩人たちがいる山の呼称らしく、正式名称は「コダク・ローム山」というらしい。今彩人たちがいる地域で一番壮大で、その地域の中央部に我が物顔で居座っている山であり、彩人たちがいる国が出来る前からあったと、言われている。二つの街に挟まれるように鎮座しており、その高さと超える手間から、どちらの街の住民からも疎ましく思われているようだ。疎まれているだけはあり、登り下りだけでも数時間はかかるらしい。

 

「ローム山か.....その名前を聞くとこの山はアカっぽい感じがするな」


『え!!ローム山は君のジャージと同じ色かもしれないのぉ!?』


「まぁ....そうだな。オレの偏見だけどな」


 紅葉に初めて教えた色の名が再び出たのに対し、彼女はわかりやすく反応を見せた。其れに対し彼は誤魔化すように返答し、深掘りしなかった。

 というのも、彼は「ローム」という語、山という情報から関東地方に広がる火山灰が風化してできた赤茶色の土ーー関東ローム層を連想させていた。だが、異世界で其れが通じるとは到底思えず、紅葉を混乱に陥らせてしまう可能性があったために、彼は説明を省いた。


『よし!!また面白いことも聞けたし、早速街の探索へ行kーーゴゴゴゴ』


 明らかにおかしい音が、紅葉の腹部から聞こえてくる。彼女は思わず腹を抑え、顔を紅潮させたーー最も、白かった顔肌に陰りが出来ていたに過ぎないが。お腹の鳴る音が異常にでかいこと、そして彼女にも羞恥を感じる感性があった事に驚きながら彼は照れる彼女に声をかける。


「あーーそういや腹が減ったな....探索は何処かで腹ごしらえしてからにしようぜ」


 彼が紅葉を気遣い提案したのに対し、彼女は目を輝かせながら同意の言葉を返す。


『なーーんだ!君もお腹が減っていたのね!もうしょうがないなぁ〜()()()()いうならあたしの行きつけを紹介するわ!!」


 明らかに強調された言葉につい言い返したくなるがグッと堪える。異世界住民の彼女の行きつけとまでいう程の店を此処で反論して教えてもらえなければたまったものではない。事実、彼も腹を空かせていた。紅葉が鳴らしていなければ先になっていたのは彼の方だったかもしれない。

 

「んじゃ、さっさと行こうぜ」


 彼は遠く、小さく見える街に向かって歩みを進めながら、彼女を急かす。


 やっと始まる。白黒の世界での本当の第一歩に、彼は内心心を踊らせていた。この距離からでも栄えているのがわかるあの街に行き、めちゃくちゃ優遇されて、華やかな生活が待っている、なんて妄想を膨らませていた。そんな希望と夢に溢れた表情を読み取ったのだろうか、彼女が放った衝撃の一言に彼は度肝を抜かれた。


『ああそっちじゃないよ!?あたしたちが行くのはこっちよ!!』


 彼女が指をさした真横の方には、明らかに空気が悪そうな、スラム街のような街がかすかに見えていた。距離的にも彼女が指をさした街の方が近そうにも見える。どうやら夢を見ることを神は許してくれないようだ。一生あの街で、贅沢する事なく、薄汚い白と黒の情景を眺めながら生きるという、召喚前の世界での罪を背負わされているかのようだ。

 勝手に期待を膨らませ、打ち砕かれ萎えている彼だったが、紅葉が今までにない程低いテンションでぽろっと独り言のように溢した言葉を聞き逃さなかった。



『ーーまだ帰りたくないし』



 出会って間もないが、ある程度紅葉について知ることができたという自負はあった。その中、告げられたネガティブな言葉の真意を理解できなかった。其れでも彼の記憶に定着するには十分すぎるほどのインパクトがあった。


『ほーら!早く行かないと日が暮れちゃうよー』


 いつもの紅葉に戻ったのは声で分かった。戸惑う彼を置いて我先にと道を進む彼女の背中に追いつくため、ついていくしかなかった。


 今が昼間だという事実に驚く余裕はなかった。





最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


山を降りて、いざ街に行かんとする中発せられた最後の一言ーーどんな意図で発せられたのか


続く4話をお待ちください!


感想や批評、お待ちしております。

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