面倒なことばかり
最後まで面倒を見るといっても、どうしても一度国に帰らないとダメなシオンは奥の手を出した。
「どこでも話せるんです君~~」
(ど◯◯もん風に)
ユグドラシルの杖から作った『電話機』であった。
「なにこれ?」
「これは秘密にして欲しいのじゃが、遠く離れていても会話ができる魔導具なのじゃ」
!?
「そんな便利なものがあるの!」
「こ、これがあれば戦が変わるぞ!?」
スカーレットとアクダマー伯爵は驚いた。
「女神様から頂いた神器から作り出したものじゃ。それほど量産はできんのでな」
「ちなみに何個ほど作れるの?」
シオンはどう答えるか悩んだ。
作ろうと思えばいくらでも作れるからだ。
「10個ほどじゃな」
すぐにスカーレットは頭で計算した。
「3つほど貸してもらえる?」
「なんじゃ3つでいいのか?」
もっと多く寄越せと言ってくると思ったシオンは拍子抜けした。
「私とアクダマー伯爵、そして南の司令官の所に持っていくわ」
「なるほど。では電話機に数字をつけておくので、かけたい相手の数字を押してから、この受話器を上げれば繋がるのじゃ」
「ふむふむ、そうよね。誰にかけるか選ばないといけないもんね」
こうして長い会議が終わりシオンは一度国へと帰るのだった。
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国境砦にて──
シオン達はバルド元帥と状況を話してから王城へ戻った。
「どうやら『影』の実力は十分の様だな。すまないがしばらくはアスティア王国の動向を探って欲しい。資金は渡しておく。もし進行してきた場合は進軍を遅らせる工作を頼む」
『はっ!お任せください!』
資金を受け取ると影達はすぐに散っていった。
「しかし、遠く離れた場所の者通しがリアルタイムで話せるとは・・・姫殿下にしか作れないとはいえ凄まじいな」
スカーレット達に渡したのは固定電話の形をした黒電話と呼ばれる物だった。ダイヤル式の代わりにボタンを押して特定の電話と会話する無線に近いものだ。しかし、影たちが持っているのはガラケーと呼ばれる携帯電話の形をしたもので持ち運びしやすい形だった。城を空けることの多いシオンは、一部の配下にこれを渡していた。
無論、レグルス王国の両親にも渡してあるので、毎晩の様に連絡が来ている。
影の者には自分の命よりも携帯という神器を守れと厳命している。
と、いう訳で遠隔通話が可能となったシオン達は格段に動きやすくなったのだ。
しかし、城に戻るとヤバいことになっていた。
「シオン姫殿下♪お帰りなさいませ☆」
セツナのテンションがヤバかった。
「えっと・・・ただいま?」
「ええ、本当にお帰りなさいませ。それで、言い残したことはもうないですか?」
ビクッ!?
シオンはクロードに視線を送るがクロードは視線を逸らした。
裏切り者がーーーー!!!!!クロード!お前もかっ!?
微妙~に名場面を見せつつシオンは首根っこを掴まれてプラ~ンとぶら下がった。
「痛いのじゃ!」
「痛くしているんです!皇女殿下と旅行に行くようなことを言っておいて、敵地に乗り込んで各地の領主を退治して回るなんて聞いてませんよ!」
「うぎゃー!ギブギブッ!悪かったのじゃ!!!!!」
シオンは本気で涙目となりセツナに土下座して謝ることになるのだった。
『本当にすごい絵面だな。女神様の愛し子にここまでできるのはセツナしかいないだろうな』
本気で心配しているからこそ叱るセツナに反論できる訳もなく、セツナのお説教は夜遅くまで続くのであった。
それからしばらくは溜まった書類整理をひいこらと頑張って処理していく日々が続いた。
夜の報告(電話中)
『てな訳で、視察も兼ねてプリンセス・ガードを東に派遣したわ。時期的には到着はギリギリになりそうだけどね』
「帝都から数日はかかるからのぅ。それは仕方がないのじゃ』
『それと南の司令官の名前がわかったわ。実際にあったことはないんだけど、ライゲン将軍って方が隠居して南の国境砦に赴任しているそうなの』
『おおっ!なんか強そうな名前じゃのぅ!』
『現役の時はそちらのバルド元帥とも戦ったことがあるみたいね。詳しくはバルド元帥に聞いてちょうだい』
『了解なのじゃ!』
『ライゲン将軍にも東のアスティア王国の進軍の件は伝えておいたから動いてくれるけど・・・・』
『何か懸念でもあるのかのぅ?』
『エルフの国にも動きがありそうで、援軍の派遣ができるかわからないかもと連絡を受けたのよ』
!?
『まさか2国は繋がっておると?』
『昔から仲が悪いと有名だからね。それはないと思うけど、漁夫の利を狙っているのかも知れないわ」
ふむ、ドワーフと帝国が争っている間にどこかの領地を奪おうというのかのぅ?
『今は国境の動きが騒がしいということで狙いがわからないから密偵の報告待ちね』
『しかし、そうすると帝都からの援軍のみで支え切れるのか心配じゃな』
『私の権限で動かせる兵力は全て動員するからなんとか支え切ってみせるわ。多少の領地が削られた方が帝国には良いって知ったからね』
スカーレットの言葉に二人は少し笑うと電話を切るのだった。
しかし、数日後、予想外な事が起きて帝国の未曾有の危機に陥るのに、今は気づくことが出来なかった。




