対面!
屋敷に入るとアクダマー伯爵を待つことになった。
「ほほぅ?なかなか立派な応接室だな」
応接室とは来客を迎える部屋の為、見栄を張って豪華にする傾向がある。
その家の財力を示すためや、領主が狩った毛皮や剥製を飾って趣味を見せたりと、そこの屋敷の主人の性格が分かるものでもある。
「そこに飾ってある儀礼用の鎧と剣はアスティア王国の物だな。流石に技術力がすごいな」
スカーレットは感心したように見た。
「このソファーはレグルス王国の物じゃな。絨毯やテーブルもそうじゃ」
そこでふと気づいた。
「帝国産の物がないのぅ?」
「確かに。まぁ、応接室ですから輸入品を自慢したいのでしょう」
『ふむ?果たしてそれだけの理由かのぅ?』
シオンは気になったが情報が足りないので切り替えた。
「そう言えばアクダマー伯爵は10年ほど前にこの辺りの領主になったと門番は言っておったが、それまではどうしておったのじゃ?」
「シオンの所に行く前に調べたけど、元々は王宮の官僚だった見たい。対立していた『ゼンダマー伯爵』との政争に負けて地方領地に追いやられたようなの」
「ふむ?それで帝室を恨んでおるのじゃろうか?」
「そこまではわからなかったのよ。政敵のゼンダマー伯爵は恨んでそうだけどね。これも少し複雑で、この両家って遠縁に当たるのよね。それなのに違う派閥に入ったりとか確執があってね。今では完全に敵同士の認識みたいなの」
「複雑な事情がありそうじゃな~」
そうな話ているとドアが開いた。
「お待たせして申し訳ない。それと複雑な事情などありませんぞ?ただゼンダマー伯爵が気に入らないというシンプルな理由です」
!?
話を聞かれた!?
マズイのぅ。話の主導権を取られたかもしれん。
シオンは警戒を強めた。
「突然の訪問すまない」
「いいえ、私もスカーレット皇女殿下には話がありましたのでちょうどよかった」
『アクダマー伯爵が私に話だと?』
警戒しながら尋ねた。
「それで話とは?」
「いえ、私より皇女殿下の要件から伺いましょう。まぁ、だいたいは察しておりますが」
「ほぅ?それはどういう意味だ?」
アクダマー伯爵はソファーに座ると続けた。
「北部の圧政についてと、民がノルン聖王国の保護を求めている件ですな?」
シオン達は身構えたがアクダマー伯爵は手で制した。
「別に驚かなくてもよろしい。目的の為とはいえ私が無能な者やバカな代官を据えた為に北部の民に苦労をかけている自覚はありますので」
「ならば何故このような真似をした!目的とはなんだ!」
スカーレットはテーブルを叩いて言った。
「昔の帝国に戻す為です」
「昔の帝国?どういうことだ?」
「今の帝国は無駄に領土を広げたせいで、大陸中の為にほぼ全ての国と隣接しています。その為に国防費が帝国の財政を圧迫しており、すでに財政破綻しそうな状態なのです」
!?
「それは人ごとではないのぅ」
「それが何故、北部の民を・・・あっ」
言いかけてわかってしまった。
「私は元々、帝都で財政に関わる仕事をしておりました。貴族達の不正もありますが、帝国はこのままでは財政破綻して破滅する。故に、新しい画期的な政策か、大規模な改革が必要と訴えたのですが、現状を変えたくない保守的な貴族達に阻まれ、辺境に追放された訳です。だから私は辺境でできることを実行したのです」
「お主、まさかわざと無能な代官を立てて、民が帝国から他国に領地の鞍替えを願うように仕向けたのか?守る領地が減れば防衛費も減るからのぅ。大した税収のない領地であれば他国に渡した方が良いと考えたのか?」
アクダマー伯爵は黙って頷いた。
「なんてことを・・・」
絶句してスカーレットは言葉が出なかった。
「じゃが、それだけではあるまい?アスティア王国と組んでいるのかは知らぬが、反乱を起こそうとしているのではないか?」
「ほう?それはどんな根拠でそう思った?シオン姫殿下殿」
アクダマー伯爵はシオンのことにも気づいている。しかも子供だと甘く見てもないようだ。
「まだ証拠は掴めておらぬが、頻繁なアスティア王国からの輸入と、この町の商品の他国からの輸入品の多さを見れば交易品以外のやり取りもしているだろうと予想がつく。じゃが、お主には兵士がおらん。ならばどうするか?支援物資を集めて、敵国を引き込み、帝国の領地を奪わせようとしておるのじゃろう?隣接する国が減れば兵士を集中させて、他の場所を減らせれるしのぅ。そうすれば国防費はかなり減るじゃろうて」
アクダマー伯爵は初めて目を開いてシオンを見た。
「末恐ろしいですな。そこまで状況証拠で読めるとは。しかし皇女殿下や姫殿下のお陰で北部の鞍替えは立ち消えました。真っ当な代官が着任すれば税収も上がるでしょう。だが──」
アクダマー伯爵の顔の目つきが変わった。




