絶対に嫌じゃ!
シオンはバルドの言っている意味が理解できず聞き返した。
「す、すまぬ。もう一度言ってくれぬか?」
「はい、帝国の北側の領地の民達が帝国の支配から抜けて、我がノルン聖王国に加わりたいと連盟で書状が届いております」
先ほどより丁寧な言葉でバルドは説明した。
「聞き間違いではなかったのじゃーーー!!!!!」
シオンは叫んでしまった。
「どうしてそうなったのじゃ!」
ただでさえ国を征服して一年じゃぞ!
その他の領地など管理できんわ!
「姫殿下が難民を保護したからかと」
「だからそれでどうして国を鞍替えすことになるんじゃ!」
怒っている姫殿下は可愛い・・じゃない、セツナはバルドが持ってきた資料を読みながら答えた。
「えーと、なになに、先の侵略戦争で多くの若者を徴兵したにも関わらず、敗戦し多くの働き手が亡くなった。それなのに、帝国の代官は減った税収を補おうと、今までの税収を1.5~2倍近くに上げられたと訴えてますね」
「なんじゃ、その無能は?」
シオンはようやく冷静になることができた。
「直接、徴兵されなかった地方にも、敗戦の皺寄せがきて税率を上げると通達がきたそうです。ただでさえ高かった税がこれ以上上げられると生活ができないと訴えています」
「一応聞くが、今まではどのくらいの税率じゃったのじゃ?」
「40%みたいですね」
「高いのぅ。まぁ、旧クレスト王国は二公一民じゃったから比較ができんが」
※二公一民、年貢の3分の2を取られてた。税率だと70%
「それでを1.5倍じゃと軽く50%以上納めろと言っているようではないか。元々帝国が征服した土地とはいえ、これでは反乱を起こしてくださいと言っているようなものじゃぞ?」
!?
「おい、まさかそれが狙いなのかのぅ!?」
「いえ、現地の代官はそんなことは考えていないようですよ」
セツナが資料の数字をじっくりと見ながら答えた。
「この資料を信じるなら帝国の『本当の税率は30%』ですね.こっちの数字が不自然に10%上がっていますので」
「代官が10%を上乗せして懐に入れておるのじゃな」
「はい、恐らくそうでしょう」
さて、どうするかのぅ?
いい意味では労せずに新しい領地が手に入る。
が、その新しい領地が問題じゃ。
統治は比較的に問題なくできるじゃろう。クレスト王国のように税率を下げて真っ当な領地運用をすれば良い。
じゃが、帝国北部を手に入れると、他国と繋がってしまうのが問題じゃ。現状、そこまで国境に面するところに兵士を配置できん。それに帝国と多くの領地を面してしまうので、先と同じように兵力の配置ができん。
そもそも、いきなり帝国に次ぐ国が出来上がってしまうと、他国も警戒するじゃろう。
今度こそ、自由連合国と帝国が共同で襲ってくることも考えれる。
つまりメリットよりデメリットの方が大きいのじゃ。
どうにか帝国で引き取って貰えるよう考えた。
シオンは椅子の上で座禅を組んで、ペロッと指を舐めて両手を足の上で組んで目を閉じた。
ポクポクポクポク・・・・
ピッコーン!!!!
閃いたのじゃ!
「そうじゃ!先の帝国の戦で後詰めに来ておった部隊がおったじゃろう?」
「えっ?ああ、そうですな。確か第一皇女、スカーレット・バルトス皇女殿下でした」
うむ、その者のことは調べたので知っておる。
『帝国の良心』と言われておる逸材じゃ!
「セツナ、すぐに手紙を書くぞ。スカーレット殿にこの資料を丸投げするのじゃ」
「えっ、受け入れないのですか?せっかく領地がただで手に入るのに?」
シオンは今しがた考えたことを皆に話した。
「なるほど。確かに領地が広がればいいと言うわけではないのですね」
「増えたら増えたで余計に大変になることがわかりましたよ」
セツナやクロードは理解を示した。
「スカーレット皇女に親書を送り正しい税率に戻せばこの話はなくなるじゃろう」
「流石は姫殿下です!」
セツナはいつも通りヨイショッとしてくるがバルドだけは喜んだ顔ではなかった。
「どうしたのじゃ?まだ何か懸念事項があるかのぅ?」
「いえ、帝国の腐敗は酷いと聞いております。これも氷山の一角でしょう。また何か動きがあるかもしれないと思いまして」
「その時はその時じゃ。妾達にもできることと、できないことがあるのじゃ」
「そうですな。引き続き、調査員を増やして目を光らせておきます」
「うむ、頼むのじゃ」
こうしてシオンはスカーレット皇女に親書を贈ったのだった。
代官の不正の証拠の分厚い資料とともに。




