どうして・・・
こうしてシオン達は国境砦の近くに難民村を作った。
「取り敢えず小麦をユグドラシルの杖で繰り返し育ては刈っては育てて、水車で粉にして千人は一年ほど食べられるほどは蓄えができたのぅ」
目の前にはゲッソリしているシオンとノルン騎士団がいた。
少し考えれば分かることである。神器で育てた植物はすぐに育つとはいえ、『収穫』しないといけないのだ。トマトやキュウリ、ナスビなどハサミで収穫すればすぐに食べられるが、小麦はそうではない。米と似た工程で粉にしないと食べられないのだ。
まぁ、メリットとしては長期保存できることだけど、育った小麦はノルン騎士団にて人海戦術を使って収穫した。シオンが風魔法でサクッと刈り取って、騎士団が束ねて収穫。脱穀して水車の石うすで粉に。思った以上に疲れる作業だった。
「もう嫌じゃ・・・」
ガクッと難民村の一室で机に伏せるシオンがいた。
「農民の有り難さが身に染みますね」
セツナもできる範囲で手伝っていたので疲れていた。騎士団も疲れてはいたが、普段鍛えているためまだ動けていた。
「いやー、良い訓練になりました。収穫の時は民の支持率向上の為に、収穫を手伝うのもありかも知れませんね」
笑顔でそういうクロードにシオンは少し殺意を覚えたのは仕方がないだろう。
取り敢えず難民達の受け入れが終わり、シオンの建てた家に各自が住み、『住民カード』を首から下げて身に着ける事を義務付けられた。
何年かしたら正式な国民として受け入れる。その時はそのカードを外しても良いという条件で難民達は喜んでその案を受け入れた。
「移住した難民達からは喜びの声が上がっており、今の所不満は上がっていません。下準備した田畑を早速、耕しています」
「頑張ったかいがあったのぅ」
セツナにお茶を入れてもらい報告書を読んだ。
コンコンッと、ドアのノックが聞こえてきた。
「失礼します」
「おお、バルド元帥ではないか」
「少し困ったことが起きまして相談しようと伺った所、姫殿下が難民村にいると聞いてやって来ました。
「それはすまなかったのぅ。それでどうしたのじゃ?」
バルドは持ってきた資料を机に置いて話した。
「まず、旧ノルン教会の司教達の報告から。現在の司教達が今地位に付く前からノルン教の上層部はスノーガーデンの魔薬の存在を知っていたようです」
「なに?そんな前かじゃと?」
「本部の司教以上の者しか知られておらず、大きなミサを行う時に、少量の『香炉』を焚いて信者にノルン様に祈りを捧げることで、不安や薄れて幸せな気分になると語って信者を増やしていたようです」
「呆れてものがいえぬわ。ノルン様を冒涜しよって!」
「姫殿下が怒るのも無理ありません。ただ姫殿下が台頭するまでは帝国の傍若無人のせいでノルン教の信者が減っており、近年は大規模なミサは行えなかったようですな」
「ああ・・・過去に女神様が召喚された勇者の国じゃったな。女神様の意思を勝手に解釈して他国を攻めるとは、この国の傲慢さも救い難いのぅ」
「ええ、女神ノルン様の名を借りた侵略行為は許せませんな。しかし近年、旧ノルン教会のせいで女神様の力が衰えたとのことで、女神様も帝国に苦言を伝える神託を出せなかったのでしょう」
「うむ、そうじゃな」
あの神聖な女神様が帝国の行動を無視するとは思えん。かなり力を失っていたのであろうな。
シオン達の女神ノルンに対する想いは天上限界を突破しそうな勢いであった。
元々、ノルンにはそのような崇高な思いはなく、日本から召喚した若者に、異世界の技術を発展させ、文化レベルが上がるの期待していたに過ぎなかったのだから。
「魔薬の事は、昔の教会関係者が偶然見つけたらしく、それ以来、秘密裏に受け継がれていたようでした」
「教会の上層部のみという事は、しばらくは魔薬の存在が知られることはなさそうじゃな」
「はい。取り敢えずスノーガーデンの魔薬の件はこれで大丈夫かと思います」
これで1つ肩の荷が降りたのぅ。
「それで、本題なのですが・・・」
おっと、困った事が起きたと言っておったのぅ。
「おお、そうじゃ。何があったのじゃ?」
「そ、それがですな・・・」
バルドは言いにくそうに言った。
「姫殿下が難民に対して、受け入れて手厚い保護をした事が周囲の地域に知られましてな・・・」
「なんじゃ、帝国から非難の声でも上がったのかのぅ?」
まぁ、帝国にしては人材が流出しては税収減になるからのぅ。流石に戦争を行うだけの戦力はまだないじゃろうが。
「………帝国の北側の領地一帯が、我がノルン聖王国に恭順したいと、連盟で書状が届きました」
「はっ?」
シオンはバルドが何を言っているのか理解出来なかった。
恭順とは、帝国からノルン聖王国に加わりたいと言う意味で・・・




