支援
シオンはセツナの提案を受け入れ、国境の城壁の前に、テントを作り、炊き出しを行い時間を稼いだ。
「とはいえ、タダ飯をいつまでも配る訳にもいかぬ」
食糧は有限なのじゃ。
「取り合えず、手に職のあるものを振り分けて、すぐに使えそうな者達は国境近くの街で職の斡旋を行なっています」
「しかし、難民の多くが老人や身体に障害のある者達じゃからのぅ」
「そうなんですよね。流石に全ては面倒を見れないかと」
会議室で重い空気が流れた。
「せめて自分たちの食い扶持は自分達で生計を立ててもらわないと、我が国の民でも不満が募りますね」
そうなのじゃよ。
他国の民のために自分達の納めた税金が使われるのは気持ちの良いものではないからのぅ。緊急支援で一回のみとかなら良いのじゃが、それがずっと続くと話は変わってくる。
「あ、そうじゃ。取り合えずうちの方で受け入れて、国境砦の近くに難民の村を作くるのはどうじゃ?」
「ふむ、まぁ老人達や障害者達が多いのなら反乱を起こしても対応できるか?」
クロードは今後、起こり得る事態を考えていった。
「老人達でも多少の畑仕事はできますし、最低限の生活基盤が整えば、足りない分だけの支援で済むので経費を抑えられます」
情報担当のセツナは秘書の観点から分析していった。
「まぁ。ノルン様から頂いた『ユグドラシルの杖』を使ってみるかのぅ」
「「神器を使われるのですか!?」」
二人は驚いた様子でハモって尋ねた。
「道具は使ってこそじゃ。植物を操る能力があるといっていたので、当分の食糧は生産できるじゃろう」
なかなか神の道具を気軽に使うなど考えられないことであった。
しかしシオンは気にしない風にあっさり使うと言うのだ。
二人は女神様の不敬を買わないのか心配したが、困った民を救うのに使うのになんで怒るのじゃ?と言われて何も反論できなかった。
シオン達は前回、帝国兵の屍を量産した国境砦に視察も兼ねてやってきた。
「う~む、思っていた以上に数が多いのぅ」
ざっと見渡しただけで300人以上の難民がテントで暮らしていた。
「これだけの食糧を毎日ともなると国の負担が大きいのじゃ」
バルド元帥も同行していたので意見を聞いてみた。
「もし敵の間者が紛れ込んでいても見つけるのは困難です。正直、国に招き入れるのは賛成しづらいですな」
「確かに・・・」
クロードも同意するが・・・
「いや、これだけの難民の受け入れを許可するのじゃ。向こうにも多少の『枷』(カセ)は認めさせるのじゃ」
「枷ですか?」
「うむ、国境を通る時に、どこの町の誰かと、『住民票』を作成する。国全体では数が多すぎて無理じゃが、難民の数百人ほどであれば可能じゃろう」
「すみません。住民票と言うのは?」
「うん?一人一人の国民をを国で管理すると言うことじゃ。反乱の時などに点呼を取って住民票にいない人物を特定したり、税金を払ったかどうかを個別にわかるようにするためじゃな。冒険者ギルドのようにカードにして、身分証代わりにしても良いかも知れぬ」
!?
「そ、それがあれば国政に大いに役立ちますね!」
「そうなのじゃが、今の技術では全てを管理することはできぬ。当面は犯罪者か、難民対策で作成して運用するのが良いじゃろう」
シオンの発案に文官の一人であるセツナは大いに感動していた。
『これはお城に戻ったら他の内政府の官僚と話し合って見ないといけませんね』
後に、世紀の大発明の政策と言われることになる。
シオンは練習のためにユグドラシルの杖を使って建物を建築した。
「おお、完全に魔法で作るよりは応用が効くの!」
前は窓やドアまで作れなかったが、ユグドラシルの杖を補助に使うと想像したものが作れた。
ちなみに、窓はガラスではなく木の板でできており、手前に引くと窓が開く仕組みの物である。
「さて、住居はよしとして、次は田畑じゃな」
試しに20メートル四方の大きさで試した。
「取り合えず、トマトの種で試してみるかのぅ」
適当に種を蒔いてからユグドラシルの杖を使ってみると、あっという間にトマトの実がすぐにみのった。
「ふむ、種だけあればすぐに成長させて収穫ができるのぅ」
「すごいですね。うまく使えば食糧に困ることはありませんよ」
セツナは少し興奮しながら言った。
「いや、この杖に慣れてしまうと民が怠けてしまうのじゃ。緊急の時しか使わないようにするのじゃよ。田畑は長い時間をかけて先人の知恵を引き継いで実る物じゃ。何事も楽じゃからと頼りっきりはいかんのじゃよ」
「姫殿下・・・失礼しました。私が間違っておりました」
「良い。確かに便利ではあるのでのぅ」
実ったトマトを一つ取ると食べてみた。
クワッ!?
「美味いのじゃ!!!!」
流石は神器なのじゃ!トマトがイチゴのように甘く美味しいのじゃ。
これは新しい商機ではないのかのぅ?
この美味しい野菜を色々と育ててみようと思うシオンだった。




