断罪劇2
皆が呆然と女神ノルンを見ているとノルンは明るく言った。
「初めまして、女神ノルンです」
ぺこりと頭を下げた。
貴族達は慌てて膝をついて頭を下げた。
「今までは私の力が弱り、皆の前に現れることができませんでした。しかし、シオンちゃんが多くの人を助けて、私の名前の価値を高めてくれたので、ある程度力が回復したのでこうして皆の前に現れることができました」
ノルンはシオンの頭を撫でながら言った。
「つまり現状のノルン教が正しい教義を行なっていなかったため、ノルン様の力を下げてしまい、ここしばらくは顕現できなかったと言う訳じゃな」
シオンの言葉に説得力があり、捕縛されている司教達に殺気のこもった視線が集まった。
「そ、そんなバカな・・・・」
すっかり項垂れる司教にノルンは言った。
「シオンちゃん、元々教会なんて貧困の救済で作っただけだから、そんなにキツいルールはいらないのよ?戒律も無くてもいいし、教義も一般的な悪いことはやめましょうぐらいでいいからね」
「か、かしこまりましたのじゃ。ただ、ノルン様の女神像を建てることをお許しください」
「まぁ、それぐらいならいいわよ。小さな教会にも小さな女神像は置いてるしね」
話がひと段落ついて、シオンは用意していた『アレ』をカートに積んで運ばせてきた。
「本日はこのような場所に来ていただき誠に感謝なのじゃ。女神様のお好きな『酒』を色々と見繕ってきましたのでお持ち下さい」
「きゃー♪シオンちゃん大好き♪」
なるほど。
女神様はお酒が好きと。貴族達は心の中でメモした。
「じゃ、またね」
「はい。次は来年の生誕祭にお待ちしております。美味しいお酒もたくさん用意していますので是非、お越しくださいませ」
「時間があったらいくわね。確約できなくてごめんね~」
ノルンはそう言って消えて言った。
カートごとね。
女神様が消えてもしばらくはその空間を見守るだけで誰も動けなかった。
そこにシオンが手を叩いて我に返した。
「今日、皆に集まってもらったのは女神ノルン様に会ってもらうためじゃ。前回は妾が治めるノルン聖王国に顕現されたが、信じておらん者もいたのでな。これで誰も女神様を信じない者はおらんじゃろう?」
謁見の間にいた貴族達は頭だけを動かして頷いた。
「女神様はお忙しいお方じゃ。障害に一度会えるかどうかじゃ。今日のことを胸に秘めて、女神様に祈りを忘れないよう心掛けるのじゃ。それがノルン様のお力になるのじゃからな」
静まり返った謁見の間にて、シオンの声はよく響いた。
「さて、貴族の諸君には遠くか無理言ってきてもらった者もいる。別室にてささやかなパーティの準備がしてあるので、楽しんでいって欲しい」
おおっっ!!!!
騎士達に案内され、貴族達は謁見の間をでていった。
コソッ
「クロード、司教達を自死させないようにしっかりと目を光らせるのじゃ。スノーガーデンの魔薬のことを吐かせよ」
「はっ!かしこまりました」
こうして司教達は牢屋へ連れて行かれた。
「ふぅ、女神様に会うのは光栄だが、強すぎる神気には参るな」
玉座にてぐったりしている国王に苦笑いを浮かべるしかシオンはできなかった。
そしてノルンは一つだけシオンに騙されることに気づくのは少し経ってからだった。
そう、ノルンの女神像を建てるといったことだ。
シオンはノルン聖王国に『大聖堂』を建築して、20メートルはあるかと言う『巨大な女神像』を建てようと計画していたのだ。今までは大きくても等身大ぐらいの大きさだったので、これを見たノルンが驚くのは無理はない。
しかもうっかりとその女神像の前に降臨したので、信者達からは『神体』としてより熱心に祈られることになるのはもう少し後の話である。
しかもシオンは鉱山からでた膨大な利益の何割かを貧困対策に使っているので民達から慕われていた。
そしてそれが後の問題に発展する。
宗教問題が片付き、自国へと戻ってきたシオンは新しい問題に直面する。
前回、帝国が侵略してきた時、近隣の村や街から若い者を税を免除すると徴兵したが、そのほとんどが死んでしまったために、国境近くの村や街は働きて不足に陥ってしまっていた。土地はあるのに、年寄りだけでは耕すことができず、多くの田畑が『捨て土地』として放棄され、帝国の近隣の領地では大幅な減収となった。
そして、生まれ育った土地を捨てて北のノルン聖王国に亡命と言う保護を求めてきたのだった。
無論、シオンはそのことに頭を悩ませることになる。
「まずいのぅ。女神様が顕現されたばかりで、無下にもできぬのじゃ。しかし、亡命を望んでいる者達の多くの家族を死なせたのは妾の命で死んでおる。下手に受け入れると。内部から帝国兵を手引きされかねん。どうすればよいのじゃ・・・」
「とりあえず、国境に食糧支援をして時間を稼ぎます。その間にどうするかみんなで考えましょう」
セツナの提案にシオンは頷くのだった。




