王都攻略と人材不足
食事を振る舞い敵兵をそのまま仲間に引き込んだシオン姫殿下にバルド将軍は内心で驚愕していた。
『まさか敵兵がそのまま味方になるなど信じられん。クロード騎士団長は、中には味方になる振りをして背後から狙っている兵もいるだろうとは言っていたが、この様子を見る限りでは、その心配もなさそうだ』
敵国王都まではここから5日の距離である。
バルド将軍は急遽グラース砦から兵站の追加を要請し、砦から近隣の小砦からも兵站を寄こすように伝令を出した。
「シオン姫殿下、兵士の話では王都には約500人ほどの守備兵がいるそうです」
「なに?たったの500人じゃと?」
こちらは寝返った兵士を含めて、約4万もいるんじゃが?
過剰戦力かのぅ???
「兵士の話では普段は約千人ほどが常駐しているそうで、貴族の護衛として約半分を連れていったそうです」
「とことん腐っておるのぅ~」
「まったくです」
よし!
方針が決まった。
「ならばこのまま進軍じゃな。速攻で王都を落とすのじゃ」
「そこまで急ぐ理由はやはり帝国ですか?」
「うむ、大陸中央に位置しておる帝国の干渉が一番厄介じゃ。帝国が出張ってくる前にクレスト王国を落とすのじゃ」
「御意に!」
クロードは詳しい作戦を練る為に幹部を集めるのだった。そして数日間進軍して敵国の王都が見えてきた。
「向こうは仲間が凱旋したと思っている様ですね」
「城門が開いているなら好都合じゃ。このまま突入してから東西南北にある主要の城門を占拠せよ。そしてそのまま王城を制圧するのじゃ。敵に逃げる時間を与えるでないぞ!」
「ハッ!」
それからが大変だった。
凱旋したと思った兵士が寝返って各城門を制圧し、王都にいた貴族達を逃げられなくし、そのまま王城に突入した。
そしたらどうなったと思う?
突入したら、普通は使者や配下と謁見する大広間で、乱交パーティーの真っ最中でした。
しかも、街中から攫ってきた女達を無理矢理に………
故に、【悪・即・斬!】を決行した。
謁見の間が血の海になったわ!
「うーむ。上手くいったのは良いのじゃが、これからが大変じゃのぅ」
「そうですね。バルド将軍には一度国に戻って貰い、隣国攻め落とした事を伝えて貰います」
「それが良いじゃろう。バルド将軍、国に報告に戻ったら文官を連れてきてもらえんか?」
「なるほど。統治の為にですな。それくらいお安い御用です」
シオンはノルン騎士団から約50人を選抜して、複数の部隊を結成した。クレスト王国の兵士を配下に付けて、約500人でクレスト王国中に王都が陥落して国として滅んだ事を伝え廻った。
各領地にいる貴族の兵士は多くても常駐騎士は約100人程度で、後は民兵を募るらしい。
その民兵も今回の戦争で出払っているので、各地の防衛兵士は少ないとのこと。
そこに500人の中隊を連れて各領地の領主を捕まえに行っている訳である。
「各地の領主を捕まえてここに連れてくるのじゃ。そして領主不在の間はノルン騎士団が各地の統治を確認して税収や産業など調べて、統治していた領主が使えるヤツかどうか見定めよ」
領主の家族は軟禁扱いになるが、国が滅んだのじゃ。そこは我慢してもらおう。領主不適格となったら最低限の路銀を渡して平民として放逐する予定じゃがの。
「それと、国境の警備をしばらく強化せよ。我が国の国境の警備の数を減らして、西と南の国境を強化するのじゃ」
「なるほど。この国を落としたのですから、我が国の警備は減らして問題ないですね。ではその様にいたします。ただ大丈夫でしょうか?我々が各地に赴いている間はグラース砦の兵士が居てくれますが、兵力的に不安が残ります」
「大丈夫であろう。妾に敵意を向けるのは平民に落とされる王侯貴族のみじゃ。見てみるのじゃ」
外からは圧政から救ってくれた姫殿下に感謝の声をあげていたのだ。
「本当に良く今まで反乱を起こされずに持っておったのぅ」
「本当にそうですね」
軽くため息をついてから、シオンはクロードに一つ命じた。
「ここの兵士を使って、周辺国の情報収集をして欲しいのじゃ」
「小国とはいえ、国が落ちたのです。混乱しているのを見越して攻めてくる可能性もありますね。この国にも諜報部隊はあるでしょうから、一度精細して、各地に飛ばしてみます」
「よろしく頼むのじゃ」
それから約一ヶ月が過ぎた。
「思った以上に酷いのぅ~」
シオンは頭を抱えていた。
各地を統治していた貴族の『ほとんど』が『使えない』と判断されたからだ。
「税を絞るだけ取って、民は農具すら新しいものを購入できないので作業効率が悪すぎる。うちと比べて約100年ほど農作業など遅れておるのじゃが?」
「蚕の栽培は盛んで機織りの技術はなかなかではありますね。北の山脈から鉱物資源が採れるので、この2つが主な収入源の様でした」
「………どうせ安全性を無視して掘らせておるのじゃろう。すぐに視察して、安全性の確保と発掘の技術指導を行うのじゃ。技術者は我が国から派遣させよ」
「わかりました」
目の間には山積みにされた書類の山があった。
「文官が足りん。統治する代官も足りん。何もかも足りんのじゃーーーーー!!!!!!」
うっきぃーーー!!!!と、叫んだ。
「文字の識字率も悪過ぎる!子供達に昼の食事を出すから学校を建てて……いや、開いている建物を使って子供達に文字を教える。そうすれば将来、働ける場所が広がるじゃろう」
「はい。早急に指示を出します。ただ教師を始め、人材がいません。今の状態では後回しにせざるおえないでしょうね」
人材が足りなさ過ぎる!
誰か助けてーーーーなのじゃーーーー!!!!!!
シオンは異世界にきて始めて根をあげるのだった。




