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説得

隣国のクレスト軍は負傷兵を連れながら撤退していた。総大将が討たれた事で責任を取る者いなく、隊長クラスの司令官は馬に乗りながら罵りあっていた。


「貴公が敵の奇襲に気付いておれば負けることは無かったのだ!」


「何をいう!総大将が討たれたのは近衛騎士を指揮する貴殿の落ち度であろう!」


「いやいや、あの大魔法を防ぐ為に魔道士の指示をしなかったお前達の責任だろう!」



このクレスト王国では国王を筆頭に、貴族の腐敗が進み、民を消耗品としか考えていないのだ。自分達は権力と富にしか興味がなく、侵略軍に参加した者も、箔付けの為に参加しているだけで、無能の集まりであった。


今までならグラース砦に立て籠もるレグルス王国軍を、落とせたらラッキー程度で、落とせ無かったら、多くの敵兵を倒したと吹聴して、戦歴という箔付けのネタにしていたに過ぎなかった。


故に、今回のように討ってでて来られて、指揮官が倒されるという事が今まで無かったのである。

今は戦果を自慢できる状況ではなく、誰に責任を押し付けるかで揉めているのだ。


そう言った状態であるため、軍の歩みは遅かった。負傷兵を抱えているのもあったのだが───


「大変です!レグルス王国が追撃してきました!」


!?


「な、なんだと!?」

「よ、よし!まだ我が軍の方が数が多いのだ。お前達は反転して敵を喰い止めろ!俺は陛下に報告の義務があるから先にいく!」


「ズルいぞ!貴様が残って指揮をとれっ!報告は私が向かう!」

「いや、私が!」

「俺こそが!」



この醜い争いをしている間に騎兵で構成された騎馬隊は敵の中央を喰い破り、あっという間にこの無能な高級幕僚が集まる本隊中央にたどり着いた。


「「「えっ???」」」


騎馬隊はシオンの指示通り、無言でその場にいた者達を皆殺しにした

そして大声で降伏を呼び掛けた。


「降伏しろ!武器を離して地面に頭を付ければ命まで取らない!」

「お前達の上司は全て死んだ!命令を出す者は居なくなったのだ!」

「降伏すれば必ず故郷に帰すと約束する!」



騎馬隊の数十数百の兵達が声を上げることで、思った以上に、殆どの兵士が降伏に応じたのだった。


「あの様な無能共の為に命を掛ける兵などおらんじゃろう」

「まったくです。シオン姫殿下の爪の垢でも飲ませたいぐらいですよ」


敵兵は武装を解除され、もう少し進んだ所にある敵軍の中継所に集められた。


「さて、妾はレグルス王国の長女シオン・レグルスである!我が名に置いて皆の身の安全は保証しよう!」


ざわざわ

ざわざわ


高く作られた壇上の上からシオンは風魔法を使いながら遠くまで聞こえる様に話した。


「そして、女神ノルン様の寵愛を受けるものである!」


シオンの目が金色に変わり光り輝いた。


「妾はこのクレスト王国を攻め滅ぼすと決めた!じゃが、民を虐殺することではない!諸君らの助ける為に立ち上がったのじゃ!」


ざわざわ

ざわざわ


兵士達のざわめきが大きくなった。


「前から情報収集をしてこの国の状況は理解しておる!王族、貴族達が自らの贅沢の為に重税を課して、平民は奴隷に近い扱いを受けておる。その現状を打破する為に妾は立ち上がったのじゃ!」


そこに1人の兵士が手を挙げた。


「発言宜しいでしょうか!姫殿下が統治された場合はどうなるのでしょうか?」


「うむ!まずは税を見直し適正な割合に戻す!一部には1年間、税を免除して鉄製の農具も無償で貸し出す。現状の貴族達は平民に落として、使える者だけその立場を維持してもらう。少なくとも今よりマシな暮らしを約束するのじゃ!」


ザワッと破格の待遇に声が上がった。


『まぁ本来なら攻め落とした領地は、税の免除を3年ぐらいして民の反感を抑えるものじゃが、今までこの国の仕打ちが酷すぎてこのくらいでも破格と思ってしまうのじゃなぁ~』


少ししてから敵兵から次々に声が上がった。


「この国を変えれるなら俺達を使って下さい!」

「家族が餓えなくなるなら是非私も貴女の下に付きます!」


それは伝播して全ての兵士がシオンの下に付くと頭を下げた。


「うむ、感謝するのじゃ!先の戦いで妾達に殺された戦友もおるじゃろう。妾を許せとはいわん!ただ、この国を良くすることで償わせて欲しいのじゃ」


シオンは壇上の上で深く頭を下げた。

これには敵兵が一番驚いた。自分の国の貴族は絶対にそのような事をしないからだ。


「我らが姫殿下は筋を通す慈愛深い御方である!我々は戦争をしていたのだ!友を殺され恨まない奴はいない。だが!恨むなら姫殿下の騎士である我々を恨め!姫殿下を恨む事は、我々ノルン騎士団が許さない!万が一姫殿下に危害を加えようとしたヤツは拷問の上、死なせて欲しいと懇願するまでの苦痛を与えてやる!その事を肝に銘じよ!!!」


騎士団長のクロードはシオンの隣り立ち殺気を放ちながら言った


「クロード、よい!女神様の寵愛を受けし妾を害する者などいないと妾は信じておるのでな」


自分ではなく女神ノルンに反旗を翻す者はいないだろうと主点を変えてシオンは皆に聞こえるように言うのだった。


「クロード、兵士の傷の手当てと今日は食事も多く振る舞うのじゃ。どうせ、指揮官クラスしか良いものを食べてないのじゃろう」


「畏まりました」


敵兵を見てすぐにわかった。

武器類は支給品で綺麗に統一されているが、兵達の多くが痩せてガリガリなのだ。

ろくに食料の配給がされていない証拠だ。これでは士気も上がらず戦いで力もでないだろう。


「まずは腹ごしらえからじゃな」


シオンは喜びながら食事をする兵をみながらこの国の行く末に深いため息を吐くのだった。






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