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進撃!

敵が撤退していったのを砦の上から見ていた将軍が呟いた。


「まさか、姫殿下が女神の寵愛を受けた黄金の瞳を持つとは聞いていたが、これほどとはな………」


顎髭を触りながら目の前の戦いを思い返していた。


「ノルン騎士団の負傷兵を迅速に手当てするのだ!」

「はっ!かしこまりました!!!」


グラース砦を預かる60歳を越える老将バルドはテキパキと指示を出した。

このバルド将軍が砦の指揮官になってから、一度も砦を突破されたことのない名将であった。


「バルド将軍!シオン姫殿下がお目通りを願っております!」

「わかった。すぐに会うと伝えてくれ。司令室にお通しするのだ」


伝令は短く答えるとすぐに出ていった。


「………これで終わりではないだろうな。負傷兵が少ない。恐らくは──」


シオンがなにを求めているのか想像が付いたバルドは軽い溜め息を吐くのだった。

それから作戦会議など行う司令室にシオンとバルドが対峙した。


『ほほぅ?鍛え抜かれた身体に、鎧の上からでも筋肉がわかるほどの逸材じゃな』

『これがシオン姫殿下。見た目で騙されてはいかんな。あの目は強者の目だ』


2人はお互いに値踏みするかのように見つめ合ってから握手を交わした。


「まだ幼いのに素晴らしい魔法でしたな」

「いやいや、バルド将軍が敵を引き付けてくれたおかげじゃよ」


たわいも無い話から始まり、ついに本題に入った。


「それで今後の方針なのじゃが?」

「それは今まで通り、ここでの防備を固め───」


シオンはバルド将軍が言い終わる前に、ペラッと一枚の指令書を出した。


「御託は良いのじゃ。国王陛下の指令書を読むがいい」


渡された指令書にはシオンに一度だけ全権を委任するべしと書かれていた。


!?


「バカなっ!?」

「正式に王印の押してある正式な書類じゃぞ。まぁ、そこに書かれている通り、条件も書いてあるが、それはクリアしたからのぅ。我に従ってもらうぞ?」


その指令書にはシオンの軍勢だけで敵を撃退した時のみ、一度だけ全権を預けると条文が書かれていたのだ。

流石の国王も渋々実績作りのためにシオンを送り出したが、基本的に砦に合流して、砦の中から安全に戦争を見守らせるつもりだったのだ。バルドも国王陛下の使いからそのような話を聞いていたので、年齢的にその通りにするつもりであった。


だからそんな条件をクリアできると思っていなかったのである。


「・・・それで、なにをするつもりでしょうか?」

「決まっておろう!すぐに追撃する!砦の半数を動員せよ!」


!?


やっぱりかとバルド将軍は渋い顔をした。


「まだ敵の兵力はこちらより多いのですぞ?逆にこちらの方が痛いダメージを受けることになりかねませんぞ!」

「バルド将軍、これは相談では無い。命令じゃ!」


!?


「しかし、理由が知りたいのであれば教えてやるのじゃ。敵の反転攻勢は絶対に無いからじゃ!」

「なぜそう言い切れるのですか!敵は軍備に力を入れている国ですぞ。態勢を立て直せば兵力で勝っているので、攻勢に出る可能性が大いにありえる!」


「だからこそ、大魔法で恐怖心を植え付けたのじゃ」


シオンの言葉にバルドはハッなった。


「先の戦いで敵の総大将は味方を置いて逃げようとしていた。そんな者が率いる侵略軍じゃ。上にいる指揮官共がどういう者か想像がつくじゃろう?」


確かに、利権絡みの無能な貴族が指揮官なら、執拗に追い掛ければ、下位の兵士を殿しんがり)に置いて自分達だけ逃げようとするだろう。

そんな命令をするのだから敵の兵士の士気は下がり、すぐに投降してくるに違いない。


特に先の戦いで総大将のみ狙ったのを考えれば自分が狙われると恐怖心に駆られる。


この幼いシオン姫殿下はそこまで読んでいたのか!?


「気付いたようじゃな。まぁ、これは王宮の都合でもあるしのぅ。バルド将軍には悪いが付き合ってもらうぞぃ」


「かしこまりました。最後に一つだけお聞きしたい。王宮の都合というのは?」


「なぁに。お主も知っておろうが、側室から弟が産まれたことで、王宮内で血なまぐさいことが起きておるじゃろう?じゃから、このレグルス国は弟に継がせて、妾は隣国クレスト王国を攻め滅ぼして、そちらを統治することにしたのじゃ」


!?


「はっ?、い、いえ、まさかこのまま………?」


シオンは最後まで言わずにニヤリッと悪い顔の笑顔をするのだった。

バルド将軍はすぐに追撃隊を結成して先に出発させた。その後、兵站を載せた荷馬車も準備ができ次第後を追わせた。


「バルド将軍!敵軍の追撃は理解できますが、なぜこれほどの兵站が必要なのでしょうか?この量では最低限でも10日以上は出兵する感じですが?」


本来なら敵軍追撃は1~2日で終わり、そのまま帰還するのが普通だ。この兵士の疑問も酷く真っ当なものである。


「………詳しくはまだ言えん。ただ敵軍を徹底的に追い込む予定なのだ」


「なるほど。確かにここで敵軍の兵力を削げるだけ削げは数年は攻めてこないでしょう。流石はバルド将軍です!」


兵士は敬礼をしてその場を後にした。バルドは自分に言い聞かせる様に呟いた。


「この作戦が成功したらグラース砦は要らなくなるな」


空を見上げて呟くと、シオン姫殿下の元へ報告の為に戻るのだった。





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