援軍
シオンが隣国クレスト王国の王都を攻め滅ぼしたと報告に戻ったバルド将軍は、嘘偽りなく伝えた所、王宮は大騒ぎになった。
「な、何故そんなことに………」
国王ですら呆然とした。
バルド将軍は国王陛下の渡した指令書を伝えて、国王は頭を抱える事になった。
「まさか女神様の寵愛を受けている金色の目を持つ我が娘とはいえ、まだ5歳だぞ?そんな事ができるとは思ってもいないだろうが?」
「私も同感ですな」
「それで、シオンは一緒に戻ってきていないのか?」
「それが───」
シオンは隣国を統治する為に残ったと聞いて国王は更に頭を抱えた。
「だからまだ5歳だって言うんだよ!?」
代官の真似事などできる訳ないだろうと国王は思ったが、バルド将軍が取り成した。
「少しの間でいいので見守って頂けませんか?臣下であるワシもシオン姫殿下の行動を見てみたいのですよ」
「しかし、危険ではないのか?」
「少なからずあります。しかし、演説1つで約3万の敵兵士を味方に付けた手腕はこれから先、語り継がれる出来事でしょうな」
まったく、どんな英雄譚なのやら。
この齢になってシオン姫殿下の英雄譚の1ページに関われる事が誇らしいと思ってしまった。
バルド将軍はいつの間にか笑っていた。
「国境砦には最低限の兵士を残して、残りの戦力を隣国の王都へ連れていきます。ワシの生涯最後の仕事としてシオン姫殿下をお守りいたします」
「あの子は──いえ、娘をお願いします」
母親である王妃は言葉を呑み込んだ。
自分の娘が女神の愛子で、今後何かを成し遂げるような人物になると思っていたのだが、まさか僅か5歳で隣国を滅ぼすとは思っていなかった。
しかも最低限の犠牲でだ。
この出来事はすぐに大陸中に広まることになる。
そしてその情報を得た側室は喜ぶより震え上がった。
「ま、まさか本当に隣国を攻め滅ぼすなんて………」
シオンが本気を出せば自分などすぐに殺されるのでは不安に思うが、これで自分の息子が王位を継げると喜ぶ気持ちもあった。
「話では姫殿下は戻ってこない様だし、あの時言った話は信じるしかないわね」
側室はこれまで通りに、王宮での立ち回りを考えて行動するのであった。
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そして現在、シオンが頭を抱えている時に母親である王妃から追加の人材が数百人派遣された。
それは実力はあるのに、家の家督争いに負けて追放された者や、三男、四男など家督の継げない者達に新しい仕事の斡旋も兼ねており無論、女性も含まれていた。
「まさか、妾の行動に反対していた母上から支援を頂けるとは思ってもいなかったのじゃ」
「王妃様は姫殿下の事を心配しておられましたからね。決してシオン姫殿下の事を嫌って小言を言っていた訳ではありませんよ?」
「わかっておる。妾は親不孝者じゃ。女神様の神託を受けているとはいえ、大切な母上に心配ばかりかけて心苦しいのぅ」
「きっとその気持ちは届いておられます」
「そうじゃといいのじゃが」
側近のクロードは思った。
いくら女神の寵愛を受けし姫殿下でも、まだ5歳の幼女なのだ。母親が恋しい年頃なのである。
クロードはコッソリと、信用できる母性的な侍女を見つけて、シオンの身の回りの世話をさせる事にしたのだった。
それから約3ヶ月が過ぎた。
木の鍬を使っていた農民に鉄の鍬を渡し、麦を脱穀する道具を配布した所、収穫量が約3倍に増えた領地が出てきた。3倍までいかなくとも軒並み収穫量が増加し、税率も下げた事で平民が飢える事が格段に減り、蓄えを作ることもできるようになった。
多くのクレスト王国の民がシオンを讃え感謝していた。平民に落とされた貴族達は最低限の持たされたお金を使い、反乱を起こそうとしたが、兵が集まらずノルン騎士団に殲滅される事になった。
「バカは死んでも治らんのぅ?妾の統治で民が豊かになってきておるのに、昔の統治に戻りたい民がいる訳なかろうに」
「まったくです。シオン姫殿下の慈悲を無駄にしたのです。当然の報いでしょう」
母上から送られた人材から代官を選び、各地の統治を任せた。そして子供達に文字の読み書きを学ばせる学校も始まった。これには昼は子供を。夜は大人達をと別ける事にした。大人は自由参加だ。
「これで少しは国が発展すればよいがのぅ」
「これは焦っても仕方がありません。気長に見守るしかないでしょうね」
こうして軍事国家であるクレスト王国は短期間で劇的に変わっていくのだった。




