まさかの薬
一通りの確認を終えたシオン達は最後の一人を待った。
すると廊下から騒がしい声が聞こえてきた。
「来たようじゃ」
扉が開くと、ノルン騎士の二人に両手を掴まれて側妃が入ってきた。
「無礼者!私を誰か知っての無礼か!」
ギャアギャアとうるさく騒ぐ側妃にクロードは甲冑を叩いて大きな音を出して黙らせた。
「側妃殿、お久しぶりじゃな」
シオンを見た側妃は目を大きく開けて驚いた顔をした。
「何をそんなに驚いておるんじゃ?」
「い、いえ、別に・・・」
明らかに挙動不審な側妃に疑惑の念が深まるが───
「失礼するのじゃ」
神眼でこれまでのことを除くと・・・・
「ふむ。まったくの白ではないが黒でもないのぅ?」
ビクッと震える側妃を見ながらシオンは話した。
「どういうことですか?この方が犯人ではないと?」
「うむ、妾が見た映像では、我が弟で側妃殿の子供の命を脅されて、近衛騎士の一部を入れ替えたようじゃな」
!?
「ば、バケモノめ!人の過去を覗けるなんて反則よ!!!」
去勢を張る側妃の言葉にクロードが動いた。
「黙れ!姫殿下に対して無礼であるぞ!」
クロードは側妃を地面に押し倒した。
「いたっ、放しなさいよ!」
「側妃殿、いくら脅されたとはいえ、我が父上である国王陛下の命を狙った罪は重いぞ?」
側妃はシオンの殺気に怯えて何も話せなくなった。
「国王陛下と王妃の命を狙ったのじゃ。あなただけではない。あなたの子供も処刑対象になるのじゃぞ?それをわかっておるのか?」
「そ、そんな!私は言う通りにしただけなのに!」
「当たり前じゃ!なぜそのような当たり前の事に気付かん?」
側妃殿はこんなに頭の悪い女だったかのぅ?
前は十分に知的な政治に聡い女性と言う印象じゃったが?
そこでシオンは偶然にあることに気づいた。
「ば、バカな!?」
シオンの叫び声に視線が集まった。
「どうされました!」
シオンは少し目を泳がせてから話した。
「側妃殿に『状態異常』と出ておる。なんじゃこれは?」
さらに調べてみると──
「・・・・ありえん、スノーガーデンの魔薬中毒と出ておる」
!?
「なんですって!?」
「アレはまだ量産前に気づいて魔薬の加工などできてないはずじゃが?」
「何者かの組織がすでに気づいて魔薬を作っていたのでしょうか?」
うむ。
どういうことなのじゃ?
「そういえば、神眼で見た映像では、側妃殿が指示を受けていた人物はフードを被っておったが、問題はその人物ではなく、密会場所に魔薬を煙にして焚いておったのか!」
「確かにタバコのように乾燥させて吸うのでしたよね?ならそのまま燃やして煙にしておくのもできますね」
「そういえば、拷問などで効率よく情報を吐かせるテクニックに、『飴と鞭』のやり方がありますが、脅迫して言う事を聞かせながら、魔薬によって幸福感が増すのであれば、従う事が嬉しく感じるようにしたのかも知れません」
「本人に自覚がないと言うのは怖いのぅ。思考が低下して当たり前の常識も区別できなくなってしまうとは」
「今更なのですが、まとまった量が取れるのがスノー王国であって、他国でも寒い山脈などにも生えているのかも知れませんね」
なるほど。
それなら合点がいくのぅ?
「側妃殿を貴族牢へ。ただし自害などできぬよう、尖った物などは無いようチェックさせよ。それと宮廷医師に解毒ができないかみせるように」
「かしこまりました」
騎士達は慌ただしく出ていった。
「クロード、しばらくの間は父上と母上の警備をノルン騎士団に任せる。近衛騎士にはすまぬが、裏切り者がでた以上、妾の神眼での確認が終わるまで警備から外すのじゃ」
「了解致しました。すぐに手配いたします」
それにしても気持ち悪い状況じゃ。
元々住んでいた城じゃと言うのに、敵国に来た様な感じが拭えぬ。
「しばらくは妾が料理を作らねばならぬかのぅ?」
まだ全ての使用人が信用できぬしのぅ。
「え、なにそのご褒美は・・・・」
セツナの呟きは無視して、しばらくの間も予定を考えてシオンは深いため息をつくのだった。
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あれから数日が経った。
「まさかあの者達が諸悪の元凶とは・・・」
ついにとある組織から接触があったのだ。
それは『ノルン聖教会』であった。
昔から存在する宗教であり、ここ最近は目立った実績がなく衰退していた宗教だった。
それが最近のシオンの活躍で活気を取り戻して来たと言うわけである。
そしてその教会の司祭からレグルス王国でノルン教を国教にして、大聖堂を新たに建てる様、申請が来たのだった。そして、女神様の寵愛を受けるシオンをレグルス王国の女王について欲しいとも打診があったのだ。
ここまできたらバラバラだったパズルのピースが色々とピタッとハマっていく感じがするのだった。




