毒殺未遂
シオン達は襲撃地点を通過して、レグルス王国の王城に無事に辿り着いた。
『さて、ここからが妾の仕事じゃな』
シオン達は王城の移住スペースに移動した。
家族と一緒に部屋で一息ついていると、メイドが飲み物を用意して持ってきた。
「やっぱり生まれた場所は落ち着くのぅ」
「姫殿下でもそう思われるのですね」
セツナが侍女から飲み物を受け取りテーブルに置いた。
「・・・待て、この紅茶に毒物が仕込まれておる!」
!?
そこからは素早かった。
護衛についていたクロードが目にも止まらぬ速さでメイドを抑えつけた。
「し、知らない。私は本当に知りません!」
シオンは神眼でメイドを見た。
「クロード離してやるのじゃ。この者は厨房で飲み物を渡され運んできただけのようじゃ」
シオンは涙目になっているメイドに尋ねた。
「すまなかったのぅ。お主は厨房で飲み物を渡されたはずじゃが、いつもと何か違った事はなかったかのぅ?」
「は、はい、私は姫殿下や陛下達が戻ってきたと言うので、時間を見て厨房に行きました。あ、そう言えばいつもは、お湯を沸かすので少し待つのですが、今日はすでに用意されていて、そのまま持って行くように言われました」
ふむ?
「クロード、犯人はもう逃げておるじゃろうが、厨房に行って全ての者を拘束するのじゃ。そして厨房にはノルン騎士団を配備して、こんな事が起きないよう見張って欲しいのじゃ。妾が1人ずつ神眼で調べる。それと側妃殿も連れてきて欲しい」
「はっ!かしこまりました!」
クロードはすぐに配下を手配してくれた。
「父上、母上、しばらくは妾が鑑定して物以外は口にしないで欲しいのじゃ。妾は2人を失いたくない」
「ええ、シオン。いつもありがとうね。私達から貴方にお礼するものがなくて悔しいわ」
「いいえ、妾は2人に甘えることができるだけで幸せじゃ♪」
着いて早々に毒殺未遂とは、思った以上に危険な状態じゃな。
うん?
「セツナ、わかる範囲でいいのじゃが、この毒物『リトルデビル』とはどんな物かわかるかのぅ?」
セツナは首を振ったが、意外にも両親が知っていた。
「リトルデビルは名前と違って子供には余り効かない毒だよ」
「そうね。主に成人した大人にしか効き目がない変わった毒ね」
王族としてある程度の毒物の勉強はしているようで内容がわかった。
「・・・つまり、狙われたのは父上と母上という訳じゃな」
敵の狙いは国王と王妃か。
シオンは怒りを殺して厨房へ向かった。
厨房にいた人々は別室へ移動させられ尋問を受けている。ここにはノルン騎士団しかいない状態だ。
シオンは毒物が他にも塗られていないのか神眼でチェックした。
幸いにも他には見つからなかった。直接ポットに毒物を仕込んだのだろう。
一通りのチェックが終わると、厨房の人々のいる別室へ向かった。
「厨房にいた者達は口裏を合わせれないよう数名に分けて隔離しております。順番にこちらに連れて来ますので少しお待ちください」
「うむ。了解じゃ」
クロードの手際の良さに頷きつつ、一人一人と使用人が連れてこられた。
軽く話をしながら神眼で調べていく。
何人もの使用人が白で問題がなく協力者もいないことが判明した。
ただ調べていくうちに、一人のメイドが姿を消していることがわかった。
「この姿を消したメイドの単独犯っぽいのじゃ」
「聞けば、勤めて5年ほどのベテランですね。ただ気になる話を聞きましたが・・・」
なんじゃ?シオンが尋ねると意外なことがわかった。
「姫殿下の熱狂的な信者だというのです。姫殿下が旧クレスト王国の摂政となられたとき、異動申請も出しているようなのですが、実家の意向で叶わなかったと聞きました」
「なぜ妾の信者?が家族を殺そうとするのじゃ?」
意味がわからんぞ????
「あ、私、少し気持ちがわかるかも・・・」
セツナの言葉にクロードがギロっと睨んだ。
「セツナ殿、それはどういう意味だ?」
殺気を放ちながらドスの効いた声で言った。
「勘違いしないで。ただ姫殿下を慕っている者とすれば、両陛下が亡くなった場合、跡を継ぐために戻ってくるのでは?と思って犯行に及んだのかも知れないわ」
セツナの言葉にポカーンとなるシオンにクロードは苦虫を噛んだような顔をした。
「それは・・・確かに・・」
「えっ、ありえるの!?」
驚くシオンにクロードもなくはないですと言った。
「それに、女神様が降臨したことは早馬で各地に伝わっていますし、女神様の寵愛を受けし姫殿下を自国に連れ戻したいと思う勢力があっても不思議ではありません。まぁこれが姫殿下の狂信者の犯行なのか、組織だっての犯行なのかはまだわかりませんが」
そんなことがありえるのかのぅ?
まだまだ異世界の感性はわからん。
シオンは少し混乱しながら最後の一人が来るのを待つのだった。




