予期せぬ帰宅
クロードからの伝令を受けて、シオン達は驚いた。
「父上、母上、すまぬのじゃ。妾がしっかりと神眼で近衛騎士を確認していれば防げたのじゃ」
「何を言うんだ。シオンは悪くない。悪いのは臣下を御せなかった私の責任だ」
「そうよ。勝手に相手を調べるのは良くないと考えたのでしょ?シオンは悪くないわ。それより私達を救ってくれてありがとう」
二人は再度シオンを抱きしめると感謝を述べた。
「しかし、近衛騎士に裏切り者がいたのはショックだな」
「そうね。なかなか信用できる者は少ないのに」
そこでシオンは命が掛かっているからと、一緒に戻って城で働く人々を神眼で調べると提案した。
「確かに無関係な人々を勝手に調べるのは良くないと思うのじゃ。しかし、父上と母上の命が掛かっておる。今回は緊急の処置ということで多めに見て欲しいのじゃよ」
二人はシオンの言葉に頷いた。
「ありがとうシオン。不謹慎だがシオンと一緒にいられて嬉しいよ」
シオンは親の愛情を感じて俯いてしまった。
ノルン騎士団はその場所で襲撃者を尋問し、一部の者だけ戻って来た。
「ノルン騎士団よ。良く襲撃者達を退けてくれた。感謝するのじゃ」
「姫殿下のお役に立てて光栄であります!」
シオンは報告に戻った騎士達の手を一人一人握ると感謝の言葉を送った。
騎士達は号泣しながらありがとうございますと言って、少し異様な空気になったのは言うまでもない。
(後から他の騎士達に羨ましいぞとボコられることになるのはご愛嬌である)
「騎士達に死人や重症者は出なかったのかのぅ?」
「はっ!未熟ゆえ、軽傷者は出ましたが、重症の者はいません!ただ、祖国の近衛騎士達に重症者が出ました。あ、命に別状はありませんが」
仲間から裏切り者がでて50人の賊が襲って来たのじゃ。死人が出なかったは奇跡じゃな。
「父上、その近衛は信用できます。後で労ってください」
「うん、わかったよ」
伝令は早馬で戻ったとはいえ、2日の夜までかかる道のりを帰ったので1日経っていた。
シオン達は次の日になり、日の出とともに出発した。
護衛は30人ほどに絞った。あまり多いと、食料の手配など大変だからだ。
こうしてシオン達は安全な道を順調に進み、襲撃のあった地点に辿りついた。
「クロードよ、この度は大義であった」
「勿体無いお言葉です」
「それで襲撃者は多かったのじゃろう?首謀者は吐いたのか?」
クロードは少し表情が暗くなったが報告した。
「これだけの規模にも関わらず、ほとんどの者が何も知りませんでした。一部の者は吐いたのですが正直、本当のことを言っているのか分かりません」
なるほど。嘘を言って政敵を殺させようとしている可能性もあるのか。もしくは撹乱か。
「誰の名前を吐いたのじゃ?」
「・・・レグルス王国の側室の名前を」
ふむ?
あの御仁は野心家じゃが、何もしなければ自分の子供が国王になれるのじゃ。
ここで我が両親を殺害するメリットはないじゃろうに。
「吐いた者はまだ生きておるのか?」
「はい、姫殿下にはおみせしたくない状態ですが生きてはいます」
言い方に含みがあるのぅ。
じゃが我が神眼があればわかるかも知れん。
「我が神眼で確認するのじゃ」
「しかし──」
「案ずるな。妾のために拷問などしたのじゃろう?責めはせぬし、これは妾の義務でもあるのじゃ」
血だらけの酷い状態の襲撃者を見せたくはなかったのだが、クロードは渋々と案内した。
「なるほど」
シオンは一言だけ呟くと余計なことは言わずに神眼を使った。
「依頼人はフードを被っておって不明。万が一の時はやはり側室殿の名前を出すように言われていたようじゃ」
「やはりですか」
「しかし前金でも大金を積んでおるの。奴らのアジトはここじゃ。すぐに向かわせるのじゃ」
!?
「了解しました!」
「じゃが、黒幕はわからずじまいじゃな。念のため城に戻ったら側室殿にも話を聞くとしようかのぅ」
シオンは後の始末は任せると言って両親のいる馬車へと戻った。
「そういえば、父上、レグルス王国では特に変わったことはなかったのかのぅ?」
「この所はシオンの国からの支援要請以外に特にはないな。海上貿易が順調なことと。南のドワーフの国との交易も増えて順調だし、特に表立っての変わったことはないよ」
う~む?
あるいは景気の良いレグルス王国を恨んでの犯行かのぅ?
今は情報が足りん。保留じゃな。
「流石は父上なのじゃ!妾も見習わなければ!」
「あははは、ありがとうなシオン」
血生臭いことは妾が引き受ける。
父上と母上には安全に幸せに暮らして欲しいのじゃ。
シオンは家族を守ると心に誓うのだった。




