ノルン騎士団
次の日になり、大勢の来賓客の帰宅を見守りながら、シオンの両親もその中にいた。
「シオン、たまには帰ってくるんだぞ?」
「シオン、また必ず会いましょう」
二人はシオンとハグをしてから馬車に乗った。
この二人は替え玉である。
どこで誰がみているのかわからないので、大勢の前で馬車に乗ったと見せたのだ。
護衛には20人のレグルス王国の近衛騎士団が馬車の前後に付いていた。
「国境はまで我々が先導します」
そこに国内で何かあっては責任問題になるので、各地の来賓客にはノルン騎士団が10名ほど護衛に付いて国境まで見送ることになった。
そして──
国境まで着くとノルン騎士団はご無事にお帰りくださいと言って別れた。
「ミッション第一段階終了しました」
「よし、一度戻るぞ」
ノルン騎士団は一度帰ると見せかけて来た道を戻った。
後方から偽装してついて来ている商人の旅団と合流するためだ。
最新の注意を払いながら、精鋭の騎士数名は両陛下の馬車が見える距離を隠れながら護衛し、一般の騎士団は少し離れた場所で商人の一団としてついて来ていた。
そして2日目の夜にそれは起こった。
「敵襲!!!!」
約50名ほどの盗賊を装った賊が襲って来たのだ。
そして信じられないことに、近衛騎士の半分が裏切って襲って来た。
「き、貴様ら!どういうつもりだ!!!」
真っ当な近衛騎士は仲間の裏切りに動揺して叫んだ。
『やはり騎士団に裏切り者がいたか』
クロードが1番警戒していたのは味方に裏切り者がいる事だった。
故に、両陛下が替え玉であることを秘密にして、近衛騎士達には襲撃の可能性を伝えていなかった。
味方の裏切りに、多数の賊に近衛騎士達は防戦一方だった。
いや、動揺していても防戦で耐えることができていたのは、かなりの腕前を持っていたからだろう。
「ぐわっ!?」
「なにっ!??」
後ろから仲間の悲鳴が聞こえたため振り返ると、数名のフードを被った者に襲われていた。
「くそっ!何者だ?いや、見られたからには殺せっ!」
敵はすぐに反転してフードで顔を隠したクロード達に反撃してきた。
「ここは俺に任せろ!お前達は近衛騎士の救援に」
『『了解!!!』』
ノルン騎士団でも上位の腕を持つ騎士達は敵の中を掻い潜り、馬車の元まで辿り着いた。
「無事か!」
「お前達はいったい?」
「我々はノルン騎士団だ!味方だから安心しろ!」
警戒していた近衛騎士達はようやく警戒を解いた。
一応、替え玉の二人もノルン騎士団の者だ。ただ偽物とわかると賊が逃げ出す可能性があるので馬車の中で身を守ってもらっている。
少しの間、敵と斬り合っていると援軍が到着した。
「な、なんだ!?」
「いったいどこからこれほどの援軍が・・・」
ほぼ同数の援軍が到着したことで、賊達は撤退を開始した。
「逃すな!追え!!!」
敵の判断が早く30人以上がバラバラに逃げ出した。
裏切った近衛騎士は鎧が重く早く走れないので、早々に昏倒させ縛ることに成功した。
「すぐに歯に毒が仕込まれてないか確認しろ。場合によっては全ての歯を抜いてもかまわん」
無慈悲にクロードは指示した。
「お前は馬を使って次の街まで先にいけ。その手前で待っていれば怪我をした敵がやって来る可能性が高い」
「了解しました!」
「森に逃げたか。姫殿下の両親を、国王陛下たちを狙ったのだ。絶対に逃さん!」
クロードは今回、騎士の鎧をつけた者と軽装で足の速い騎士を分けて配置していた。故に、逃げた賊を確実に追い詰めることができた。とはいえ、夜の森を追うのはかなり難しい状況のため、先回りをして森から出てきたところを捉える手法を取った。
夜が明ける頃には『ほぼ』全ての敵が殺されるか、捕えられることになった。
「一人、どうしても見つかっておりません」
「本当か?他の者との証言は一致しているのか?」
そこに仲間の騎士がやってきた。
「報告!魔物に食べられたと思われる遺体を発見!服装から襲撃犯の仲間だと思われます!」
「そうか。これで襲撃したやつは全員見つかったと言うことか」
クロードはすぐに姫殿下に伝令を送った。
「問題は近衛騎士の中に敵が混じっていたことだな。このまま陛下達を帰らせれば何があるかわからん」
「それではどうすれば?」
「姫殿下に一度、レグナス王国に戻ってもらう。姫殿下の神眼であれば敵か味方かわかるからな」
「なるほど!」
生誕祭では他国の大臣なども来ていたので全員を神眼で調べることはなかった。
そもそも全ての人々を調べる訳には能力的にもキツイので滅多にやらない。
クロードは両陛下が外遊している間に、王城の実権を握り陛下達を亡き者にしようと企んだ者がいると伝えることになる。




