新しい国の名前
クレスト王国に戻るとシオンはしばらく溜まった書類と格闘することになった。
ひーひー言いながら一週間ほど戦ってようやく一息ついた。
机でうつ伏せになっているシオンに、秘書のセツナは肩を揉んだりお茶を入れたりと忙しかった。
(いや仕事しろよ?)
「もう戦争は嫌じゃ・・・」
終結後の書類の多さに嫌気がさしていた。
この一週間でスノー王国も慌ただしく、何度も使者がきたが、書類の整理に忙しくシオンは相手にできなかった。
コンコンッとドアをノックする音が聞こえた。
「はい、どうぞ~」
シオンの代わりにセツナが返事をした。
「ご報告に参りました」
バルドとクロードが珍しく一緒にやってきた。
「セツナ、何をしているんだ?」
見る者によってはシオンを後ろから抱き抱えているしか見えない状態である。
「姫殿下のお疲れを癒そうと?」
「なぜ疑問形なんだ。早く離れなさい」
セツナは渋々離れた。
「はぁ、すまんな、疲れておるのは本当なのじゃ」
「いえ、まだ5歳の姫殿下に摂政としての仕事をさせるセツナが悪いのです」
「ちょっとナチュラルにディスらないでくださいます?」
シオンに気軽に抱きつけるセツナにイラッときたクロードが淡々と言った。
「姫殿下、お忙しいところ申し訳ありません。一つだけ早急に確認して欲しいことができまして、やってきました」
「珍しいのぉ?なんじゃ?」
「新しい国の名前です」
新しい国の名前????
シオンは首を傾げた。
「クレスト王国の多くの民が国の名前に愛着がなく、姫殿下に新しい国の名前を決めてほしいと各地の領主達がアンケートをとった結果です」
!?
「なんと!そうか。実はすでに決めてあっての。新しい国の名前は『ノルン聖王国』じゃ」
「なるのほど。女神ノルン様の寵愛を受けし姫殿下の国という訳ですね。良いと思います!」
「女神様にはシオン姫殿下を遣わした事で感謝しかありませんしな。ワシも問題ないと思います」
「女神様の名前を入れた国名ですか。わかりやすく信仰の対象にもなり民達にわかりやすいですね。素晴らしいと思います」
こうして新しい国名と国旗が発表されて、これよりクレスト王国はノルン聖王国として記載していくことになる。
これにより民達は大いに喜び、連日お祭り騒ぎになった。
各国に新しい国の名前と国旗を伝えに使者を飛ばしながら、またシオンの仕事が増えるのだった。
「なんでじゃ~~仕事が増えるばかりで減らないのじゃ~~(泣)」
執務室でシオンの悲鳴がこだまするのであった。
そしてシオンが寝静まった頃──
「姫殿下はお休みに?」
「ああ、流石にまだ5歳だ。就寝も早い」
「身体を壊さないか心配だ。セツナよ、姫殿下が無理しないようしっかり管理するのだぞ?」
「はい。心得ております」
応接室の一つに、城で働く多くの人々が集まっていた。
「さて、皆も知っていると思うが、もうすぐシオン姫殿下の6歳の誕生日が訪れる。お忍びでレグルス王国のご両親も来訪される。つまり他国の国王と王妃様が視察も兼ねて来訪されるのだ。いつも以上に掃除や、ただ振る舞いに気をつける様に!」
「「「はっ!」」」
元気よく返事をするメイドと執事。
「姫殿下は大人びているとはいえまだ子供である。まだ両親に甘えたい年頃であろうに、一国を任されているため、責任感が強く、弱音を吐かないお方だ。しかし、誕生日ぐらいは両親に甘えさせてやりたいと思っている。わかっているな文官ども!」
「はっ!シオン姫殿下が仕事のことを忘れて楽しめるよう、内省の仕事は我々にお任せください!」
「今回に限り、姫殿下しか処理できない書類も秘書のセツナ殿のチェックの下、通して構わない。誕生日以降に、いつも以上の仕事が残らない様に処理を頼む!」
文官達も敬礼を持って了承とした。
「姫殿下には神眼があるため完全に隠すのは無理だろう。誕生日パーティがあることは伝えて、サプライズで両親がくる事を秘密にしておこうと思う。城だけじゃない、城下町も含めての大規模なお祭りにするぞ!」
「「「オオオォォォォォォ!!!!!!!」」」
シオンの知らない所で、シオンラブ♪の重鎮達のサプライズパーティの準備が始まるのだった。




