徹底的に!
敵が途中に作った駐屯基地にてそれは行われた。
「まさか飛べるだけで力も弱く、いつも迫害されていた我々がこのような大役を任せられるとは」
「女神の寵愛を受けしシオン姫殿下には感謝しかないな。我らの価値を見いだしてこれから重宝して下さると約束してくれた」
「ならば、その期待に応えてみせようぞ!」
日が落ちて暗くなった時刻にそれは始まった。
飛行部隊が駐屯基地に集められていた食糧倉庫に火炎玉が投下されたのだった。
魔石を使った殲滅兵器の他に、今回は大量の炎を生み出す『火炎玉』と言う兵器も開発されていたのだ。
この火炎玉のおかげで自由連合国の食糧は殆どが燃え尽きてしまった。
食糧だけではない。他の生活物資も殆ど燃えてしまった為に、自由連合国の兵士達は少ない食糧を奪い合ったり、一部は近隣の『帝国の町』で盗賊となり被害を与える事になったため、帝国と自由連合国の関係が悪化してしまった。
こうしてシオン達は戦わずに自由連合国の兵士達を飢えさせて撤退させたのだった。
「スノー王国の民の気持ちがわかったかのぅ?じゃが、まだじゃ。総司令が死んだとはいえ、国のトップはまだ健在じゃ。どんどん攻めるのじゃ!」
物資がなく空腹で撤退している自由連合国の兵に遠慮なくクロードは襲い掛かった。
自由連合国の兵士はほとんど抵抗もせずに逃げるしかなかった。
それは、本陣にいた総司令を始めとする上層部が軒並み死んでいたので、命令できる者がいなかったためだ。
こうして自由連合国は帝国と並んで大敗した。
本国に生きてたどり着いた兵士の数は一万に届かないぐらいだった。
北方の自由連合国の民は驚愕した。
意気揚々と出兵した兵士の多くが戦死しており、戻ってきた兵士も空腹と怪我で動けず、執拗に追いかけて来るクレスト王国の軍に恐怖し、とても戦える状態ではなかった。
敗走した軍を追ってそのままノルン騎士団が敵の首都に乗り込んできたが、応戦できる部隊がなくそのまま王城に乗り込まれてしまった。
「ば、バカな!5万もの大軍を投入したのだぞ!?そのほとんどが戦死したというのか!経験豊富な大長殿はどうした!?」
「せ、戦死しました」
!?
「な、なぜそんなことに………」
ドドドッ!!!!!
そこにノルン騎士団が乗り込んできた。
「もう乗り込んできたのか!?」
謁見の間に入ってきたノルン騎士団は綺麗に隊列を組んで入ってきた。そして、左右に別れるとクロードとバルドの2人に挟まれながらシオンが前に出てきた。
「お初に御目に掛かる。クレスト王国の摂政を任されておるシオン・レグルスじゃ。貴殿が北を治める族長殿で間違いないかのぅ?」
すでに大勢が決した状態で話しかけた。
「そ、そうだ。ワシが自由連合国北側を治める大族長ウルーガである!」
見た目が狼の様な獣人であった。
「ならば単刀直入に尋ねるのじゃ。スノーガーデンの魔薬の事はどこまで関わっておる?」
「なぜそれを………」
知らなければ何の事だ?と言ってくるだろうに。
なぜそれをか。こやつは『黒』じゃな。
「ほぅ?知っているようじゃな?子飼いの商人を使いスノー王国を騙して苦しめた罪、更に魔薬を製造して広めようとした罪、万死に値するのじゃ!潔く腹を切るがいい!」
!?
シオンの言葉にウルーガは吠えた。
「黙れ!多種族をまとめる難しさも知らぬ小娘が!死ぬのは貴様だ!!!」
ウルーガは懐に閉まってあった黒い錠剤を口にした。
「うがぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!!」
身体が2倍に膨れ上がり、ムキムキの体へと変化した。
「フシュー………ただで死ねると思うなよ……」
目が赤くなり、ランランと輝いていた。
「知らぬ薬じゃな。貴様が作ったのかのぅ?」
「答える義理はない!貴様から殺してくれるわ!」
そう言うとともに襲い掛かってきた。
ガギンッ!?
伸ばした爪でシオンを切り裂こうとしたが、クロードが剣で受け止めた。
「なにっ!?我が力は人間のそれを遥かに凌駕しているのに何故受け止められる!?」
「ふん、ただ腕を振るっただけの拳が鍛錬を積んだ騎士団に通じる訳がないだろう?」
シオンは動けなかった。
そしてクロードの強さに内心で驚いた。
『まさかここまで腕を上げておるとは、信じられんのじゃ』
いやいや!
いくら剣の腕を磨いても、腕力など種族的に勝てないじゃろう!
普通はそうなのだが、うまく威力を受け流しているので、できる芸等だった。
今さらながら『個』としての強さはクロードが現在1番強いのでは?と思うシオンだった。




