秘密兵器!
次の日になった。
自由連合国の軍は、日の出とともに攻めてきた。
「まったく懲りない奴らじゃ」
「しかし、石壁を登ってくる獣人は厄介ですぞ?」
「確かにのぅ。それに、敵の部隊を完全に殲滅するのは並大抵のことではできん。故に、総大将の首を狙うとしよう」
シオンは敵の攻撃が砦に集中するのを見計らって狼煙を上げた。
「妾も自由連合の政治的な進軍に付き合うほど暇ではないのじゃ」
狼煙の合図から、敵の本陣に『爆発音』が響き渡った。
「今じゃ!左右の石壁を倒すのじゃ!」
シオンがいなくても20メートルの石壁をタイミングよく倒せるように工夫してあったのだ。
本陣の爆発で後ろに気を取られている自由連合の部隊は逃げるのが遅れて、大部分が下敷きになった。
「弓隊!撃ちまくれ!!!」
目の前にいる敵部隊を少しでも削ろうと一斉射撃がどんどん行われた。
「昨日の落し穴で本陣の場所を変えたようですが、頭上にまでは注意が及びませんでしたな」
「うむ、ただあの者達があそこまでの高度まで上がれるのは嬉しい誤算じゃった」
魔物でよくあるハーピィのような両手が羽根になっている獣人族ではそこまで高い高度まで上げれなかった。
しかし、ムササビ族と言う、高い所から飛び降りる様に空を飛ぶ種族が、意外にも風を受けて弓矢の届かない高度まで飛ぶことができたのだ。
無論、風向きや風の強さにもよるが、ここ数日の天気と風向きなら数百メートルまでの高さまで上がることができる様だった。長時間の飛行は無理だが、そこは翼のあるハーピィの様な種族にしばらく補助してもらい、狼煙と共に、高く上がって敵の本陣の真上に飛んで、爆弾を投下してもらった訳である。
爆弾と言っても現在の火薬を使った物ではなく、ファンタジーでよくある魔物から採取できる『魔石』から作られる爆弾である。レベルの高い魔物が落とす魔石の爆弾はかなりの威力があった。
これは前世が軍人だったシオンがこの世界で大砲などの武器を作ろうとして編み出された兵器である。
ちなみに大砲はまだ研究中であり、極秘事項なので秘密だぞ♪
(火薬を使わないため、砲台の耐久に問題があり難航中)
「ここまで聞こえてくるとは、姫殿下が女神様の知識で開発した爆弾とは凄まじい物ですな」
まぁそういう事にしてあるのじゃ。
「世界を壊す可能性があるので余り広めたくはないのじゃが、仕方がないのぅ」
この世界初の空爆じゃ。
せいぜい逃げ惑うがよい!
ドーーーーーン!!!!
ドーーーーーン!!!!
ドーーーーーン!!!!
何回も大きな爆発音が響き渡った。
敵の本陣があった場所には大きな砂煙が立ち登っているのが見えた。
「姫殿下!敵が撤退していきます!」
流石に本陣に異変があれば戻るしかないか。
「今じゃ!全軍、突撃じゃーーーー!!!!!」
城門が開き、待機していたノルン騎士団が飛び出してきた。
「バルド元帥よ。飛行部隊に連絡せよ。上空より敵の撤退場所を追跡して特定せよと」
「かしこまりました」
昨日の夜に急遽、空を飛べる獣人族を確認して、一晩で幾つかの命令を覚えさせたのだ。
砦の上から『大きな旗』を3つ用意して、3色の色で遠くからでも何をすべきかわかる様にしたのだ。
黒い旗3つで、隠密行動しながら敵の追跡。
赤い旗3つで攻撃みたいな感じだ。
「さて、総大将を失った自由連合国の兵達はどの様な行動にでるかのぅ?」
クロード達は逃げ遅れた敵をドンドン刈り取っていった。後方にいた敵は本陣に行くと、すでにほとんどが爆発で息絶えていたのを見て、侵略を断念して撤退を始めた。
今回の戦闘で、数が多くて力の強い部族は後方にいて、立場が弱い部族が前線に出ていた経緯があった。故に、前線の部隊を見捨てた者達は恨まれることになる。
「クロードに深追いは一度止めにして、敵が固まるまで適当な所で待機するよう伝令して欲しいのじゃ」
「今が好機ですが、どうするおつもりで?」
シオンは悪い笑みを浮かべて言った。
「スノー王国にした事をやり返すのじゃよ」
クククッと嗤うシオンも可愛い♪じゃなかった。バルドはどんな事を考え付いたのか軽くため息を付くのだった。
いくら自由連合国の獣人族が人間より強靭な肉体を持っていたとしても、怪我人が多く、やっとの思いで、進軍の途中に築いた駐屯基地に、撤退した自由連合国の兵士達が集まっていた。その数3万弱。5万の軍の2万が昨日と今日で、戻って来れなかったのだ。(一部は捕虜にしてあります)
クレスト王国の秘密兵器。
いきなり本陣が一瞬で全滅するほどの威力のある兵器。それが兵士達の中で恐怖となってこの駐屯基地の内部で争いが起きることになるのだった。




