西南の国境砦
数日の旅の後、西南の国境砦についた。
ここはスノー王国とも国境を面している。
「いつもすまんな。バルド元帥よ」
先に砦入りしていたバルド元帥が出迎えた。
「いえ、国防のためですからな。しかしこの寒さは老体には堪えますな」
ワハハハハハと豪快に笑うバルドに場の雰囲気が変わった。
「姫殿下には前回と同じ罠を準備して欲しいのですがよろしいですかな?」
「それはかまわんが、流石に前回の戦いの情報は向こうも知っておろう?」
「多少の情報は持っているでしょうが、まったく使えないこともないのです。また同じ作戦で来るわけないだろうという心理も働きますからな」
「なるほどのぅ。確かに多少のアレンジもすればいけるじゃろうか」
立ち話もなんなので、そのまま作戦司令室に向かい、詳しい作戦会議を始めた。
「そういえば、砦の中に獣人族もいたのぅ?」
「はい、姫殿下より早く援軍にきてくれた者達です。5千もの数で来てくれました」
確かスノー王国の人数は30万じゃったの。
スノー王国の南の国境にも人員を割いておるのにこの数は奮発したものじゃ。
「では獣人の責任者も呼んで欲しいのじゃ。敵は多くの獣人の種族じゃ。我々の見落としなど助言が期待できるのでな」
「おおっ!確かに!」
流石は姫殿下だとバルド思った。
すぐに獣人の責任者がやってきた。
「お呼びと聞き、馳せ参じました!」
「うむ、名前を聞かせてくれんか?」
「はっ!私は山熊族のヒグマと申します!」
やって来たのは2メートル以上の体格のある熊の獣人だった。
「先にこの場を借りて姫殿下にお伝えしたいことがあります!」
「うむ?なんじゃ?」
ヒグマは膝をついて頭を下げた。
「あなた様の支援のおかげで、家族が飢え死ぬことから救われました。本当にありがとうございました。その恩に報いるために、私をお使い下さい」
シオンはヒグマの目を見ていった。
「わかっておらん!妾は『仲間』を死地に送るつもりも、囮に使うつもりも無いのじゃ!戦じゃし絶対はないのじゃが、できる限りお主らを家族の元に帰すと決めておる!他の仲間にもしっかり伝えておくのじゃ!自分自身を犠牲にする事は許さん!」
シオンの言葉にポカーンと、呆けたヒグマは我に返るとすぐにわかりましたと言うのだった。
そして作戦会議が始まった。
「すごいですな、砦の城壁を上げるなど聞いたこともありませんでした」
「うむ、前回の帝国の防衛戦ではうまくいったのじゃが、同じ獣人として意見を聞きたいのじゃが?」
ヒグマは少し考えてから話した。
「砦の上には弓隊の他に剣を使う騎士隊も配備すべきかと」
「それはどうしてじゃ?」
「獣人の中には爪を立ててそのまま駆け上がってくる者もいますので」
!?
「なんじゃと!?」
シオンはすぐにバルドに視線を送った。
「ヒグマ殿!それは重要な情報だ。そちらの知識とこちらの知識の常識を擦り合わせる必要がある。気になることやそちらでは当たり前の事を教えて欲しい」
「は、はい!」
ヒグマの何気ない意見にシオン達は動揺した。
梯子も使わずに駆け上がるなんてどこぞの異世界ファンタジーじゃ!!!!
自分の作戦が無駄になるかも知れないとわかり、心の中で悪態をついた。
「ま、まさか空を飛べる獣人とかいなじゃろうな?」
「いえ、少数ですがいますね」
なんじゃとーーーーー!!!!!!!
「あわわわわっっっっ、これはヤバイのじゃ・・・・」
慌てるシオンにヒグマは付け足した。
「大丈夫です、その種族は我々の陣営にしかおりませんので」
その言葉にシオンは心底ホッとした。
「それを早く言うのじゃ!びっくりするじゃろう!」
「え、あ、すみまん」
少し理不尽なシオンの言葉にヒグマは素直に謝った。
「それで、その種族はこちらに呼ぶことはできるのかのぅ?」
「呼ぶ事はできますが、力が弱く戦闘向きではないのでいつも後方支援に回っておりますが?」
!?
「ばっかもん!空を飛べると言うことは逆に偵察に役立つのじゃ!何人いるかわからんがすぐに砦にくるよう伝えるのじゃ!」
「はいっ!」
シオンは戦闘には参加させんので安心して欲しいと付け加えた。
「まさか、これほど妾たちと『認識の違い』があるとは思わんかったのじゃ」
「そうですな、少数民族の迫害で国を追われたと聞いてますが、きちんと知識を身に付けさせていれば、国を追われる事もなかったでしょう」
「少し勉強したが、獣人族はまだ狩りで生計を立ててる部族も多いと聞いたのじゃ。せめてもう少し教育を進めなければならんのじゃ」
他国のことではあるが、せめてスノー王国から導入しようとバルドと話し合った。
獣人族はその体格や身体能力に優れているので、なんでも力押しで進めてしまうきらいがあるように感じていた。
しかし、今は戦時中であり時間もないため、複数人から話を聞きながら作戦を修正していくことで話がついたのだった。




