戦乱再び
ハクトはシオンの宣言に呆然としていたがすぐに我に返ると口を挟んだ。
「ち、ちょっと待ってくれ!自分はスノー王国に多大な支援をしてくれたシオン姫殿下にこれ以上迷惑を掛けたくないから、自由連合の情報を持ってきたんだ。自由連合との戦は俺たちで方をつける!絶対にクレスト王国には迷惑を掛けないと誓うから!だから───」
「黙れ」
決して大きない声なのにシオンの低い声は部屋の中に響いた。
「ハクト殿、何をバカなことを言っておるのじゃ?」
「ば、バカなことだと?俺たちは貴方に返せないほどの恩があるんだ。これ以上の迷惑を掛けたくないと思うのが何が悪いんだ!」
「それじゃ!馬鹿者!お前達獣人は家族を仲間を大切にすると聞いたのじゃがそれは嘘じゃったかのぅ?」
「嘘じゃない!それに姫殿下は、クレスト王国の兵士だって前に炊き出しを手伝ってくれた恩人だ。勝手だが、自分は仲間だと思っているよ」
ハクトは拳を握りながら答えた。
「なんじゃ、もう答えを言っておるではないか」
「えっ?」
訳のわからないと言ったハクトにシオンは高々に言った。
「仲間であればいくらでも迷惑をかけるがよい!同じ『仲間』であればいくらでも助け合おうぞ!」
目が滲んでハクトは顔を上げる事が出来なかった。
ここまで大きな人物がいるのかと改めてシオンの偉大さに敬服したのだった。
「クロードを呼べ!」
騎士団長のクロードは兵の訓練のためこの場にいなかった。
最近は自分自身の鍛錬などシオンの側に居ない事が多くなった。
セツナや文官と言ったもの達が育ってきて、武官であるクロードが側に居なくても良くなったのもある。
少しして全力で走ってきたクロードがやってきた。呼吸は乱れていないのは流石だ。
「お呼びに参上致しました」
「よく来た。クロードよ。今回はお主の力を借りたいと思う」
「はっ!シオン姫殿下のご命令とあらば何なりとお申し付けください」
シオンはセツナに視線を送るとセツナにこれまでの経緯を説明させた。
「なるほど。自由連合の侵攻を防ぎつつ、こちらから討って出ると?」
「そうじゃ。帝国の時は防衛戦じゃったが、今回は自由連合を攻めてトップを入れ替えねばならん。魔薬をばら撒けれてはかなわんのでなぁ」
「お任せ下さい!すぐに準備致します!」
「頼りにしておるぞ」
クロードは礼をするとまたすぐに出ていった。
「さて、こちらは雪が少ないとはいえこの寒さは進軍する兵士には辛いのぅ。セツナ、『カイロ』の準備はどうじゃ?」
「鉱山がある為、材料が多く取れるのですでに大量生産を終えて、国内で販売しております。こちらを軍備の備品として回します。」
「うむ、頼むのじゃ」
ハクトは一泊してからスノー王国に戻ることになった。クレスト王国と軍事同盟の書簡を持って。無論、数人の使者を伴ってである。
そして、1日後に自由連合の宣戦布告があった。
理由は、スノー王国とクレスト王国が自国の商人を騙してお金を撒きあげたことによる報復とのこと。
まったく笑ってしまうのぅ?
「自由連合の侵攻ルートはどうじゃ?」
「はっ!自由連合は帝国にいくばくかのお金を支払い、帝国の領地を通って西側の国境から攻めて来そうです!」
「ふむ、流石に雪の険しいスノー王国は通らないか」
前回は東側の国境からじゃったしのぅ。
「はぁ、この寒い季節に進軍とは難儀なことじゃ」
「姫殿下、今回はどのような作戦で行きますか?」
「ふむ、定石なら春先まで砦で防衛して雪が溶けた頃に一気に攻めたいのじゃが、こればかりは戦況を読んでからの判断になるのぅ。問題は敵の戦力じゃな。どれほど動員できるのかじゃが・・・」
クロードが地図を広げながら説明した。
「敵が本腰を入れて攻めてくるのなら5万ほどの戦力でしょう」
「なんじゃ?思ったほどではないのぅ?」
「はい。自由連合は多くの多民族の集まった国家であり、実は二つの大部族で北と南に分かれているんです。今回は南側が不干渉とのことで、北側だけの戦力で攻めてきます」
!?
「なんじゃそういうことか。妾の勉強不足じゃな。敵の真の目的は南の国に魔薬を蔓延させて、北側の部族で統一したいと思っていそうじゃな」
「なるほど。同じ国に二つの勢力があると邪魔でしょうね」
「じゃからと言って魔薬を許す訳にはいかんのじゃ」
「はっ!姫殿下の御心のままに」
シオン達は作戦を立てると寒い中、西南にある国境砦に向かった。
「それにしてよく帝国が他国の軍隊を領地に入れることを許可したのぅ?」
「それは我々のせいですね。前回帝国軍の被害は甚大で、自由連合と事を構えたくなかったのでしょう」
「あ、それもそうじゃの」
外にはうっすらと雪が積もって白くなっていた。
「兵士の防寒具は大丈夫かのぅ?妾だけ暖かい馬車で申し訳ないのじゃ・・・」
「大丈夫です。姫殿下のお身体が1番大切なのですから、後で労ってくだされば十分ですよ」
まったく、こういう方だから仕かえがいがあるんですよね。
セツナはほっこりしながらシオンの手を握るのだった。




