再会
冬になり、余り雪の降らないクレスト王国も寒くなってきた。
「流石に新年には戻らねばならないかのぅ?」
シオンの呟きにセツナが注意した。
「姫殿下、それは違いますよ?新年の前には戻らねばなりません」
そうなのだ。
こちらの世界でいう『元旦』には国中で祝い事をするのが習わしなのだ。
「しかし、この国の事はどうするのじゃ?摂政がいなければ締まらんじゃろう?」
「何を言っているのですか。姫殿下はまだ5歳なのです。国に戻って親と新年を祝うのに文句の言う者はいません!」
そんな輩がいたら殺します。
と、心の中で呟くとセツナはシオンのスケジュールをしっかりと伝えた。
「約15日前には戻らんといかんのか?」
「はい、ここから3~4日ほどかかりますので余裕を持って出発致します」
う~む?
また実家に帰るのが面倒じゃのぅ。
「それに王妃様、母君も心配されていますよ?」
!?
「そ、そうじゃった!」
シオンは家族愛が無いわけでは無いのだ。
無理して心配させるのが忍びない気持ちがある。
そこで何かこの国での特産品でプレゼントを贈ろうと考えた。
決して怒られるのが怖くて賄賂を贈ろうというわけではないぞ!
「プレゼントですか?ああ、それは良いと思います!」
セツナが同意してくれたのでどんな物が良いのか相談した。
「ご両親に贈るのであれば、それなりに高価な物になりますね。一国の国王と王妃様ですから。パッと思いつくのが金で出来た細工物でしょうか?金鉱山があるのは伝えてあるので。もしくは新しく建設中の綿花で出来た衣類でしょうか?宣伝にもなりますし。ただ綿花なので絹とは違い、王族への贈り物としては微妙なのですが」
「うむ、そうじゃのぅ。何かいいものが無いものか・・・・」
無難なところで金細工の物か。
しかし少し味気ないと感じるのぅ?
シオンは丸一日考えることになった。
そして子供らしいプレゼントを思い付いた。
そして、ついに実家………レグルス王国に戻る日になった。
旅路は順調で特に問題なく移動し、約半年ぶりに戻ってきたのだった。
王都について城の入口に着くと大勢の人々が迎えてくれた。先触れでシオンの到着時間を知っていたのもあるが、国王と王妃……父と母も入口で迎えてくれた。
「お帰り」
ただの一言が胸に響いた。
「ただいま」
馬車から降りてきたシオンを2人は抱きしめた。
親の愛情を感じるシオンだった。
それから城に入り、家族と一部の家臣の中で今までの話をした。
「なんとも、信じがたい話だな。無論、信じているが」
「よく無事で戻ってきました。シオン、どんなことがあっても無事に戻ってくるのですよ?」
二人の言葉にしっかりと頷くと今後のことについて話した。
「前回は突然の話だったのに手厚い支援物資の手配ありがとうなのじゃ」
「シオンはきちんと資金も送っただろう?当然だよ」
「そうよ。隣国とはいえ飢えている国の支援は王族としての義務みたいなものよ。まぁ、帝国は別としてね」
帝国は過去に勇者が強引に他国に攻めて領土を奪ったので全ての国に恨まれているからだ。
「それで、スノー王国はどうなったんだ?」
シオンは悪徳商人の末路を話した。
「それは痛快であるな!」
国王は大笑いした。
麻薬の薬草を育てる施設を建てると思っていたら、ただの温泉施設であり、奪われた財産以上のお金を使わせることに成功したことがツボったようだ。
「その悪徳商人の後ろに何者かがいる可能性があるのじゃが、それはまだわからんのじゃ」
「そこはスノー王国の仕事だよ。それより領地の分割譲渡など思い切ったことをしたね」
「はい、土地が作物を育てるのに向かない土地じゃったので、一部、東の国境付近に手付かずの土地があったのを国境線を下げて、分割譲渡したのじゃ。民が飢えるのは女神様も見たくは無いであろうしのぅ」
女神様か。
「前から聞きたかったのだが、シオンは女神ノルン様から何か使命でも受けているのかい?」
「いえ特には無いのじゃ。ただ強大な力を扱うには正しい心を持つことと思っているのじゃが、女神ノルン様の信仰が最近弱くなっているようで、信仰心の減った女神様は力を落とされているようじゃった」
!?
「なんと!女神様のお力が減っているのは由々しき事態だぞ!?」
「そうね、新年のお祝いに、再度女神ノルン様に感謝を讃える行事を催しましょう。これからは少なくとも女神ノルン様を年に何回か讃える行事を行うようにしましょうか。この素晴らしい娘であるシオンを遣わせてくれたのだから」
王妃もシオンの頭を撫でながら言うのだった。
そしてこのことでまたノルンの神格位が上がるのはも少し後の話であった。




