スノー王国
宴会の次の日
「ほ、本当にこれだけの物資を送って頂けるのですか?」
ハクトの目の前にはこれでもかと言うほどに支援物資が積まれていた。
ただしに馬車の数が足りずピストン輸送になることを伝えた。
「それくらいなんでもありません!自分が何回でも往復してみせます!」
「うむ、しかしスノー王国から荷物下ろして空の馬車で戻るのも味気ない。何かスノー王国での特産品を買ってクレスト王国で売りたいのじゃ」
「それは確かに。族長のユキネと相談してみます」
「よしなに頼むのじゃ」
スノー王国まで約一週間の旅路は問題なく進んだ。
「流石にここまで来ると寒くなってきたのぅ?」
今の季節は秋である。
クレスト王国より温度も5度ほど低かった。
「姫殿下、風邪を引いてはいけません。上着を一枚着てください」
前回留守番だったセツナは部下に留守を任せて無理矢理ついて来たのだった。
「うむ、ありがとうなのじゃ」
そうこうしているうちにスノー王国の王都へ辿り着いた。
「ここまで村などなかったのじゃが、スノー王国とはどんな所なのじゃ?」
「ここはご存知の通り、少数部族が追い出されて作られた国だ。国といっても『王都シェル』しか街はない。まぁ、木こりとか数軒の作業する小屋は点在しているが、みんな寄り添って暮らしているんだ」
ほほぅ?
それは知らない情報じゃな。
「だいたいで良いのじゃが、人口はどれぐらいなのじゃ?」
「詳しく調べてないからわからないが、おおよそ30万って所だ」
国としては少ないのぅ?
しかしおかげで支援物資は足りそうじゃ。
「南の国境の警備はどれほど詰めておるのじゃ?」
「約二千だな。有事の際はすぐに王都から動けるものが駆けつける手筈になっている」
「少ないのぅ?我が国でも常時5千以上は詰めておるのじゃが」
「人口が少ないのもあるが、攻めてきて奪い取っても実りが少ないからな。今まで小規模ないざこざはあったが、本気で攻めてきた国はないぜ?」
シオンは真面目な顔をしてハクトに言った。
「今回の雪を溶かす薬品の嫌がらせ。妾は本格的に攻めてくる前準備ではないかと思っておるのじゃ」
!?
「えっ!?だが、しかし・・・」
「蓄えの食料もない。金銭も巻き上げられて丸裸の国じゃ。妾ならチャンスとみなして滅ぼすじゃろう」
ハクトの顔から血の気が引いた。
「妾の支援がなければ、南の自由連合か帝国か、はたまた妾の国へ盗賊として食料など奪う気であったろう?敵はそれを口実に攻める手筈を整えておったはずじゃ」
「ですが、我々の国には奪える価値のあるものなど──」
「ハクト殿達が知らないだけで、何か見つけた可能性があるのではないか?」
!?
シオンの言葉に何もいえなくなった。
「その話を族長にして頂いてもよろしいでしょうか?」
「無論じゃ、そのためにわざわざ理由を作って同行したのじゃからな」
ハクトはどこまで先を読んでいるんだとシオンを感謝の気持ちから畏怖の念を感じるようになった。
馬車は城・・・というか、和風の屋敷の門をくぐり中へと入った。
「シオン姫殿下、お疲れかと思いますが、すぐに族長がお会いになるそうなので中にどうぞ」
従者に丁寧に案内され、屋敷の奥へと足を運んだ。
「おや、履き物を脱ぐことをご存知でしたか」
和風の屋敷である。
セツナ達は知らなかったがシオンだけは靴を脱いで上がっていた。
「これは失礼致しました!」
セツナたちも慌てて靴を脱いだ。
「いえいえ、初めてのお客様は知らなくて当然です。シオン姫殿下様は博識でございますね。脱いだ履き物の代わりにこちらをお履きください」
代わりにスリッパのようなものを渡された。
「これは暖かいのぅ♪」
ちょっとしたトラブルはあったがそのまま奥へと通された。
ふすまを開けると族長のユキネと娘のタマモはシオンを確認すると土下座のポーズで深く頭を下げた。
「この度はシオン姫殿下様の慈悲に深く感謝を申し上げます!」
「良いのじゃ。頭を上げてくだされ。自己紹介といこう。妾がシオン・レグルスじゃ。クレスト王国の摂政を務めておる」
「恥ずかしながら、スノー王国の長を任されておりますユキネと申します」
お互いに自己紹介したことで次の話に入った。
「それでは我が国のために国境線を下げて、一部の田畑に向いている領地を分けて頂けると言うのは本当でしたか」
「うむ。民が飢えるのは我が女神ノルン様の想うところではないのでな。妾のできる範囲で飢える事のない国を作っていきたいと思っておるのじゃ」
「我がスノー王国はこの御恩を決して忘れません。子々孫々まで伝えていくと石碑に刻み、受け継いでいくと誓いましょう」
そこでハクトが口を挟んだ。
「途中で失礼致します。馬車の中でお話ししていた件もそろそろよろしいでしょうか?」
「何かあったのですか?」
ハクトがシオンの憶測を代弁して伝えた。
!?
「そ、そんなことが!?」
「あくまでまだ憶測の域が出んのじゃ。何か思い至ることはないかのぅ?」
ユキネは言いにくそうに口を開いた。
「我が亡き夫が言っておりました」
「兄貴が?」
ユキネは側にいたタマモを抱きしめながら語った。
「『それ』を見つけたせいで夫は殺されたのです」
ユキネの言葉にハクトは言葉を失うのだった。




