また忙しくなるのじゃ(周囲が)
スノー王国の支援をすると決めてからの行動は早かった。
来訪した使者にタマモちゃんを一緒に帰してから、クレスト王国で用意できる食糧をかき集めて、さらにはレグルス王国から大量の小麦を輸送する手配をして忙しくなった。
「う~む」
レグルス王国にて、国王であるシオンの父親は考え事をしていた。
そこに母親である王妃がやって来た。
「どうしたのですか?」
「ああ、シオンからの緊急支援の手紙の話は知っているだろう?帝国を撃退した話は痛快ではあったが、今度は人助けとは忙しい子だよ。君の優しい気持ちを引き継いでいるようだね」
「まぁ、恥ずかしいこと言わないで下さい。でも、いくら女神様の寵愛を受けているとはいえ、危険なことはやめて欲しいのが本音なのですが」
そうだなと相打ちを打ちつつシオンの行動に誇らしくもあった。
「今回は支援活動だ。しかもしっかりと金銭まで送って来ているのだ。うちは港から輸入も出来るし、出来る限り支援しようじゃないか。ただ──」
「金山のことは秘密にしておいた方が良いでしょうね」
「そうだな。もし金山の事が帝国にでも知られれば本気で攻めてくるだろう。無論、そうなれば我が国も協力して対抗するが、それよりは帝国の燻っている内乱に手を回して、動けなくする方が良いだろうな」
「身内にも情報規制をしておいて下さいね?」
「無論だよ。ここでは私と君以外には秘密にしておく。この事実がバレるまではね」
「シオンには出来れば戻ってきて欲しかったけど、またしばらくは無理そうね」
「はぁ~早く娘に会いたいのになぁ~すでに立派に摂政を務めているし鼻がたかいよ」
「貴方!シオンはまだ5歳と言う事を忘れないで下さい!」
王妃の怒りの声に国王もビクリッと震えて頭を下げた。
「そ、そうだったな。すまない」
「まったくもう!」
こうして2人はシオンに気付かれないように、別の支援も行うのだった。
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───その頃───
スノー王国では─
「そ、それは本当ですか!?」
スノー王国の長である【ユキネ】はクレスト王国から戻った使者の話に驚きの声を上げた。
「はい!先の戦争でクレスト王国を奪い取ったシオン姫殿下様は大変話のわかる御方でして、こちらの困窮を見抜くと我が国への援助を申し出てくれました。我々の戻る時も、クレスト王国ではまだ少ない備蓄分の小麦を渡してくれました。これで数百人は助かります!少し待てば次なる支援もして頂けるとの事です」
余りにも我々に都合のよい提案にユキネは怖くなってしまった。
「それで、向こうの要求は何なのですか?住みにくい土地とはいえ、我が国も狙っているのでしょうか?」
使者は再度頭を下げて申し上げた。
「この2通目の手紙に書かれております」
手紙にはシオンの人となりが分かるような提案が書かれていた。
1つ、双方の対等な協力体制の軍事同盟の提案。
2つ、お互いの国益を求める対等な交易の締結。
3つ、食糧は民に等しく配給すべし(独占した時点で次の支援はなしとする)
4つ、どんな事情があっても家族を人質に出すな!
と、書かれてあった。
「…………本当にまだ5歳とは思えませんね。貴方からみてシオン姫殿下は家臣の言いなりの、傀儡の王でしたか?それとも自らの意思で行動できる聡明な御方でしたでしょうか?」
「後者でございます。今回はシオン姫殿下様が自ら考えて決定されたことです」
「我が国はシオン姫殿下に最大限の感謝を捧げ、できる限りのお返しをしなければなりません。すぐに【ハクト】を呼び出しなさい」
!?
「ユキネ様!それは危険では!?」
ハクトは交戦派閥の長であり、ユキネの従弟にあたる人物である。
「いいえ、民が飢えないとわかれば協力するはずです。今すぐ呼び出しなさい。これから二国間で協力していく時に、余計な邪魔をしてもらってはいけませんので。こちらが本気だと近衛騎士を同行させます。すぐに連れてきて下さい」
「わ、わかりました!」
慌てて出て行った使者を見送って側にいたタマモの頭を撫でた。
「怖い想いをさせてごめんなさい。無事に戻ってきてくれて嬉しいわ」
「母様、シオン姫殿下はすごく優しい御方でした。きっとよくしてくれます。私も仲良くなりたいです」
国同士の契約に誠意を見せるために娘を断腸の思いで送ったけれど、まさか怒られるなんて思ってもいなかったわね。シオン姫殿下・・・会うのが楽しみだわ。




