人助け
シオンは使者の問い掛けに答えた。
「まぁよかろう。しかしこちらはすぐに千人もの移民はだせん。せいぜい300人ほどじゃ。そちらが多いからといって迫害や仲間外れにされては困るのじゃが?あわよくば領土を奪われる危険もあるしのぅ?」
!?
「懸念は最もでございます。故に、我が姫様をこちらの国にて留学させたく思っております!」
使者は床に頭をつけるほどに下げた。
シオンは軽くため息をついて、側にいたセツナとクロードに目配せをして、話し合いをするので待たれよと席を外した。
謁見の間の後ろにある部屋にて仲間との話し合いが行われた。
「はぁ~スノー王国はこちらの情報以上に困窮しているようじゃな」
「一年の多くが雪に閉ざされてますからね。気温も寒く、なかなか雪が溶けないと聞きます」
「しかし一国の姫を人質にとは・・・」
「やはりそうじゃろうな。移民は千人と言っておったが、できればもっと多くの者を作物が採れる緑豊かな領地に送りたいじゃろう」
別に受けてもいいのだが、見聞が周辺国に悪く見えてしまうのが問題なのだ。
「我が国の民もようやく腹いっぱい食べれるようになったとはいえ、まだまだ備蓄までできておらんしのぅ」
「姫殿下はどうお考えですか?」
「妾は受けても良いと思っておる。なんなら国境線を下げて未開墾の領地を譲っても良いとさえ思っておるよ。民が飢えるのは我慢ならんのでな」
「姫殿下様、なんとお優しい………」
ジーン!とセツナは感動していた。
「しかし、国同士での話し合いで無償での譲渡など、他国に舐められてしまいます。そうなれば更なる領土の譲渡を求められたり、帝国と共同で攻められては敵いません」
「そこなのじゃ。何かよい案はないかのぅ?」
う~んとシオン達は頭を悩ませるのだった。
そして人の目のある謁見の間から使者達を移動させて、個室にて話し合いが持たれた。
良い案が浮かばなかったので使者と意見を交わして決めようと言う事になったのだ。
(いつも良い案が浮かぶ訳じゃないしね)
「単刀直入にお伝えするのじゃ。そちらの事情を出来る限り教えて欲しい。状況によっては国境線を下げて領土を分ける用意もあるのじゃが?」
!?
「なんと!?それは誠でございますか!」
使者は目を大きく開けて驚愕していた。
「知っての通り、妾はこの国を奪い取った。しかし王侯貴族が民に圧政を強いていたからじゃ。そちらの民も飢えに苦しんでおるのであれば、助けるものやぶさかではないのじゃよ」
「あ、ありがとうございます!この御恩は決して忘れません!」
「まぁ待つのじゃ。それには正確な情報が欲しいのじゃよ。ただで差し上げますとはいかぬのでな。そなたの権限で話せるだけ話て欲しいのじゃ」
使者は小さな姫を一度見てから話た。
「実はお察しの通り、我が国は食料不足にて苦しんでおります」
「今までもギリギリやりくりができていたじゃろう?どうしてここまで切迫しておるのじゃ?」
使者の話だと、元々南にある自由連合国という、帝国に対抗する為に小国が集まってできた国から、人種差別などで追い出された少数部族が集まってできたのがスノー王国の始まりらしい。
そして、最近とある商人から雪を溶かす薬を紹介され、試しに使ったところ効果があった為に、大量に購入して畑に撒いたら、作物が育たなくなったようだ。
シオンは前世の知識から溶雪剤だと思った。
あれには塩化カルシウムなど使われており、作物には毒になる。鉄製の物も錆びるしのぅ?まぁこの世界ならではの、毒物が混ぜてあったかも知れないが。
つまりは、その商人に騙されたのだ。
「その商人に騙されたか、正しい使い方を聞いていなかったのか・・・」
「その商人は自由連合からきた行商人で、すでにスノー王国にはいなく捕まえることができませんでした。しかし、畑に撒くよう言ってきたのはその商人なのです!建物に撒くより雪を溶かして収穫物の成長をよくすればたくさん取れるからと・・・」
騙された方じゃったか。
「国が騙されたとは大きい声では言えんしのぅ?凶作だったと言うしかない状態と言う訳じゃな?」
「恥ずかしながら・・・」
使者も顔を下げて悔しそうに拳を握った。
「もうその薬は使っておらぬのであろう?」
「無論です!」
通常の物であれば水で流されればすぐに回復するであろう。
しかし次の収穫まで多くの者が飢える事になる。
「………国境線を下げる」
!?
「ほ、本当でございますか?」
驚く使者に、タマモも頭を下げた。
「ありがとうございます」
可愛いのぅ♪
「姫殿下、周辺国への印象が悪くなりますが?」
「我が国の印象より人命優先じゃ」
シオンは素早く側にあった紙に指示を書いた。
「まず、すぐに国境線に人が住めるように木材の手配………いや、妾が魔法で建物を建てるのじゃ。セツナはレグルス王国の父上にできる限りの小麦である食糧の手配をお願いするのじゃ。臨時収入があったので通常の1.5倍で買い取ると言って欲しいのじゃ」
「かしこまりました」
「そして使者殿はすぐにスノー王国に戻ってこの事を報告して欲しいのじゃよ。すぐに文を書くのでな。少ないがここにある備蓄分の小麦も馬車に積ませる。なんとか餓死者を減らして欲しいのじゃ」
使者は、泣きながらありがとうございますと何度も繰り返し頭を下げながら言うのだった。




