一難去ってまた一難
鉱山都市ガイアディアの視察も終わり、王都に戻る時だった。シオンの見送りにマーガレットは・・・いや、街に住む多くの民がシオンを見送ろうと大勢押しかけていた。
理由は、ガイアディアの街からでも鉱山の山が崩れるのが見えていたからだ。一つの山を破壊したシオンを見ようと押しかけたと言う訳である。
元々シオンのおかげで暮らしが楽になったが、まだまだ恐怖を覚えている民衆が多かった。
それが山を破壊するほどの強大な魔力を持った支配者が視察に来たとなれば恐怖より興味が湧くのが当然なのだ。
しかもシオンの周囲にいる兵達などは崇拝に近いほどシオンを崇め奉るものだから、一部では神様に近い扱いを受けているのである。
「いいか!皆の者!こちらがこの国を豊かにして導いてくれるシオン姫殿下様である!まだ年齢は幼いが、あの大きな山を瓦礫の山にするほどの強大な魔法を扱うことができる!シオン姫殿下は我々のために善政を敷いてくれる素晴らしいお方である!しっかりとそのお姿を目に焼き付けるのだ!」
!?
「こらっ!民に強制するでない!あくまでも自由意志に任せるのじゃ!」
「はっ!申し訳ありません!」
マーガレットはわざとそう言ってシオンが訂正するのを、わかっていて言ったのだ。
『これで姫殿下の懐の広さが伝わるでしょう』
そこにシオンとかわらぬ年頃の少女が小さなカゴにパンを入れて持ってきた。
「あ、あの姫殿下様、おかげで暮らしが楽になりました。私が焼いたパンをどうぞ」
護衛が遮るがシオンは少女の手をとってパンを食べた。
「姫殿下!せめて毒味を!?」
慌てる護衛を止めて言った。
「うむ、美味なのじゃ。ありがとう」
少女の頭を撫でるとシオンは馬車に乗るのだった。
「シオン姫殿下!少し軽率が過ぎますよ!」
セツナも怒るが・・・
コソッ
「安心せい。神眼で毒がないか確認しておる」
「そんな使い方が?失礼致しました」
馬車の窓を開けるとシオンは大きな声で叫んだ。
「皆の者!達者でな!すぐにはこれぬが、妾も、もっとみなが豊かになるように頑張るからのぅ!皆も体に気をつけてくらすのじゃぞ!!!」
手を振りながら馬車は出発して行った。
シオンが行ってから街の人々は話に花を咲かせていた。
「あれが新しい王様なのか。素晴らしい方だったな!」
「おいおい、女の子だから女王様じゃないのか?」
「いいんだよ。細かいことは」
「あの鉱山をぶっ壊すなんてすごい力を持っているんだな!?」
「でも、すごく優しそうな女の子だったよ。平民の女の子が焼いたパンを食べてくれるなんて・・・」
「そうだよな。今までの貴族様は俺たちのことなんて雑草のようにしか思っていなかったもんな」
「これからこの国は変わるような気がするわ」
こうして新たな伝説を作ったシオンはガイアディアの人々に受け入れらるのだった。
(いや、一部は不可抗力なのじゃが・・・)
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また数日かけて王都に戻ったシオン達の元に緊急の知らせが届いた。
「何じゃと!バルトス帝国が宣戦布告じゃと!?」
それは帝国からの宣戦布告だった。
「それで敵の数は?」
クロードが斥候からの情報を伝えた。
「敵の数は約3万とのことです。連絡から逆算すると5日ぐらいに国境に到着すると思われます」
「3万じゃと?少ないのぅ?まだ後続があると思うべきじゃな」
「流石は姫殿下。私達もそう予想しております。すでにバルド将軍が現地で陣頭指揮をとっており、混乱なく対応できると思いますが、後続がきたら危険かと」
シオンは地図を広げて命じた。
「すぐに国境に向かうのじゃ。セツナは各領主に連絡を!クロードは王都で動かせる兵をまとめ上げて帝国の国境がある南の国境砦に向かうぞ!」
!?
「シオン姫殿下も向かわれるのですか!?」
「当然じゃ!妾が居れば被害を軽減できるからのぅ!すでにこの国は妾の治める国じゃ!妾が向かわずしてどうするのじゃ!」
セツナは反論出来なかった。
シオン姫殿下に危険な事をして欲しくないのと、人を殺めるような行動をさせたくない気持ちがあった。
しかし、まだ幼いとはいえ、一国の主であるシオンの言葉を否定出来なかったのである。
「姫殿下、ご武運を。必ずご無事に戻ってきて下さい」
「うむ、セツナも留守の間、よろしく頼むのじゃ」
シオンはそう言って出発の準備をするのだった。




