人質交換
【風魔光太郎視点】
エンパイア帝国と友好通商条約を結んだので、そのことをホースメン騎馬国家にも知らせて、こちらへの攻撃を取りやめてもらおうとしたのでござるが…全く聞く耳を待ってくれなかったでござるよ。
「風魔の里の当主殿、聞こえるか?」
向こうから通信、この声はエンパニウムさんでござるな。
「こちら風魔の里の風魔光太郎でござる」
「繋がって良かった。ホースメン騎馬国家に亡命したと思われていた我が国の宰相を御丁寧に首を箱詰めにして送ってきた。この状態でも生き返らせられるだろうか?」
「身体があった方が…良いでござるが」
「わかった。何とかしてみよう」
それにしても亡命してきた者を斬り殺すとは、遊牧国家とは何処の世界でも野蛮人の集まりか何かでござるか?
やれやれ、機動力でこちらを蹂躙するつもりならこちらも考えがあるでござるよ。
【エンパニウム視点】
ワシの目の前には、我が国を代々宰相として支えてくれていた当代クレーメンスの首が入った箱が置かれている。
「そんな、クレーメンス…どうして」
アンヌリッタがこんな顔をするのも無理はない。
クレーメンスとワシとアンヌリッタは幼馴染であった。
昔はコイツとアンヌリッタを取り合ったものだ。
ワシにとってもかけがえのない親友…だからこそホースメン騎馬国家に亡命するなど初めは理解できなかった。
ワシの説明不足がお前を亡命に駆り立ててしまったのだな。
「案ずるなアンヌリッタよ。クレーメンスもその家族も必ず取り返す」
「貴方!何を言ってるの!クレーメンスはもう死んでしまったのよ!死んだ人間は生き返らないのよ!」
「可能な人物が風魔国にいる」
「!?信じて良いの?」
「あぁ。そのためにもクレーメンスの身体を取り戻さなければ。忙しくなる」
「貴方、ありがとう」
「あぁ」
ワシは水晶を取り出し、ホースメン騎馬国家と連絡を取った。
「キバムス王よ。聞こえるか?」
【キバムス視点】
この声は魔族に魂を売ったエンパニウムか。
今更何のようか知らんが弁明ぐらいは聞いてやるとしよう。
「何のようだエンパニウム?」
「1つ忠告をしてやろうと思ったまでよ。風魔国と戦をするのなら国の存亡をかけて戦うことだ。それでも勝つことは不可能だろうがな。あぁ、言いたいことはわかる。だが、最後までワシの話を聞け。お前は、魔力について何処まで知っている?その魔力という概念を根本から変える化け物が風魔国の当主だ。悪いことは言わん。複数の国が連なった騎馬国家で、ワシのようなことになれば、それは内戦の始まりぞ」
フン。
何をいうかと思えば、負け犬の遠吠えか。
「言いたいことはそれだけか?安心しろ、風魔国を滅ぼした後は、お前の国も滅ぼしてやる。その次は、パンツァー共和国と漣国だ。俺が天下へと飛翔していく様を空で見てると良い!」
「そうか。では、もう何もいうまい。ここからは交渉じゃ。クレーメンスの身体とクレーメンスの家族の身柄を引き渡してもらおう」
成程、自分のせいで死んだクレーメンスとやらを埋葬したいということか。
そちらは飲んでやらんこともないが家族については却下だな。
あんな上玉、活躍した兵らへ慰み者として渡してやれば、士気が高まるのでな。
「クレーメンスとやらの身体は送ってやる。だが、その妻と娘はダメだ。もうこちらの戦利品として、活躍した兵らへの慰労物として考えているのでな」
【エンパニウム視点】
野蛮人め。
クレーメンスの家族を兵らの奴隷にすると堂々と宣言するとは。
奴らが滅ぶことは目に見えている。
圧倒的な力の奔流に一国の力で抗えるわけがない。
それに国を治める者としての器もな。
クレーメンスを今生き返らせてもあやつの妻と娘がそばに居らねば、何の意味もない。
やれやれ。
「わかった。では、交渉じゃ。ワシが現在抱えている残りの重装歩兵団2千とクレーメンスの妻と娘を交換しようではないか」
すまない何も知らぬ兵たちよ。
後で、お主らも生き返らせてもらうゆえ、協力してくれ。
【キバムス視点】
エンパニウムめ考えたな。
確かにエンパイア帝国の盾と呼ばれる重装歩兵団は魅力的だ。
それにだ。
これを受けて、こちらは損をすることがない。
重装歩兵団を酷使して、使い潰し、その後に風魔国を滅ぼせば、何の苦労もせずにエンパイア帝国が手に入る。
その後に女どもを掠奪し、兵らに分け与えてやれば良い。
「良いだろう。人質交換してやろう」
【エンパニウム視点】
ふぅ。
何とか乗ってくれたか。
どうせ、風魔国が負けたら今の我が国がホースメン騎馬国家とまともに戦うことはできん。
それにだ。
万が一にでも風魔殿が負けようはずもない。
1人で盤面を覆す圧倒的な力の奔流をその身に受け、ワシの忠告を聞かなかったことを盛大に後悔すると良いキバムスよ。
「交渉成立だ。せいぜい後悔せぬようにな。武運を祈っておるよ」
「フン。負け犬は負け犬らしく地べたに這いつくばっておけ。直ぐに風魔国を滅ぼして、エンパイア帝国も滅ぼしてやるからな。せいぜい、それまでの短い人生を謳歌するのだな。ハーハッハッハ」
ガチャリ。
最後に高笑いしよって、今から恐ろしい目に遭うとも知らず哀れなものよ。
「風魔殿、クレーメンスの家族を取り戻すために事情を知らぬ残りの兵の全てをホースメン騎馬国家に与えた。申し訳ないがそ奴らもことが終わったらワシらのように生き返らせてもらえると助かる」
「2人のために兵を差し出したのでござるか!?やはり、女子に騎馬国家は危険なのでござるな。承知したでござる。既に迎え撃つ準備はできているでござるよ」
「そうか。武運を祈る」
ガチャリ。
やはり恐ろしい御方だ。
大魔王とやらでなくその娘の魔王が婿に選んだのも納得だ。
ワシにも娘がいれば、取り込みたい。
アヤツが居れば、国の統一など瑣末なことであろうからな。
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