第十三章 カエルが問う、あるいはわからないということ
三つの試練を抜けた先に、小さな平地があった。岩の間に、岩が少し引いた場所があった。風が当たらなかった。地面が平らだった。それだけの場所だったが、山の上ではそれで十分だった。
荷物を下ろした。誰も何も言わなかった。言う体力が残っていなかったというより、言う必要がなかった。谷があった。橋があった。庭があった。それだけで、今日が何であったかは全員が知っていた。
カイが火を熾した。手際よかった。元騎士の技術だと思った。ルーメンが「お手伝いします」と言って、薪を運んだ。火が、小さく、安定した。
リュウが、ヴェルト師の隣で丸くなった。老人は何も言わなかった。ただ火を見ていた。
カエルは少し離れたところで腕を組んで座った。火の方を向いていたが、火を見ていなかった。どこか別の方向を向いていた。
愚者は、少し外れた岩の上に座っていた。こちらを見ていなかった。庭ではないのに、まだ庭の中にいるような顔をしていた。
エリィは荷物を傍に下ろして、座った。荷物の中の本が、少しだけ主張していた。庭を出てからも、ずっとそうだった。
取り出さなかった。取り出して、持って、しばらく見た。何も書かれていない表紙を。本の部屋でそのものから受け取ったときと同じ革の感触だった。開かなかった。
カイが乾パンを配った。「これだけか」とカエルが言った。「これだけだ」「足りない」「足りないが、これだけだ」
カエルは乾パンを受け取った。何も言わなかった。食べた。エリィも受け取った。固かった。でも食べた。
腹が鳴った。「……」カイが何か言いかけて、やめた。「すみません」エリィは言った。「謝るな」カイは言った。「もう慣れた」「慣れましたか」「慣れた。諦めた」「どっちですか」「両方だ」
ルーメンが「律の書 第——」と言い始めて、カイが「今は黙っていてくれ」と言った。「そうですね」とルーメンは言った。
リュウがヴェルト師の膝の上に移動した。老人は少し手を動かして、リュウの背中に置いた。
火が、静かに燃えていた。
しばらくして、カエルがエリィの隣に来た。音がしなかった。来る前に気配があったが、何も言わなかった。ただ、隣に座った。エリィも何も言わなかった。カエルが話すときは、カエルが始める。それをこの旅で学んでいた。
火を見ていた。二人で。しばらく。
「エリィ」とカエルが言った。「はい」また間があった。「お前のそれは、何なんだ」
エリィは少し考えた。「わかりません」とエリィは言った。「何が」カエルは答えなかった。エリィも続けなかった。火が、ぱちと鳴った。
「……何が、と聞いたのか」カエルがようやく言った。「聞きました」「お前、わかっていないのか。俺が何を聞いているか」「わかりません」エリィは言った。「だから聞きました」
カエルは少し黙った。「俺も、わかっていない」「そうですか」「わかっていないから、聞いた」
エリィはその言葉を頭の中に置いた。わかっていないから聞いた。それは正直だと思った。わかっていることを確かめるために聞くのとは、違う。
「何を見ていたんですか」エリィは聞いた。「今まで」「お前を、見ていた」「何を見ようとしていましたか」
カエルは少し間を置いた。「お前が、どうしてそう動けるのかを」「どう動けるとは」「谷でも、橋でも、庭でも」カエルは言った。「お前は、何かに引っ張られているわけじゃない。でも止まらない。前しか見ていないわけでもないのに、ちゃんと進んでいる」
エリィはその言葉を聞いて、少し考えた。「前しか見ていない、というのは」「俺のことだ」カエルは言った。はっきり言った。「俺は、前しか見ていない。見ていなかった。妻を取り返すまでは、それだけを見ていた」
「今は」カエルは火を見た。「橋の上で」と言った。「水面を見た」「見ていましたね」「見たくなかった」「見ましたね」「見た」
またしばらく間があった。「見て」カエルは続けた。「また歩いた」「歩きましたね」「それだけだ」「それだけ、とは」「それだけしか、今はわかっていない」カエルは言った。「妻を取り返すことが、妻の望みだったかどうかが、わからなくなった。でも、また歩いた。何のために歩いているのかが、少し、わからなくなったのに、歩いた」
エリィは火を見た。「私も」エリィは言った。「よくわからないです」「何が」「何のために歩いているのかが。最初は、気になるから、と言いました。それは本当です。でもそれだけかどうかが、わからなくなってきています」
カエルはエリィを見た。「わからないまま歩けるのか」「わからないから、なんとかなるかと思っています」
「なんとかなるか、か」カエルは言った。声に温度があった。呆れているのか、何か別のものなのかが、判断できなかった。「よく言われます」エリィは言った。「でも、今のところ、なんとかなっています」「そうだな」とカエルは言った。「なんとかなっている」
ヴェルト師が、火の向こうから言った。「カエル」「なんだ」「お前の奥さんは」老人はリュウの背中をゆっくり撫でながら言った。「花が好きだったか」
カエルは少し止まった。「……好きだったかどうか、聞いたことがない」「そうか」「なぜ聞く」老人は火を見た。「花野原で、お前が脇見をした」
カエルは黙った。「脇見をするのは、どこかで見たことがあるからだ。人は見たことのないものを見て、脇見はしない」
エリィはその言葉を聞いて、少し動きが止まった。カエルが花を見ていたのは、どこかで誰かが花を好きだったから。その人と、花と、何かがあったから。
「……」カエルは長い間、何も言わなかった。「好きだったかもしれない」ようやく言った。「そういう人だったかもしれない」「そうか」とヴェルト師は言った。それだけだった。
カエルはまた火を見た。エリィも火を見た。
腹が鳴った。
カエルが、小さく、息を吐いた。笑ったのかもしれなかった。「お前の腹は」と言った。「鳴ります」「今日、何回目だ」「数えていないです」「俺も、もう数えるのをやめた」「慣れましたか」「諦めた」
「カイさんも同じことを言いました」「賢い判断だ」エリィは少し考えた。「褒めてますか、今」「褒めてない。カイの話だ」「そうですか」
カエルは立ち上がった。戻る前に、一度だけエリィを見た。「お前のそれ」と言った。「わからなくていいのかもしれないな」「そうですか」「わかったら、別のものになる気がする」
エリィはその言葉を頭の中に置いた。わかったら、別のものになる。旅立つ前に師から聞いた言葉が、少しだけ戻ってきた。名前は人が決める。果物は何も決めない——名前をつけたら、そうなる。名前をつけなければ、ただそこにある。
「わかりました」エリィは言った。「何が」「わかったら別のものになる、ということが」
カエルはしばらくエリィを見た。それから何も言わずに、自分の場所へ戻った。
夜が深くなった。カイが「交代で眠れ」と言って、見張りに立った。ルーメンが「一緒に立ちます」と言った。「聖典を読むな」とカイが言った。「声には出しません」とルーメンが言った。「心の中でも読むな」「それは難しいです」というやりとりが続いて、どちらも見張りに立った。
リュウがヴェルト師の膝から移動して、エリィの足元に来た。「ボスのとこが温かい」と言った。「仮ボスです」とエリィは言った。「仮の仮のボスでもいい」とリュウは言って、そのまま丸くなった。
愚者は岩の上に座ったまま、眠っているのか起きているのかわからなかった。笑みがなかった。でも険しくもなかった。ただ、目が少し閉じていた。
エリィは荷物を枕にして横になった。本が、頭の下にあった。開かなかった。開きたかった。でも、まだじゃないと思った。答えを出す前に、と自分に言った。答えはまだ出ていない。だから、まだじゃない。それだけで、十分だった。
目を閉じた。金属の音が、していた。夜の山の中で、一定のリズムで。近くなっていた。出発してから、ずっと遠かったのに、今日だけで、近くなった。頂上は、明日だった。
何かが数えられていた。何かが、もうすぐ、終わりに近づいていた。




