別離と再会
翌日蒼介のホロホンに電話があった。夏映の名前がホロホンの上に立体映像で表示される。
「一色ですけど」
「治ったわ。彼、復活したの」
嬌声が、蒼介の耳に届いた。普段より何オクターブか、声が高い。
「チャマンカ人のドクターもびっくりしてる。あなたにもらったカプセルのボタンを押したら、体内のウィルスが消えちゃったの」
「大翔君は治ったんだね。それは良かった」
「もう起きて、普通に話せるの。それでドクターに、カプセルをどこから入手したか聞かれたけど、まだ話してない」
「正直に伝えて良いと、あの後メールで説明したはずだ」
「でも打ち明ければ、あなたが追求される」
切羽つまったような声で、夏映が話した。
「君が黙秘を貫けばチャマンカ人は、君の思考を読みとるだけさ」
「やっぱりあなた、アース・パルチザンに合流するの?」
「ぼくはチャマンカ人に追及されない。チャマンカ人の警官が来た時には、ぼくの姿はないからね」
それだけ話すと、蒼介はホロホンを切った。彼の眼前には雫石結菜の姿がある。
大粒の目が、真剣に蒼介を見ている。
「本当にいいの?」
結菜が聞いた。
「ああ。おれは君達の仲間に加わり、チャマンカのクーデター派と戦うよ。反乱軍と言っても、すでに首都のズワンカ市を占領してるんだろう。今や体制側だけどな。奴らが人種差別主義者で、自分達以外の知的生命体を一掃しようとしてるとわかった以上ショードファ人と手を組んでも、革命軍を倒したい。奴らの首謀者のバサニッカ宰相を倒さねえと、地球の未来はねえからな」
「こっちじゃなくてチャマンカ人の反クーデター派と組もうとは考えないの」
「誰がバサニッカ派で、誰がそうでないのかがわからねえしな。反乱が起きた時当然クーデター派は反バサニッカだと思いきや、実際は裏でこの宰相が糸を引いていたぐらいだ。それを考慮に入れると、最初から君達と組んだ方が無難だからな」
蒼介の言葉に、結菜は回答しなかった。彼の発言内容をじっくり吟味しているようだ。
「結菜の方こそおれを本当にショードファ人の所へ連れてっていいのかい。おれはチャマンカ軍の一員としてドローンを操作して、ショードファ軍に一撃を加えたんだぜ」
「最初にはっきり表明するけど、ショードファ人達は諸手をあげて、あなたを受け入れようとはしてない。あなたが今、発言した通りの理由でね」
「当然だろうな。それでも、難病にかかった地球人を救ってくれた」
「大翔さんは、ショードファ人に矛先を向けたわけじゃないからね。人道上の判断よ」
「ともかくおれは、考えを変える気はないよ。君と一緒にアース・パルチザンに加わる。無論君が翻意して、一色蒼介を信じられないと断定するなら、このまま1人で帰ればいい。おれは地球に残るだけだ」
「ショードファ人達は、あなたのドローンを操作する能力を買ってるの。敵に置いておくぐらいなら、味方に回ってもらった方がいいと考えてる。全員ではないけどね」
「それで、どうする」
「連れてくわ」
「仕事もせずに貯金を食いつぶしながら家にこもってゲームばっかりしてたのが、まさか役に立つとはね」
次の瞬間、2人はそれまでいた蒼介の部屋から転送された。マイクロ・ワープしたのは2人の地球人だけではない。
蒼介の部屋にあった物のうち、置いていきたくない物はまるっと転送されたのだ。
次の瞬間、2人はショードファ人の宇宙船の船室にいた。
「ここが今日からあなたの部屋。重力も気圧も空気の成分も地球と同じに合わせてるから、心配しないで」
2人は部屋を出て通路に出た。そこには1人のショードファ人の姿がある。
身長は150センチぐらいで結菜とほぼ一緒。目はピンクに光っている。
白いプラスチックのように見える体は、実際は硬軟自在に硬度を変えられると結菜に聞いていた。
「自分はショードファ宇宙軍のザースコ少佐だ」
ザースコは両手で、自分の顔の前で丸を造った。ショードファ風の挨拶だと、結菜には聞いている。
蒼介も同じポーズを取った。
「一色蒼介です。よろしくお願いします」
「早速だが、我々はズワンカ市への攻撃を近日中に行うつもりだ。当然君にも作戦に参加してもらう」




