チャマンカ星へ
ズロッシャイの乗る宇宙艦はチャマンカ星に向かっている。艦には彼を入れ、全部で50人のダラパシャイ人が乗っていた。
ズロッシャイは式典に参加するのを決めたが、まだどうやってワキーファ准将を救うのか、計画は立てていない。
クーデターに乗じるとはいっても、そもそもクーデターを本当にできるのか?
成功しても、ワキーファ救出につなげられるのかわからない。あまりにも行き当たりばったりな話である。
宇宙艦がチャマンカ星の近くでワープアウトした時ほぼ同時に、別の星系からワープアウトしたスターシップの姿があった。
チャマンカ製の宇宙船で、非武装である。
気になって脳内のナノメディアから検索したら、地球とチャマンカを往復する定期便の船だった。ズロッシャイは、以前救った2人の地球人の姿を思いだす。
ひょろ長い体型で体には甲羅がなく、かといってチャマンカ人のような体毛もない異形の姿を。
甲羅のように身を守る物がなくても生きられるというのが、ズロッシャイには不思議でならない。
地球がダラパシャイより重力が小さく、落下物のスピードがダラパシャイより小さいのはわかっているが。
その頃蒼介は、ズロッシャイがちょうど見ていた定期便の宇宙船に、夏映と一緒に乗りこんでいた。
この定期便は地球人の旅客用の宇宙船で、乗客はチャマンカ星への観光客や、ビジネスで来星する者ばかりのはずだ。
やがて宇宙船はチャマンカ星の上空に来た。地球人たちはフルフェイスのヘルメットと、全身を覆うスーツを着る。
背中には酸素ボンベを背負った。そしてマイクロ・ワープで、宇宙港に転送される。
チャマンカ星は地球より重力が小さいので、ボンベの重さは苦にならない。
重力が小さいゆえに、地球よりも砂ぼこりがたくさん舞っているように思える。地面には、様々な色の長い毛が落ちていたが、これはチャマンカ人の皮膚から落下したのだろう。
2人はタクシー乗り場に向かう。タクシーの座席には人がいない。組み込まれたAIが操縦してるのだ。
2人が近づくと後部座席のドアが開く。夏映が慣れた様子で中に入ってシートに座る。
座席の上にも、チャマンカ人の落とした体毛が散らばっていたので、夏映も蒼介もそれを払って中に座った。
「チャマンカ中央病院へ、お願い」
夏映は日本語で話したが、それはヘルメットのスピーカーからチャマンカ語で流れた。
「わかりました」
前部座席の後ろからチャマンカ語で回答が返ってくる。が、2人の着るスーツには翻訳機がしこんであるので、内容を理解できた。タクシーは地球のSF映画に出てきそうなエア・カーである。
それは路上から上昇し、地面から1メートルぐらいの空間でストップすると、今度は進行方向へ向かって発進する。タクシーはやがて、病院の前に着陸した。料金は、夏映が指紋認証で支払う。
エア・カーを降り、病院の建物に向かった。受付で夏映が、やはり指紋認証で面会の手続きをする。蒼介は連れなので、手続きは不要だ。さすがに病院の床は、チャマンカ人の体毛は落ちていない。見るからに清潔だ。
今も掃除機ロボットが、床を清掃していた。やがて、並んだ病室の1つに入る。中に入るとそこは個室で、ベッドが1つだけあった。
ベッドの上には若い東アジア系の男性の姿がある。多分日本人だろう。男はベッドの上にあるカプセルの中に、パジャマ姿で眠っていた。どうやら彼が、夏映の恋人らしい。




