表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/21

魔王との日常

 鍋の中で山吹色の、ポタージュが沸々と煮立つ。昨日、スーパーで安売りしてたカボチャを使ったポタージュだ。


 それを3つのスープ皿に分ける。同じテーブルには、大小の異なる弁当が包んである。


「沙雫兄ちゃん、おはよう」

「おはよう。顔洗った?」

「うん、パパに抱っこしてもらった」

「そっか。って、また我さきに食べてるし!!餓鬼か!!」

「せっかくの朝食が冷めてしまうだろう?」


 イラっとくる。ドヤ顔やめろ、かっこいいじゃないか。って違う!そうじゃないだろ!

 あれだけ離婚するとき有智の教育云々言ってた人が、子供より先にいただきますもせずに、食べてるとかおかしいだろ!


「カボチャのおいしー!これ好き!」

「ほんと?よかった。有智はちゃんと感想言ってくれるから嬉しいよ」

「なんだ?俺だって言うだろ」

「う……」

「そろそろ出るぞ」


 もう高級車で学校に乗りつけるのも慣れた。



 あの告白から数ヶ月。俺は元住んでたマンションを出た。


 今は北条宅にど……同棲してます。もちろん有智と三人で。

 もちろん周りには付き合ってる事実を隠している。有智には直球に言っていた魔王をぶん殴ったのは言うまでもない。有智は多分、まだ幼いからそれが冗談なのか、本当なのか……半分半分って所だと思う。


 いろいろ悩んだ。告白されて、あのあとしどろもどろに俺も返事を返した。


 好き、と。


 あの時の殺人的な魔王の、幸せそうな微笑みは一生頭から離れないだろう。


 同性だし、結婚はできない。けど俺はやっと、正真正銘の家族を手にしたんだ。それだけは胸を張って言える。魔王に負けないくらいのドヤ顔も付けて。


「わざわざ、保健室まで送らなくても……」

「何を言ってる?何の用もなく、ここまで送るわけないだろ」

「っ……馬鹿じゃないのか」


 固く、鍵まで閉ざされた保健室。


 今は朝のHR中。周りは静まり、校庭の方から、鳥の囀りが聞こえる。


 荷物を置き、白衣に袖を通した俺の腕を、魔王----雄司さんが掴み、引き寄せた。


「んふ……っ……ん……」

「家じゃなかなかできないからな」

「はっ……だからって……ここで盛るなっんっ!?」


 

 再び重なった唇と、密着して伝わる互いの体温。後数分で終わってしまう、その愛しい時間を少しでも長く味わいたい。


「ちょ……これ以上は……無理」

「そうか?……身体は欲しそうに疼いてるみたいだがぁっ……」

「調子のんな!仕事しろこの馬鹿!!」


 危うく押し倒され、シャツを捲りあげられた所で蹴落としてやった。此処は保健室であって、不純行為は認めないからな!


「何をしようと……」

「何ってセ「教育的指導ー!!」……つれないな。家で我慢してやってるのに」

「昨日、有智が隣で寝てるのに襲ってきた!忘れたとは言わせないぞ!!」

「……チッ」


 乱れた髪を後ろに撫で付けながら起き上がったその人の首に、腕を絡ませる。


 そして、触れるだけのキスをする。


「いってらっしゃい」

「あぁ……今日は二人で有智を迎えに行こう」


 




 保健室は……魔王の(愛の)巣。

お読みくださりありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ