↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/14

9. おじさんは爆笑した

 最初予定していた場所を刈り尽くした、俺と坊っちゃんは、満足して昼食を摂った。

 まぁ、朝の残りだが。

 温め直して食べただけだが、最高に旨かったよ。

 夕食まで持たせるつもりのスープが、空になっちまう程には食べたな。

 坊っちゃんと2人で顔を見合わせて笑ってしまうのも、きっと想い出になるだろうさ。


「じゃあ、洗ってしまいますか」

「うん!あっ…ゼオ、これは?」

「石鹸豆と呼ばれている植物の実ですよ」

「石鹸豆?」

「洗い物に使うと油が良く落ちますね。他にも使い道があって、洗濯に使ったり、身体を洗ったりするのにも使います」

「へぇ~…」

「ちょっと洗い桶に水を入れて、石鹸豆を中で揉むと…」

「あっ、少し泡がでた」

「煮出したり、漬け置きして成分をじっくり出すともっといいのですがね。長持ちする物でもないので、これで油を落としますね?」

「うん。油ってヌルヌルが石鹸じゃないと取れないんだよね…凄いね、石鹸豆」

「はい。他にも石鹸の実とか、地方によって色々ありますよ?」

「そうなの?」

「石鹸が無い時代の知恵ですね。今も石鹸が手に入らない者はこれを使っています」

「そうなんだねぇ…」


 前世で言うところのサイカチの実だ。

 ムクロジも石鹸成分があって、代わりに使えると有名だが、サイカチにもその成分があるんだよ。

 ラノベなんかによく登場するやつだ。

 煮出しで使う液体石鹸だな。

 河原とかで、よく見る木だったっけ。

 赤い豆のさやみたいな実がなるんだよなぁ。

 冬にポタポタ落ちてた記憶があるわ。

 うん。

 まともな知識も出てきて何よりだ。

 洗い物も終わり、テーブルで一息。


「坊っちゃん。腹が落ち着いたら、食材を探しに出なきゃならないですよ?」

「だねぇ…アレだけは、ちょっとね…」

「ですねぇ…」


 まぁ、なんとでもなるんだが。

 坊っちゃんには、不自由を楽しんで貰いたいからな?

 

「畑の方はどうしようか…」

「畑起こしもしなきゃならないですねぇ…」

「木の根が凄そう…」

「ですねぇ…」

「生き延びるって、結構忙しいんだね…」

「んんっ…んふっ…確かに。確かに忙しいですねぇ」


 噴き出しかけたよ。

 坊っちゃんの感想はなかなか面白いが、納得もする。

 生きる為に、やらなきゃならない事が多いのはたしかだからな。

 妙に悟りきった坊っちゃんが言うと、ツボが刺激されちまって危ないわ。


「では、1つずつですね」

「うん」

「まず、鋤(すき)を使って土を掘り返し、木の根、草の根、石を除けてしまいましょう」

「暗くなっちゃわない?」

「食材を探す時間を考えて、できる所までにしましょう。残りは明日でも良いと思いませんか?」

「そうだね!明日もあるもんね!」


 明日も明後日も。

 時間の幅は結構あるんですよ。


「2人がかりですから、結構早目に終わるかもしれないですよ?坊っちゃんは筋が良いから、即戦力ですし」

「本当?」

「はい。私達3人で畑をやった際、役立ったのは村長だけでしたからね。村長の独り勝ちです」

「そうなの?」

「畑は村長独りで作り上げたと言っても過言では無いですねぇ」

「へぇ~」

「かなり悔しかったので、商会に戻った後、商会長と一緒に家庭菜園を作りましたが」

「ぶふっ!家の裏の所の?」

「はい。悔しさの結晶です。今は他の方達の担当になってますがね?サン坊っちゃんが生まれる頃辺りまで、商会長と一緒に作ってましたねぇ」

「へぇ~…そうだったんだぁ。父様もゼオも、できない事があったんだ…」

「できない事だらけでしたよ。そこが悔しくてね?」

「そうなんだねぇ…」

「さて。そろそろ畑を始めますか」

「あっ、そうだね!」


 鋤を手に持ち、土を掘り返していく。

 大変かな?と思っていた木の根は、これ位なら大丈夫との坊っちゃんの自己申告で身体強化を使った。

 うん。

 すんなり終わったよ。

 根を集めてくる方が大変だった位だ。


「坊っちゃん、素晴らしいですよ。こんなに早く終わるなんて!」

「身体強化も少しずつ使えば大丈夫かなって…」

「良い判断ですよ。まだ半分以上は残ってますか?」

「多分?そんなに使った感じが無いから、大丈夫かな?」

「普段の生活で身体強化はどれ位使いますか?」

「あの…内緒にしてたんだけど、仲間と一緒に角兎狩りに行って…30分位で疲れがドシッときたんだ…」

「そうでしたか。30分位は、なかなか所か充分ですよ?素晴らしいです」

「…本当?」

「坊っちゃんは、魔力の配分が上手いんですよ。使うべき所で使い、必要ない所で止める。なかなか難しいのですよ?だから30分も疲れが出なかったんです」

「そうなのかな?」


 そうです。

 素晴らしい事です。

 特に冒険者が必要とする使い方である事は、まだ言わない。

 将来に偏りが出ちまうからな。


「ですが、その疲れは魔力がギリギリのサインで、倒れる前兆なので気を付けましょうか」

「…うん」


 これだけは、気を付けなければならないからな。

 生命に直結するから、どんな将来になろうとも必要な事なんだ。

 坊っちゃんには、忘れないで貰いたい。


「では、気持ちを切り替えて。食材探しの準備をしましょう」

「うん。今度は、どこで探すの?」

「森の浅瀬か、今朝の場所までですかね。森の方は、この時間は長居を出来ませんから、サッと行ってスッと出ないとなりません」

「少しでも暗くなると、危ないから?」

「はい。危険な野生動物、下手をしたら魔獣が出る可能性がありますから、目で遠くまで確認できる内に引き上げます」

「…今まで、どんなのが出たの?」

「野良スライム、角兎、鹿、狐、森狼、ボア、熊、ゴブリンですかね…」

「えぇ…結構、怖いんだね…」

「はい。一応、魔物除けの石を敷地内に設置してますが、野生動物や興奮した魔物には効果が無いので、気を付けなければなりません」

「そうなんだ…」


 危険が身近にあると怖いよな。

 無力な自分達じゃ、無事な想像が出来なくなるし。


「ただ、刺激を与えなければ、割と切り抜けられますね」

「ぇ?」

「気付かれる前にソっと逃げるか。野生動物の場合、目が合ってしまったら、喧嘩の合図です。逸らさずソっと後退り、退却します」

「えぇ?追われないの?」

「無害アピールをしつつも、目を逸らした瞬間弱いと認識され攻撃をされますから。精一杯の力を視線に乗せておくと良いです。上手く行けば威圧のスキルが生える場合もありますからね」

「そうなの?」

「野生は、弱肉強食ですからね。威圧で勝てば良いんです」

「…倒せないの?」


 どうにも出来ない生き物が直ぐ側で生活してると思うと怖いよな。

 前世でも今世でも、その恐怖は変わらずあるんだよ。

 特に前世での野生動物との対応の差もあるし。

 前世での対応したら、即バッサァーッてなぎ倒されるからな。

 一人前の冒険者じゃ無ければ、討伐は難しいかし。

 ただ、難しいであって、無理では無いんだよな。


「…それは、時と場合と作戦次第ですよ」

「えぇ?」

「ボア肉は美味しいですからねぇ。作戦次第ですよ」

「えぇ…いけるんだ…」 

「まぁ、はい。俺達は、ボアと対峙した際にそろって威圧スキルが生えまして…今思うと、食欲の勝利でしたね…」

「えぇ…」


 あれ?坊っちゃんが引いてる気がする…?


「…まぁ調子に乗って、肉食生活で胃をやられたんですけどねぇ…」

「えぇ…」


 …引いてるな。確実に引いてる。


「…その内、罠についても考えていきましょうか」

「そっか。罠かぁ。うん!」

「え?坊っちゃん?罠じゃ無かったら、どんな想像してたんですか?」

「え?いや、その…村長が野生化してたって…前に聞いたから…ね?」

「え?あ、はい。野生化してましたね…?」

「ボアに食い付く想像しちゃって…」

「ぶはっ?!」

「それで、ちょっと…ね?」

「ぶははははははっ!それはっ!ヒドいっ!ぶふっ!野獣じゃないですかっ!ははははは!」

「ぶふっ、野獣…ぶふっ!あははははは」


 すまん、村長。

 腹がよじれる位、笑わせて貰ったよ…

 ぶふっ!ダメだ…!

 笑いが引かないっ…!

 

 ひとしきり笑い転げて、森の浅瀬は諦めた。

 笑い過ぎて、時間が無くなったからだ。

 …村長のワードが出ると、また笑いそうな位には2人のツボとして定着してしまったよ。

 すまんな、村長。ぶふっ。


「ゼオ、サワガニも捕るの?」

「もし捕れたらですね。暗くなる前には戻りたいですから」

「うん。わかった」


 木桶を持ち、河原まで歩く。

 時々角兎が道を横ぎるが、追いかけて狩るには時間がたりない。 

 せめてボウガンがあれば、なんとかなるんだが。

 ん?これはまだイケるかな?

 目についた野草を麻袋に回収する。


「えぇ?そのトゲトゲ、食べれるの?」

「しっかり茹でれば、実は、食べれるんですよ」


 前世ではアザミと言われていたトゲトゲの草。

 これ、食べれるんだよ。

 おひたしにしたり、味噌汁の具にしてな。

 まぁ、スープの具かな?


「まだ大丈夫かな?サワガニ獲ってきていい?」

「はい。大丈夫ですよ」

「木桶、持って行くよ!」


 10歳らしい行動にホッコリするなぁ。

 伸び伸び成長していって貰いたいもんだよ。


「ゼオォ〜!早速2匹獲ったよぉ~!」

「素晴らしいです!夕飯は坊っちゃんにかかってますねぇ!」

「任せてぇ!」


 明るい声が河原に響き渡るのも、久し振りなんだろうな…

 向こう岸から、こっそり覗いている白い狐を見て思わず苦笑した。

 子供好きの聖獣が覗きに来る位、元気な声が響いたか。

 流石ですよ、坊っちゃん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。