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8話 性癖王国バレ回避!?

 シャルロッテは、息を呑んだ。


 あの従者の示威行為はブラフ!?

 演技がかった仕草で切られた従者は、己の血をユメノさんの武器にするためにわざと切られていた。


 そして、ユメノさんは血が一定量に達したら従者を下がらせて血を武器化した。

 非武装からでも効率的に戦闘へ移行できるとアピールするために……。

 

 全ては、ユメノさんがこの場で自身の価値を最大限に高めるための演出に過ぎなかったというの!?


 シャルロッテは無意識に、自分の従者の袖を掴んだ。


 怖い。

 自らの従者に対する扱い、あの油断させるための小心者のような演技。

 ユメノさんは、確実にこの会議の主導権を取りに来ている。


「あーあははッ……みんな、私と仲良くして……ね?」


 その言葉に目を見開く。

 逆らえば、資源も命もないに等しい。

 私は今、とんでもない外交戦に足を踏み入れていますわ……。

 


 ********



 あーー!!

 やっちゃった、やっちゃったよ!!

 みんなの目線が痛いよ!


 グレイは何故か、私にちゃんとした椅子を用意してから満足そうに襲撃者の死体を片付け始めた。

 頼むから最初から普通の椅子を用意してくれよ。


「現地国家の妨害がここまで激しくなるとは思わず、皆様申し訳ありませんでした」


 額に汗を浮かべたシャルロッテが頭を下げた。


「ま〜みんなわかってたしぃ、面白いものが見れたからいいんじゃな〜い?」


 血で汚れたライオン従者の毛並みを水魔法で整えている猫耳幼女が、私をちらっと見た。


「こ、怖かったです……ユメノさんが強くて助かりました……」


 私に憧れの目を向けてくるのは、資源不足の裏王国の王女だ。

 おそらくメイン武器が銃であろう裏王国の王女は、マフィア従者の隠し持っていたナイフで難を逃れたようだった。


「あの、みなさん。現地国家という明確な敵も確認できましたし、転生者同士で相互不可侵条約を結びませんか?」


 そう告げたシャルロッテは、後ろに控えている騎士従者に紙を用意させた。

 すでに条約の内容が書かれているところをみるに、ここまでは筋書き通りなのだろう。

 ……やっぱりシャルロッテは古参だ。お嬢様ロールプレイが様になっている上に、仕切り力がすごい。

 頼りになる転生者はありがたいなぁ。


 私はうんうんと頷いて、署名した。

 ユメノ・ヘキエ・ロードスター。

 書いていて思った。

 ……なんだよ、ロードスターって。

 導く星って、何も導けてないよ。

 自分の名前すら恥ずかしい。

 もう早く帰りたい。


「今日はこれだけ?」


 一応シャルロッテに確認した。

 これ以上ここにいたら、性癖王国だとバレてしまう。


「ま、待ってください! 資源状況だけでも公開できる範囲で共有しませんか!? 何が不足していて、何を輸出していただけるかを教えていただきたいのです!」


 急に血相を変えたシャルロッテは、目を見開いたまま私を凝視していた。

 え、怖い。

 何かバレた?

 グレイは!?


 後ろを振り返ると、グレイは普通に床を掃除していた。

 ふぅ、セーフ!


「あ、私の国の資源については、宰相に確認してからまた連絡します」


 ノアールに確認しないとね。

 私じゃ何もわからないよ……。


「!? やはり大魔境の支配権は切り札……」


 小声で何かを呟いたシャルロッテは、絶望に顔を染めた。

 ごめんって!

 本当に資源のことわかんないんだもん!


「……わかりました、定期的に連絡を取り合うことにいたしましょう。みなさんもそれでよろしいですか?」


 シャルロッテがみんなを見回した。


「異議な〜し」

「構いませんよ」

「は、はい!」


 みんなもそれぞれ了承してくれた。

 なんとか無事に会議が終わりそうだ。

 もう二度とこんなのはごめんだ。


「グレイ」


 声を掛けて立ち上がった。

 すると、隣の席のキリキリがこちらに近づいて来て、口元に手を当てた。


 なんだ内緒話か?

 耳に手を当てて、キリキリの言葉を待つ。


「みなさん気付いていないようですが、バレバレですよ」


 キリキリが鼻で笑ったのがフルフェイス越しにわかった。文字にすると絶対に(笑がついているやつだ。


「は?」

「性癖王国ですよね。ドM執事を外交の場に連れてくる勇気、お見事でした!」


 なぜか嬉しそうな声でそう告げるキリキリ。

 一気に顔が熱くなる。

 バレてるじゃねーか!!


「おまッ! 静かにッ」


 慌てて周囲を見渡す。

 良かった、他の人には聞こえていないみたいだ。


「大丈夫ですよ、僕は偏見ないので」


 何が大丈夫だ! AIトレス勢のくせに!!

 著作権侵害してるやつに言われたくない!!


「キリちゃん、帰ろ?」


 後ろの同じくフルフェイスで栗色の髪の毛の従者が、キリキリに話しかける。

 キリキリは従者の手を恋人のように握った。


「吸血鬼のロールプレイも最高でした、また他の従者の方も見せてください」


 そう言ってキリキリは、こちらに手を振って去っていった。


 ………………。

 ああああああああぁぁ!!


 足元から崩れ去りそうになるのをなんとか堪える。

 キリキリが私の中で、最重要抹殺人物リストの第一位に躍り出た。

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