21話 僕にええ考えがありますわ
ジェイドがいなくなった部屋で、聖マグリッタ王国の聖王ルシウスはため息をついた。
「ジェイドも元同僚のこのような姿は耐えられないのだろうな」
外交官ミゲルと密偵ルシルも共に大きく頷いた。
いつでも陽気なジェイドの、あのような姿を見るのは全員が初めてだった。
「だめです。これ以上はできません……」
グレイに施された洗脳を解こうとしていた魔法使いが告げる。
グレイはもう苦しんでもなければ、魔法にも反応していなかった。
「そんな……」
ルシルは悲しみを隠しきれなかった。
ヘキエ王国で彼が受けていたあの扱いを見てきた当事者として、救えないことが辛かった。
聖王ルシウスは、じっとグレイを見つめて考えている。
グレイは項垂れて「姫様、恥ずかしい真似を申し訳ありません……」と力無く呟いていた。
「……もしや、この者はあの吸血鬼にとって特別な存在やもしれん。この者の保護をかの国に通告し、吸血鬼の出方を見るか」
外交官のミゲルは顎に手を当てて考えた。
「お待ちください。ルシルとジェイドの情報によりますと、かの国の実質的な支配者は宰相だそうです。吸血鬼へ通告しても、宰相が応対を封じる可能性がございます」
聖王ルシウスは目を閉じる。
密偵ルシルは思い出したように、二人の会話に口を出した。
「そういえば、吸血鬼は私のことを無傷で帰すように話していました。あの宰相が全てを操っているのだとしたら、吸血鬼の本心は一体……?」
聖王ルシウスは目を開けて頷いた。
「うむ。かの吸血鬼の本心を確かめるべきだ。しかし宰相の影響下にある以上、どう揺さぶりをかけるか……」
聖マグリッタ神の名の下、救える命は救わなければならない。それが聖王、ひいては聖マグリッタ王国の役目だ。
全員が俯いて思考を巡らせていた。
その時、扉が開いた。
ジェイドが帰ってきたのだ。
「えらい取り乱してすんませんな。……僕にええ考えがありますわ」
ジェイドはそう言って、何事もなかったかのように笑った。




