第61話 初めての路線馬車
「あんたたちには、お礼を言いたかったんだよ」
突然そう言われて、アリアはきょとんと目を丸くした。
「……え?」
向かい側の長椅子に座っていた女性が、そんなアリアを見て笑っている。
南へ向かう路線馬車は、グラナの南門を出てからもうしばらく走っていた。
エッダたちの大きな馬車とは違い、車内には向かい合わせの長椅子が二列あり、そこへ知らない人たちが肩を並べて座っている。大きな布包みを膝へ抱えた女性もいれば、仕事道具らしい鞄を足元へ置いた男もいる。老夫婦に、いくつもの荷物を持った商人。乗る場所も降りる場所も、それぞれ違うのだろう。
アリアは、こんなにたくさんの知らない人たちと一緒に馬車へ乗ること自体が初めてだった。
しかも、乗り込んだ時から何となく視線を感じていた。
グラナの南門で、あれほど大勢の人に囲まれて見送られていたのだから、目立たないはずはない。
それでも、まさか知らない人からいきなりお礼を言われるとは思っていなかった。
「何のお礼?」
「何って、町のことだよ」
「町?」
ますます分からなくなって首を傾げると、女性の方が少し驚いた顔をした。
「うちの主人も、あんたたちに頼まれて魔力を流したんだよ」
「あっ」
そこでようやく、アリアの中で話がつながった。
「水路のところ?」
「そうそう。帰ってきた時には、ずいぶん疲れた顔をしてたけどね」
「……ごめんなさい」
「どうして謝るんだい」
女性はおかしそうに笑った。
「次の日には水も戻ったし、町もちゃんと動き始めた。あれだけで十分さ」
すると、その隣へ座っていた男まで会話へ入ってきた。
「うちの工房も動き始めたぞ。止まった時には、もうどうなることかと思ったけどな」
「ほんと?」
「ああ。昇降塔も戻ったしな」
「俺んところも魔力を貸したぞ」
今度は少し離れた席から声が飛んでくる。
「こっちもだ」
「わたしの弟も参加したよ」
次々に知らない人から声を掛けられ、アリアは右を見たり左を見たり、忙しく顔を動かした。
知らない人たちだった。
名前も知らない。
どこで暮らしているのかも分からない。
あの日、町の中を走り回った時に顔を合わせていたのかもしれないけれど、それさえ覚えていない人もいる。
なのに、この人たちは自分たちのことを知っている。
「……みんな、知ってるの?」
思わずそう尋ねると、最初に話しかけてきた女性が笑った。
「そりゃ知ってるよ。水色の髪の小さい子が、町中を走り回ってたんだから」
「マルルもいたなの!」
膝の上にいたマルルが、聞き捨てならないとばかりに長い耳をぴんと立てる。
「ああ、そうそう。白い小さい子も」
「マルルなの!」
「はいはい。マルルちゃんね」
「ちゃん付いたなの!」
嬉しそうに胸を張ったマルルを見て、馬車の中に笑い声が広がった。
アリアも笑ったものの、胸の奥にはまだ不思議な感じが残っていた。
あの日は、そんなことを考えている余裕などなかった。
大精霊さんを起こさなければ。
そのためには魔力がいる。
町がもっと壊れてしまう前に、できるだけたくさんの人へ頼まなければ。
それだけだった。
誰に声を掛けたのか、どんな人が力を貸してくれたのか、一人一人の顔を全部覚えているわけではない。
けれど、自分たちが走り回った先には、本当にたくさんの人がいたのだ。
けれど、自分たちが走り回った先には、本当にたくさんの人がいて、その一人一人に家があり、仕事があり、家族がいて、グラナで暮らしていたのだ。
グラナで暮らしている人たちがいた。
その人たちから今、ありがとうと言われている。
嬉しいのに、少しくすぐったい。
南門で大勢に見送られた時とは、また違う照れくささが胸の中へ広がってきた。
「でも、わたしだけじゃないよ」
何となくじっとしていられなくなって、アリアは少し慌てて言った。
「ルカも、ノルンも、マルルもいたし、ガンツさんたちもいたよ。それに町のみんなが魔力をくれたから、大精霊さんまで届いたの」
「そうなの!」
マルルも勢いよく頷く。
「みんなの魔力なの!」
「分かってるよ」
女性は、今度はアリアだけでなく、ルカやノルン、マルルまで順番に見て笑った。
「だから、みんなにありがとうって言ってるんだよ」
「……そっか」
アリアもようやく素直に笑った。
グラナの町は、もうずっと後ろにある。
水路の音も、昇降塔の音も聞こえない。
それなのに、同じ町から出てきた人たちとこうして話していると、まだグラナと少しだけつながっているような気がした。
◇
「それで、あんたたちはどこまで行くんだい?」
しばらくして女性に尋ねられると、アリアの顔はすぐに明るくなった。
「ミレア湖!」
「ミレア湖?」
「うん!」
「またずいぶん遠くへ行くんだねぇ」
「知ってるの?」
「名前くらいはね。とてもきれいな湖だって聞くよ」
昨日シリルからも聞いた。
けれど別の人から同じことを聞くと、本当に有名なところなのだという感じがしてくる。
「どんなところ?」
「わたしは行ったことないけど、旅人には人気らしいね。景色がよくて、宿も多いって話だよ」
「お店もある?」
「そりゃあるだろうね」
「ごはんも?」
「あるよ」
「お魚?」
「湖なんだから、いるんじゃないかい?」
その瞬間、アリアは腕の中を見た。
「マルル、お魚いるって!」
「食べたいなの!」
話の向きが一瞬で変わり、女性が声を上げて笑った。
「遊びに行くのかい?」
「ううん。探し物!」
「探し物?」
「うん。ミレア湖にあるみたいなの」
そこまで答えてから、アリアはマルルの首元へ目を落とした。
小さなコンパクトの中には、グラナで手に入れた二つ目の欠片が、一個目と並んで収まっている。
大切なものだ。
でも、それ以上を知らない人へ全部話そうとは思わなかった。
「大事なものなのかい?」
「うん!」
それだけは迷わず答えられた。
女性も、それ以上は聞かなかった。
「じゃあ、ちゃんと見つかるといいね」
「うん!」
アリアは嬉しそうに頷いた。
そして、そこで。
さっきから窓の外を流れていく景色を見ながら、ずっと少しだけ気になっていたことを思い出した。
「ねえ」
「何だい?」
「お昼ごはん、どうするの?」
「……お昼?」
「うん」
女性が一度瞬きをしたあと、当たり前のことを説明するように答えた。
「途中で休憩所に止まるから、そこで食べるよ」
「馬車、止まるの?」
「止まるよ」
「ごはん食べるために?」
「それもあるけど、馬を休ませるためでもあるね。水を飲ませたり、餌をやったりしないと、一日中走り続けられないだろ?」
「お馬さんもごはん食べる?」
「もちろん」
アリアは納得したように頷いた。
「じゃあ、みんなでごはんだ!」
「まあ、そういうことだね」
「馬車も?」
「馬車は食べないよ」
「あ」
アリアは真顔になった。
「そうだった」
隣でルカが吹き出した。
「なんで馬車まで食べるのさ」
「だって、みんなって言ったから!」
「馬車は『みんな』に入らないよ」
「入るかもしれないじゃん」
「入らないって」
また周りの乗客たちから笑い声が上がる。
アリアは少しだけ頬を膨らませたものの、聞きたいことはまだあった。
「じゃあ、夜は?」
「夜?」
「夜ごはんも休憩所?」
「その頃には、今日泊まる宿場町へ着いてるよ。この馬車も今日はそこまでさ」
「おしまい?」
「ああ。続きはまた明日」
アリアはぱちぱちと瞬いた。
「この馬車じゃないの?」
「この馬車で寝るつもりだったのかい?」
「だって、ずっと乗ってるのかと思った」
「夜は走らないよ。馬も人も休まないとね」
それを聞きながら、アリアは昨日見た路線馬車の中を思い出していた。
寝床がない。
ごはんを作るところもない。
だから夜は宿へ行く。
ようやく全部が一つにつながった。
「じゃあ、毎日違うおうちに泊まるの?」
「宿だけどね」
「知らないおうち?」
「だから宿だよ」
「知らない人のおうちに泊まるの?」
「宿だって!」
とうとうルカが横から口を挟んだ。
「アリア、宿屋は旅人が泊まるためのところだよ」
「知ってるよ!」
「ほんとに?」
「……たぶん」
「知らなかったんじゃないか」
「でも、泊まったことないもん」
その一言には、今度は女性の方が驚いた。
「宿に?」
「うん!」
「今まで、どうやって旅してきたんだい?」
「野宿したり、エッダたちの馬車で寝たり、教会に泊めてもらったり」
「……ずいぶん逞しい旅をしてきたんだねぇ」
「そう?」
アリアには、それが普通だった。
旅を始めてから、泊まる場所はその時々で変わった。
教会の小さな部屋も。
商隊の馬車を寝床へ変えた夜も。
野営の布屋根の下も。
どれも自分にとっては「旅の夜」だった。
今度はそこへ、宿屋というものが加わるらしい。
「宿って、どうやって泊まるの?」
「宿へ行って、部屋が空いてるか聞くんだよ」
「空いてなかったら?」
「別の宿を探す」
「そこも空いてなかったら?」
「また別の宿だね」
「全部空いてなかったら?」
「…………」
女性がとうとう困ったように笑った。
「まあ、そうならないように早めに宿を取ることだね」
「早め!」
アリアは、大事なことを教わったという顔で何度も頷いた。
そして、すぐ隣を見る。
「ルカ、覚えた?」
「なんで僕に言うの?」
「忘れないように」
「アリアも覚えてよ」
「覚えてるよ。今は」
「今はって言った」
「ノルンも覚えててね」
「はい。三人で覚えておきましょう」
「マルルも覚えるなの!」
「じゃあ四人!」
四人も覚えていれば、たぶん大丈夫だ。
アリアが安心したところで、今度は昼の休憩が気になった。
「ねえ。お昼の休憩って、どのくらい?」
「だいたい一時間半くらいだよ」
「そんなに?」
「馬も休ませなきゃいけないからね」
「じゃあ、ごはん食べて、ちょっと遊べる?」
「遊んでもいいけど、時間までには戻っておいでよ」
「戻らなかったら?」
「馬車は行っちゃうよ」
「えっ」
アリアの顔が固まった。
「待ってくれないの?」
「路線馬車だからね。ほかのお客をみんな待たせるわけにはいかないだろ?」
「ごはん食べてる途中でも?」
「時間になったら出るよ」
「…………」
これは、とても大事な話だった。
宿は早く取る。
休憩所では、時間までに馬車へ戻る。
今までの旅では、エッダたちと一緒に動いていればよかった。出発する時には誰かが声を掛けてくれたし、置いていかれる心配もなかった。
けれど、路線馬車では違う。
自分たちで時間を覚えて、自分たちで戻らなければならない。
「ルカ」
「なに?」
「やっぱり時間見てて」
「だから、なんで僕なの?」
「わたし、ごはん食べてたら忘れそう」
「そこは忘れないでよ!」
「マルルも忘れるなの!」
「増えた!」
女性はとうとう声を上げて笑った。
「だったら、旅慣れてる人と一緒にいれば安心かもしれないねぇ」
「旅慣れてる人?」
「ああ。わたしは三つ先の町までだから、その先のことは詳しくないけど、この馬車にはもっと遠くまで行く人も乗ってるよ」
女性はそう言いながら、車内を見回した。
「ほら。あそこの行商人の兄ちゃんなんか、ずいぶん旅慣れてそうじゃないか」
「行商人?」
アリアも教えられた方へ顔を向けた。
少し離れた席に、地味な旅装をした若い男が座っている。
足元にはいくつかの小さな木箱。
使い込まれた革の鞄。
確かに、何度もこういう馬車へ乗ったことがありそうだった。
けれど。
その顔を見た瞬間、アリアは別のことが気になった。
「……あれ?」
どこかで見た。
知らない人ではない気がする。
けれど、すぐには思い出せない。
アリアはしばらく青年の顔をじっと見つめた。
青年の方も、あまりにも長く見られていることへ気づいたらしく、少しだけ眉を上げる。
その顔を見た途端。
「あっ!」
アリアの中で、ようやく記憶がつながった。
「あの時のお兄さん!」
青年が顔を上げる。
「ん?」
「前に村で、教会の場所教えてくれた!」
一度だけ。
旅の途中で教会が見つからず困っていた時、場所を教えてくれた青年だ。
あれから一度も会っていないと思っていたのに。
「よく覚えてたな」
「覚えてるよ!」
アリアは嬉しそうに笑った。
そして。
「……あ」
「今度は何だ?」
「お名前、知らない」
「そういえば、名乗ってなかったな」
青年も少し笑った。
「エリオだ」
「エリオお兄ちゃん!」
「もうお兄ちゃんになったのか」
「うん!」
「そこは迷わないんだな」
知らない人ばかりだった馬車の中に、知っている人が一人増えた。
それだけで少し嬉しくなり、アリアはさっそくエリオの近くへ寄った。
「エリオお兄ちゃん、行商人なの?」
「ああ」
「いっぱい旅してる?」
「仕事だからな」
「路線馬車も?」
「よく使う」
「宿にも泊まる?」
「もちろん」
「乗り継ぎもする?」
「するな」
一つ聞くたび、ちゃんと答えが返ってくる。
アリアの目が、質問を重ねるたびに少しずつ輝いていった。
その変化には、さすがにエリオも気づいたらしい。
「……なんだ?」
「エリオお兄ちゃん」
「なんだよ」
「旅のこと、いっぱい知ってる?」
「まあ、それなりには」
「じゃあ教えて!」
「何を?」
「全部!」
「範囲が広いな」
エリオは苦笑しながら、少しだけ身体を長椅子へ預けた。
「一個ずつにしてくれ」
「うん!」
アリアは素直に頷いた。
そして、最初に口から出てきたのは。
「まず、ごはん!」
「そこからなのか」
「大事だよ!」
「大事なの!」
マルルまで力強く加勢する。
「分かった、分かった」
エリオは笑いながら両手を上げた。
「それで、何が知りたい?」
「休憩所のごはんって、自分で買うの?」
「ああ。食堂に入ってもいいし、露店で買って食べてもいい」
「ろてん?」
「ちゃんとした店を構えないで、道のそばなんかで食べ物や小物を売ってる店だよ」
「外のお店?」
「そんな感じだ」
「何が売ってるの?」
「場所によるけど、パンとか、焼いた肉とか。串焼きなんかもよくあるな」
「串焼き!」
アリアの声が一段高くなった。
「食べたことあるか?」
「ない!」
「じゃあ、今日あったら食べてみるか?」
「食べる!」
「マルルも食べるなの!」
「まだあるとは言ってないぞ」
「あるといいね!」
「あるなの!」
もう二人の中では、昼に串焼きを食べることがほとんど決まっているらしい。
エリオはそんなアリアとマルルを見て、呆れたように笑った。
「まだ着いてもいないのに、ずいぶん楽しそうだな」
「だって、初めてだもん!」
「そうか」
エリオは短く答えた。
その目がほんの少しだけ細くなったことには、アリアは気づかなかった。
◇
昼前になると、街道の先へいくつかの建物が見え始めた。
馬車はやがて道を外れ、広い敷地の中へ入っていく。
馬をつなぐ場所。
水桶。
食事処。
そして道沿いに並ぶ、小さな露店。
「ほんとに止まった!」
窓から外を覗いていたアリアが声を上げる。
「止まるって聞いただろ」
「聞いたけど、本当に止まった!」
ルカには、その違いがよく分からないらしい。
御者が手綱をまとめながら、車内へ振り返った。
「一時間半だ! 昼飯を食う奴は今のうちに済ませろ! 時間になったら出るぞ!」
その一言に、アリアの顔が真剣になる。
「一時間半」
すぐにルカを見る。
「覚えた?」
「僕に聞くなよ」
「でも一緒に覚えて!」
「分かったよ。一時間半」
「ノルンも!」
「覚えています」
「マルルも!」
「覚えたなの!」
これなら大丈夫だ。
アリアはようやく安心し、マルルを抱いて馬車から降りた。
地面へ足をつけた途端、いろいろな匂いが一度に飛び込んでくる。
焼いたパン。
温かい汁物。
馬の餌。
その中に混じって、ひときわ香ばしい匂いが漂っていた。
アリアの足が、ぴたりと止まる。
「……いい匂い」
腕の中では、マルルの耳が瞬時にぴんと立った。
「お肉なの」
匂いの方へ顔を向けると、一つの露店で串に刺した肉を炭火の上へ並べていた。
じゅう、と脂が落ちるたびに小さな炎が上がり、甘辛い香りが風に乗って流れてくる。
これだ。
さっきエリオから聞いたばかりのもの。
アリアは吸い寄せられるように店の前まで近づいた。
「これ、なに?」
「串焼きだよ」
店のおじさんが、焼き網から顔を上げる。
「食べるかい?」
アリアの目が輝いた。
「買っていいの?」
「お金を払えばね」
それは分かる。
アリアは少しだけ緊張しながら、小さな財布を取り出した。
旅に必要なお金とは別に、自分で使っていいように分けてもらったものだ。
自分で店を選び、何を食べるか決めて、自分の口で店の人へ頼み、自分のお金を渡す。
ただそれだけのことなのに、胸の奥が少し高鳴った。
「……一個ください!」
「あいよ」
教えてもらった金額の銅貨を渡す。
その代わりに、焼きたての串が一本、アリアの手へ渡された。
熱が指先まで伝わってくる。
香ばしい匂いも、さっきまでよりずっと近い。
アリアはしばらく串焼きと、自分の手に残った財布を交互に見た。
「……買った」
「買ったね」
隣でルカが笑う。
「わたし、自分で買った!」
「うん」
「すごい!」
「普通だよ」
「でも、初めてだもん!」
アリアにとっては、普通ではなかった。
知らない店で。
誰にも頼んでもらわず。
自分で欲しいものを選び、自分でお金を払って受け取った。
串焼き一本なのに。
また一つ、自分でできることが増えたような気がした。
「マルルも!」
「マルルの分も買おうね」
「二本なの!」
「一個!」
「交渉するなの!」
「だめ!」
店のおじさんが声を上げて笑った。
その少し向こうでは、エリオも腕を組みながらこちらを見て笑っている。
ミレア湖までは、まだ遠い。
今日の宿場町にさえ、まだ着いていない。
これから何度も馬車を乗り継いで、知らない宿へ泊まり、知らない町を通っていく。
けれどアリアにとっては、目的地へたどり着くことだけが旅ではなかった。
路線馬車の仕組みを知ったことも、初めて宿へ泊まることも、休憩所では時間を気にしなければならないことも、自分で串焼きを買えたことも、きっと全部、これから少しずつ自分の中へ増えていくものなのだ。
アリアはまだ熱い串焼きを落とさないよう両手で大事に持ちながら、嬉しそうに笑った。
ミレア湖への旅は。
まだ、始まったばかりだった。




