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森で拾ったのは、半人前の天使でした ― ラグドール一家と小さな天使 ―  作者: くいたん


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第99話 残された側の記憶


 翌朝。


 飛行練習を始めてからしばらく経っても、アリアはいつものように庭の上を大きく回ろうとはせず、少し飛んでは湖へ目を向け、向きを変えてはまた同じ水面を見ていた。


 朝のミレア湖は穏やかだった。


 低い位置から差し込む光が細かな波へ反射し、青い水面のあちこちできらきらと瞬いている。昨日ハイラムの店で聞いたような知らない森や町が映っているわけでもなければ、どこか別の場所へつながっているように見えるものもない。


 ただ、いつもの湖が広がっている。


 それでも今のアリアには、その「いつもの湖」が以前とは少し違って見えていた。


 何百年も前、この世界のどこかで水の向こうに故郷を見た人がいて、ミレア湖にも知らない景色を見たという記録が残っている。そして次の満月には、皆既月食が起きる。


 今見ても何も分からないことは知っているのに、どうしても確かめたくなってしまう。


「アリア」


 下からノルンの声が届いた。


「はぁい!」


「前を見てください」


「あ」


挿絵(By みてみん)


 慌てて顔を戻すと、庭の大きな木が思っていたより近くまで迫っていた。


 とはいえ、以前なら慌てて羽ばたいていたところを、今のアリアは身体を少し傾け、枝の手前で滑らかに進む方向を変えることができた。そのまま大きく弧を描きながら高度を落とし、芝生の上へゆっくり降りてくる。


「危なかった」


「今の飛び方なら避けられていましたけれど、湖を眺めながら飛ぶ練習ではありません」


「うん」


 背中の光の羽を小さくしながら、アリアはもう一度だけ湖を見た。


「気になるのは分かります」


 ノルンも隣へ並ぶ。


「でも、今見て分からないものを何度眺めても、急に答えが現れるとは限りませんよ」


「分かってるよ」


「なら、飛ぶ時は飛ぶことを考えてください」


「うん」


 素直に頷いたあと、アリアは少しだけ考えた。


「満月になったら、いっぱい見る」


「その時も前は見てください」


「見るよ!」


 少し離れたところにいたルカが笑った。


「昨日は『分からないことは調べる』で、今日は『飛ぶ時は前を見る』だね」


「いっぱい覚えることあるね」


「前を見るのは、もっと前から言われてると思うけど」


「知ってるよ?」


「ほんとかな」


「ほんと!」


 いつものやり取りが始まりかけたところへ、別邸の方からイレーネが歩いてきた。


「アリア様」


「なあに?」


「町から使いの方がいらしています」


「町?」


「ハイラムという方からです」


 その名前を聞いた途端、アリアの顔が上がった。


「ハイラムさん!」


 ノルンもすぐにイレーネを見る。


「何か見つかったのでしょうか」


「こちらを預かっています」


 差し出されたのは、小さく折り畳まれた一枚の紙だった。


 ノルンが受け取って開くと、アリアとルカも左右から覗き込む。


「なんて?」


「昨日、わたしたちが帰ったあとも記録を調べていたそうです」


「うん」


「その途中で、以前どこかで読んだ記録を一つ思い出し、探し直したところ見つかった、とあります」


「何が?」


 ノルンの目が最後の一行で止まった。


 一度だけ紙を読み直してから、アリアを見る。


「残された側の記録です」


「…………」


 昨日ハイラムが使った言葉を、アリアも覚えていた。


 これまで見つかっていたのは、突然知らない場所へ現れた「流されてきた側」の記録がほとんどだった。


 けれど今度は、その反対。


「わたしたちみたいな人?」


「詳しくは、行ってからですね」


「行く!」


「朝食を食べてからです」


「あ」


 アリアは一瞬だけ別邸へ顔を向けた。


「じゃあ早く食べる」


「いつも通りで大丈夫です」


「早く食べたら早く行けるよ?」


「きちんと噛んでください」


「はぁい」


 横でルカが笑った。


     ◇


 朝食を終えると、アリアたちは町へ向かった。


 昨日も歩いたばかりの通りを、今日はほとんど寄り道もせずに進んでいく。


 市場から魚を焼く香ばしい匂いが流れてくると、マルルの長い耳だけがぴんとそちらを向いた。


「お魚なの」


「帰りに見よう」


「帰りなの」


 それで終わった。


 アリアまで立ち止まらず歩き続けているので、今度はエミールの方が少し意外そうに見ている。


「今日は早いね」


「だって、ハイラムさん待ってるもん」


「昨日は店まで来るのに、もっと時間かかったのに」


「昨日は初めてだったから」


「今日は?」


「二回目!」


「そういう問題なのかな」


 ルカが笑う。


 古い通りへ入り、見覚えのある木の看板が見えてくると、アリアの歩幅がほんの少し大きくなった。


 扉を押すと、昨日と同じ古い紙と木の匂いがする。


「来たか」


 店の奥からハイラムが顔を出した。


 昨日より、さらに卓の上が散らかっている。


 広げられた地図の上へ本が重なり、その横には何束もの紙が積まれていた。昨日ノルンと一緒に選んだ記録も端へまとめられているが、その中央には一冊だけ、薄い記録帳が別に置かれている。


「いっぱい調べた?」


 アリアが尋ねる。


「見れば分かるだろ」


「寝た?」


「少しは」


「少しじゃ駄目だよ?」


「子どもに言われたくないな」


「わたしはいっぱい寝たよ」


「そうか。それは何よりだ」


 ハイラムは小さく笑うと、すぐに中央の記録帳へ手を伸ばした。


「こっちだ」


 皆が卓へ近づく。


「昨日、お前たちが帰ってから流された土地の記録をもう一度ひっくり返してたんだが、途中で一つ思い出した」


「残った人?」


「ああ」


 ハイラムは薄い記録帳を開いた。


「俺が今まで集めてきたものは、ほとんどが突然知らない場所へ現れた人間の記録だった。けれど昔、一度だけ、その逆から書かれたものを読んだことがあった」


「逆?」


「帰ってきたら、家族も住んでいた場所もなくなっていた人間の記録だ」


 アリアの身体が止まった。


 昨日、自分たちの話をした時にも同じ考え方は出てきた。


 けれど今度は、何百年も前に同じ側へ残された誰かが本当にいたという。


「家族だけ?」


「いや」


 ハイラムは首を横へ振った。


「小さな集落ごとだ」


 ルカも一歩近づく。


「じゃあ、僕たちと似てる」


「そうだな」


 ハイラムは記録帳を皆から見える方へ向けた。


「三百年ほど前の地方記録だ。ただし原本ではない。当時残された記録を、後の時代に書き写したものらしい」


 ノルンが頁へ目を落とす。


「今の文字にかなり近いですね」


「読めるか?」


「はい」


 ハイラムが一瞬だけ何とも言えない顔をした。


「今日はもう驚かないぞ」


「何がです?」


「何でもない」


 ルカが口元を押さえた。


「なんて書いてあるの?」


 アリアが待ちきれず尋ねる。


 ノルンは最初の数行を確かめてから、ゆっくり内容を追っていった。


「ある商人が、仕事で数日間、自分の村を離れていたそうです」


「お仕事?」


「はい。用事を終えて、いつもの道を通って村へ帰りました」


 アリアは黙って続きを待つ。


「ところが、村があるはずの場所へ着くと、家も、家族も、そこに暮らしていた人たちも、すべていなくなっていたそうです」


 アリアの手が、白いポシェットへ触れた。


 いつもの道を帰った。


 知っている場所へ戻った。


 なのに、そこにあるはずのものがない。


 自分たちと、よく似ている。


「その人、どうしたの?」


「探しています」


「どこを?」


「近くの町や村へ行き、知っている人へ尋ね、それでも見つからなかったので、さらに遠くまで探しに行ったと書かれています」


「見つかった?」


 ノルンは首を横へ振った。


「少なくとも、この時には」


 アリアは古い文字の並ぶ頁を見つめた。


「ずっと探したの?」


「はい」


 今度はハイラムが数頁先を示した。


「七年だ」


「七年?」


 アリアが顔を上げる。


「ああ」


「ずっと?」


「途中で仕事をしながらだろうが、記録を見る限り、探すこと自体はやめていない」


 七年。


 六歳のアリアには、想像するのも難しいほど長い時間だった。


 自分が今まで生きてきた時間よりも長い。


「その人ね」


 アリアは小さな声で言った。


「ずっと会いたかったんだね」


「そうだろうな」


 ハイラムの声も、少しだけ静かになった。


 ノルンが続きを追う。


「そして、村がなくなってから七年後、旅の途中で泊まった土地の近くに、大きな泉があったそうです」


「水」


 ルカがすぐに反応した。


「はい」


 アリアの目も頁へ戻る。


「その泉で何かあったの?」


「夜に、見たものがあったようです」


「お月さま?」


「月についても書かれています」


 ノルンの指が一行を追った。


「『月の欠けし夜』と」


「月食?」


「その可能性が高いと思います」


 するとハイラムが、横に用意していた別の紙を取り出した。


「そこは昨夜調べた」


「分かったの?」


「ああ。この記録に書かれている時期と、当時の天文記録が合っている。その地方では、その夜に月食が見られたはずだ」


「ほんとに?」


「記録が正しければな」


 ハイラムはそこだけはきちんと付け加えた。


 ノルンも頷く。


「原本ではありませんから、その点は忘れない方がいいですね」


「ああ」


 アリアは二人を見比べた。


「でも、似てるね」


「似ています」


「次も読む?」


「もちろんです」


 ノルンが頁へ視線を戻す。


 しばらくして、その目が一つの行で止まった。


「……故郷を見た、とあります」


「え?」


 アリアが聞き返す。


「泉の水面に、自分が探し続けていた村が見えたそうです」


 店の中が静かになった。


「家族も?」


「人の姿らしきものも見えた、と」


「行った?」


 アリアは思わず卓へ身体を寄せる。


「その人、行ったの?」


「行こうとしています」


「どうやって?」


「泉へ入りました」


 アリアの眉が寄った。


「危ないよ」


「今、自分で言ったね」


 ルカが横を見る。


「分かってるよ。夜のお水は危ないもん」


「ちゃんと覚えたんだ」


「いっぱい言われたもん」


 少しだけ空気が和らいだものの、ノルンの目はまだ記録へ向いたままだった。


「ですが、その人は辿り着けなかったそうです」


 アリアの指が、ポシェットの布をわずかにつかんだ。


「見えてるのに?」


「はい」


「どれだけ行っても?」


「水へ入り、景色の方へ進んでも、見えている村との距離は変わらなかったと書かれています」


「……まただ」


 ルカが小さく呟いた。


「求むる者は辿り着けず」


 アリアが、古い歌の一節を口にする。


 ノルンはすぐには答えず、もう一度同じ行を確かめてから頷いた。


「よく似ていますね」


「同じ?」


「そこまでは言えません」


「そっか」


 アリアは少しだけ残念そうにしたものの、それ以上は言わなかった。


 昨日から何度も聞いている。


 似ているからといって、同じだとは限らない。


「その人、ずっと水の中歩いてたの?」


「途中で、一緒に旅をしていた人たちに止められています」


「よかった」


 アリアが小さく息を吐く。


「そのあと、村は?」


「見えなくなったそうです」


「いつ?」


「月食が終わる前だったのか、そのあとだったのかまでは書かれていません」


「もう一回見た?」


 ハイラムが首を横へ振った。


「そこが、この記録の大事なところの一つだ」


「見なかったの?」


「ああ」


 商人はその後も、何度か同じ泉へ足を運んでいた。


 同じ時刻に立ったこともあり、別の満月にも訪れている。


 けれど記録に残っている限り、故郷らしき景色を二度と見ることはなかった。


「じゃあ、一回だけ?」


「ああ」


 アリアの肩がほんの少し下がる。


「月食だったから?」


「それは分からない」


 ハイラムが答えた。


「ただ、いつでも同じものが見えるわけではなかったことは分かる」


「見るための何かがいる?」


 アリアが尋ねると、ノルンは少し考えてから答えた。


「何らかの条件がある可能性は、昨日より高くなりましたね」


「月食?」


「それも候補の一つです」


「水?」


「それも」


「ほかは?」


「まだ分かりません」


「まただ」


「またです」


 アリアは少しだけ笑った。


     ◇


「でも」


 ハイラムは記録帳を閉じなかった。


「これをわざわざ呼びに行かせたのは、そこだけじゃない」


「まだあるの?」


「ああ」


 記録帳の後ろの方へ頁をめくる。


「この商人は、その一度の出来事をずっと考え続けていたらしい」


「七年のあとも?」


「さらに何年もだ」


 アリアは黙って頁を見た。


 家族を探し続けた七年間。


 ようやく水の向こうに故郷らしきものを見つけた。


 それなのに、そこへは行けず、二度と同じ景色を見ることもできなかった。


 それでも、その人は考えることをやめなかった。


「最後の方に、本人が残したらしい言葉が書き写されている」


 ハイラムが一つの行を指した。


「ノルン」


「はい」


「ここを」


 ノルンが顔を寄せる。


 それほど古い文字ではないらしく、今度はほとんど間を置かなかった。


「『我が見たるは故郷にあらず』」


 アリアが瞬いた。


「違ったの?」


「続きがあります」


 ノルンは次の行へ目を移した。


「『故郷へ通ずるものを、水が映したのであろう』」


「…………」


 今度は、誰もすぐには口を開かなかった。


 アリアは、聞いた言葉を頭の中でゆっくり考えた。


「お家を見たんじゃないの?」


「この方は、晩年にはそう考えていたようですね」


 ノルンが答える。


「水面に見えた村そのものへ行こうとしても辿り着けなかった。だから、自分が見ていたものについて、別の考え方をするようになったのでしょう」


「故郷へ通ずるものって?」


「それは書かれていません」


「本人にも分からなかった?」


「おそらく」


 アリアは少し黙った。


 その時、「門」という言葉が頭の中へ浮かんだ。


 けれど、すぐには口にしなかった。


 古い歌には「門」とある。


 別邸で見つけた言葉には「境」とあり、ハイラムの先祖は「水は道にあらず、境であった」と残している。


 そして今度は、別の時代を生きた商人が、水に映ったものを「故郷へ通ずるもの」だと考えた。


 よく似ている。


 けれど、まだ同じものだとは分からない。


「ノルン」


「はい」


「これも比べる?」


「もちろんです」


「歌とも?」


「はい。ただし」


「同じって決めない?」


「その通りです」


「覚えたよ」


「よくできました」


 アリアが少し嬉しそうに笑う。


 横ではルカも、記録帳を見つめたままだった。


「でもさ」


「うん?」


「この人、僕たちと似てるよね」


「うん」


「村の外にいて、帰ったらなくなってた」


「あ」


 アリアも気づく。


 ハイラムが頷いた。


「俺もそこが気になった」


「お仕事で村の外にいたから、残った?」


「少なくとも、この記録はその考え方と矛盾しない」


 ハイラムは慎重に答えた。


「この商人が村にいたら一緒に流されたのか、それとも別の理由があったのか、そこまでは分からない。ただ、村の外にいた人間がこちら側へ残った例が、ほかにも一つ見つかったことにはなる」


 アリアはルカを見る。


「わたしたちも森にいたね」


「うん」


「マルルも」


「ぼくもいたなの」


 足元から返事が来る。


 ノルンは記録へ目を向けたまま、静かに言った。


「村の外にいたことが関係している可能性は、昨日より少し高くなったと考えてよさそうですね」


「分かった?」


「少しだけ」


「少しでも増えた」


「そうですね」


 アリアは、それで十分らしく頷いた。


     ◇


 それからしばらく、ハイラムは昨夜見直した資料を一つずつ見せてくれた。


 水辺で起きたことが分かるものや、月食との時期を比較できるもの。突然現れた土地や家、知らない場所へ流れ着いた人々について書かれたものに、水の向こうへ元いた場所らしき景色を見たという記録まである。


 ただし、それらすべてがきれいに同じ条件を持っているわけではなかった。


 月食について何も書かれていないものもあれば、水辺と関係していたのか分からないものもある。出来事から何十年も経ったあと、誰かが聞き取って書き残したものまで混じっていた。


「全部、本当なの?」


 アリアが尋ねた。


「分からない」


 ハイラムはあっさり答える。


「昔話が混ざっている可能性もあるし、何度も書き写されるうちに内容が変わったものもあるだろう」


「じゃあ、使えない?」


「そうとも限らない」


「どうして?」


「一つだけなら、誰かの勘違いかもしれない」


 ハイラムは卓の上へ並んだ記録を見渡した。


「でも、遠く離れた土地で、互いのことを知らない人間が似たような話を残していたら、少し意味が変わってくる」


「同じのがいっぱいあったら?」


「本当に何かが起きていた可能性は高くなる」


「ああ」


 アリアは納得したように頷いた。


 その横では、ノルンがすでに関係のありそうな資料を自分なりに分け始めている。


「ノルン」


「はい」


「それ全部読むの?」


「読みます」


「今日?」


「今日だけでは無理です」


「よかった」


「何がです?」


「帰れないのかと思った」


「帰ります」


「おやつあるもんね」


「それはアリアでしょう」


「うん」


「迷いなく認めたね」


 ルカが吹き出した。


 エミールまで笑い、ハイラムも肩を揺らす。


 少し重くなっていた店の空気が、ようやくいつもの調子へ戻った。


     ◇


 店を出る頃には、昼をずいぶん過ぎていた。


「お腹すいた」


 通りへ出た途端、アリアが言う。


「さっきまで三百年前の大事な記録を読んでたのに」


 ルカが笑った。


「大事なお話してても、お腹すくよ?」


「それはそうだけど」


「お魚なの!」


 今度こそ、マルルの長い耳が市場の方へまっすぐ向いた。


「朝の覚えてたんだ」


「マルルは忘れないなの」


「じゃあ、帰る前に見よう!」


 アリアは市場へ向かおうとしてから、一度だけ振り返った。


 古びた店の扉は、まだ半分開いている。


 その向こうでは、ハイラムがもう次の紙を広げていた。


 何百年も前にも、帰ってきた時には家族も村もなくなっていた人がいた。


 その人は七年間探し続け、やっと一度だけ、水の向こうに帰りたかった場所らしき景色を見た。


 けれど、そこへは辿り着けなかった。


 そして何年も考え続けた末に、水が映していたのは故郷そのものではなく、「故郷へ通ずるもの」だったのかもしれないと書き残した。


 その人が見たものが本当は何だったのか、今となってはもう本人に聞くことはできない。


 それでも、次の満月、皆既月食の夜にミレア湖の水面へ同じようなものが現れるのなら。


「わたしも、見えるかな」


 ぽつりと口からこぼれた。


「アリア!」


 先へ歩いていたルカが振り返る。


「置いてくよ」


「待って!」


 アリアはすぐに皆の方へ駆けていった。


 答えは、まだ何一つ決まっていない。


 それでも、何を確かめればよいのかは、昨日よりほんの少しだけ増えている。


 満月まで、あと二週間ほど。


 今度はただ水の向こうへ進むのではなく、そこに何が見えるのかを、きちんと確かめなければならなかった。

★お読みいただき、ありがとうございます★


朝の練習風景の動画はこちらから

↓↓↓

https://www.instagram.com/reel/Dc8viw0JBkn/?stkn=MTF1c2p3eGQybTB3ZA==

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