あと3日 〜カフェ〜
いいね。この回は**「事件を起こす回」じゃなくて、「クラスみんなで作った文化祭が成功していることを描く回」**にすると、95話の「終わっちゃった」が何倍も効いてくる。
神崎や白石だけじゃなく、クラス全員が輝いている青春回を意識して書いてみたよ。
## 第92話 みんなで作った場所
一年一組の教室。
「いらっしゃいませ!」
元気な声が廊下まで響く。
文化祭が始まってから数時間。
教室は途切れることなく来場者で賑わっていた。
入口では桐生が笑顔でお客さんを案内し、席へ誘導している。
「四名様ですね! こちらへどうぞ!」
奥では飲み物を作る生徒たちが慌ただしく動き回る。
「アイスティー二つ!」
「了解!」
「次、コーヒーできた!」
注文の声が飛び交い、教室は活気に満ちていた。
◇
神崎は注文票を確認しながらテーブルを回る。
「お待たせしました。」
飲み物を置くと、小さな女の子が目を輝かせた。
「お兄ちゃん、ありがとう!」
「ああ。」
その笑顔に、神崎も自然と表情が和らぐ。
準備は大変だった。
放課後に何度も残り、机を運び、飾り付けをし、配置を変えた。
その時間が、今こうして形になっている。
「神崎!」
桐生が声を掛ける。
「入口頼む!」
「分かった。」
返事をして、また持ち場へ向かった。
◇
一方、白石はダンスの出番までの時間、カフェの手伝いに入っていた。
「こちら、お下げしてもよろしいですか?」
「はい、ありがとう。」
空いた食器を片付けながら、教室を見渡す。
どの席にも笑顔があった。
友達同士で写真を撮る人。
親子で楽しそうに話す人。
卒業生らしき人が懐かしそうに教室を見回している。
(こんなに来てくれるなんて……。)
思わず胸が熱くなった。
◇
「白石さん。」
近くで接客していた女子が笑う。
「この前まで『お客さん来なかったらどうしよう』って言ってたのにね。」
「う、うん。」
白石も照れ笑いを浮かべる。
「あの時は本当に心配だったから。」
「今は大成功じゃん!」
教室を見回す。
満席。
入口には次のお客さんが並んでいる。
その光景だけで十分だった。
◇
「すみません。」
年配の女性が白石を呼び止めた。
「この飾り、とても素敵ね。」
「あ……ありがとうございます。」
「手作りでしょう?」
「はい。みんなで放課後に作りました。」
「いいクラスね。」
その一言が、何より嬉しかった。
誰か一人が頑張ったわけじゃない。
みんなで作った教室。
だから褒められると、自分のことのように嬉しい。
◇
少し離れた場所では、神崎が忙しく動いている。
注文を受け、飲み物を運び、お客さんを案内する。
(忙しそう。)
でも、その表情はどこか楽しそうだった。
白石は思わず笑みを浮かべる。
その時、神崎もこちらに気付いた。
一瞬だけ目が合う。
神崎は小さく頷いた。
白石も笑顔で頷き返す。
言葉はない。
けれど、それだけで十分だった。
◇
昼を過ぎても、人の流れは途切れない。
「神崎!」
「次、理系部の当番だぞ!」
「了解。」
神崎はエプロンを外しながら苦笑した。
「今日は本当に忙しいな。」
「実行委員までやってるからね。」
桐生が笑う。
「倒れるなよ。」
「倒れない。」
そう言って教室を出ていく神崎の背中を、白石は少しだけ目で追った。
(頑張ってるな。)
その姿を見るたびに、自分も頑張ろうと思えた。
◇
カフェは最後まで賑わっていた。
笑い声。
食器の触れ合う音。
「ありがとうございました!」という元気な声。
教室いっぱいに広がる、そのすべてが心地よい。
文化祭は、まだ一日目。
けれど一年一組のみんなは、この教室で確かに同じ時間を過ごしていた。
誰か一人ではなく、みんなで作った文化祭。
その思い出は、少しずつ、一人ひとりの心に刻まれていくのだった。




