あと3日 〜神崎編〜
今日2話目‥かな?
## 第90話 忙しい一日
「いらっしゃいませ!」
文化祭が始まると同時に、校舎は一気に賑やかになった。
廊下には来場者が行き交い、あちこちから笑い声が聞こえてくる。
神崎は実行委員として校内を回っていた。
「一年三組、準備完了です。」
「理科室前、人が少し詰まっています。」
「了解。」
先生や実行委員同士で声を掛け合いながら、案内や誘導を行う。
大きな問題はない。
それだけで十分だった。
◇
一段落すると、神崎は一年一組の教室へ戻った。
「神崎!」
桐生が手を振る。
「ちょうどよかった!」
「注文が増えてきた!」
「分かった。」
神崎はすぐにエプロンを着け、注文票を受け取る。
「こちらアイスコーヒー二つ!」
「了解。」
厨房役へ伝え、完成した飲み物を運ぶ。
「お待たせしました。」
「ありがとうございます!」
来場者の笑顔を見るたび、自然と肩の力が抜けていく。
準備は大変だった。
でも、その分だけやりがいがあった。
◇
「神崎くん。」
後ろから声がした。
振り返ると、白石だった。
今日はカフェ担当ではないが、ダンスの合間に教室へ戻ってきたらしい。
「お客さん、すごいね。」
「ああ。」
「思ったより忙しい。」
「よかったね。」
白石は嬉しそうに教室を見回す。
みんなが笑顔で動いている。
その光景を見ているだけで、自然と笑みがこぼれていた。
「じゃあ、また体育館行ってくる。」
「頑張れ。」
「神崎くんも。」
短い会話だけ交わし、白石は教室を出ていった。
神崎も再び接客へ戻る。
◇
昼前。
交代の時間になり、神崎は理系部の展示へ向かった。
「お、来たか。」
樹が笑う。
「どうですか?」
「結構人気だぞ。」
展示スペースでは、小学生くらいの子どもが透明な箱を前に悩んでいた。
「赤が一番出そう!」
「本当に?」
家族で楽しそうに話している。
「引いてみて。」
球を取り出す。
「やった!」
「当たった!」
嬉しそうな笑顔が広がる。
その様子を見て、神崎は少しだけ安心した。
「面白いですね。」
子どもの父親が笑顔で言う。
「確率って難しいと思ってたけど、意外と分かりやすい。」
「ありがとうございます。」
神崎は自然と頭を下げた。
昨日、樹に言われた言葉を思い出す。
『来た人の反応、ちゃんと見とけ。』
確かに、その通りだった。
楽しそうに遊んでくれる姿を見るだけで、この展示を考えてよかったと思えた。
◇
午後も慌ただしい時間が続く。
実行委員。
カフェ。
理系部。
行ったり来たりを繰り返しているうちに、あっという間に時間が過ぎていく。
廊下ですれ違うたびに、白石の姿が目に入る。
ダンス担当として忙しそうに動き回っていた。
目が合えば軽く会釈をする。
ただ、それだけ。
それが今の二人には自然だった。
◇
気が付けば、時計の針は夕方へ近付いていた。
「神崎、お疲れ!」
桐生が笑いながら肩を叩く。
「忙しかったな。」
「ああ。」
その一言しか出てこない。
けれど、不思議と疲れは心地よかった。
文化祭一日目は、まだ終わらない。
それでも神崎は、この一日が充実していたことを、少しだけ実感していた。
あともう一話、読んでください!




