あと5日 〜白石編〜
せつない。
「神崎くんね。」
生田の声が、静かな廊下に響く。
「一週間以内に、誰かへ告白する約束をしたらしいの。」
「……え?」
思わず声が漏れた。
何を言われたのか、すぐには理解できない。
神崎くんが。
告白。
一週間以内に。
頭の中で言葉だけが何度も繰り返される。
◇
――その日。
朝、教室へ入ると、神崎くんはいつもの席で本を読んでいた。
窓から差し込む朝日を受けながら、静かにページをめくっている。
(今日も、いる。)
その姿を見るだけで、少しだけ安心する。
「美月、おはよう。」
「おはよう。」
生田と挨拶を交わしながら席へ向かう。
神崎くんは相変わらず本に集中していて、私たちの方を見ることはなかった。
それでも。
いつも通りの朝だった。
◇
文化祭の準備で朝から教室は慌ただしい。
「この飾り、もう少し右かな?」
「そっち押さえて!」
みんなが忙しく動き回る中、神崎くんも実行委員として教室中を歩き回っていた。
「神崎!」
「ガムテープ!」
「今持ってくる。」
誰かに呼ばれては動き。
また別の誰かに呼ばれては答える。
(大変そう……。)
それでも嫌な顔はしない。
きっと責任感が強いから。
そんなところも、神崎くんらしいと思った。
少しして。
「神崎くん。」
私は小さな木のプレートを持って声を掛けた。
「これ、どこに付ければいいかな?」
神崎くんは教室を見回してから答える。
「入口の横かな。」
「あ、そっか。」
「ありがとう。」
言われた場所へ向かいながら、少しだけ嬉しくなる。
◇
昼休み。
教室では文化祭の準備が続いていた。
看板を取り付けたり、机を運んだり。
みんなが慌ただしく動いている。
その時だった。
「神崎くん。」
私は脚立の近くまで歩いていく。
「脚立使う?」
「いや、大丈夫。」
一度はそう返ってきた。
でも。
脚立が少しだけ揺れる。
「じゃあ押さえてるね。」
返事を待たずに、脚立へ両手を添えた。
「……。」
神崎くんは何も言わず、そのまま飾り付けを続ける。
脚立越しに見える横顔は真剣だった。
文化祭を成功させよう。
きっと、それしか考えていない。
(頑張ってるな。)
私は脚立が動かないように、そっと力を込める。
しばらくして。
「終わった。」
神崎くんが脚立から降りる。
「ありがとう。」
たった一言。
それだけなのに。
胸の奥が少しだけ温かくなる。
「ううん。」
笑顔で返すのが精一杯だった。
今日も。
ほんの少しだけ。
神崎くんの役に立てた気がした。
ちゃんと相談できた。
ちゃんと答えてくれた。
それだけで十分だった。
放課後までは。
◇
「神崎くんね。」
生田の声が、現実へ引き戻す。
「一週間以内に、誰かへ告白する約束をしたらしいの。」
「……え?」
白石編と白石家編があります。どっちも読んでください。
白石言え編のほうが大事です。




