あと5日 〜神埼編〜
今日は四話投稿予定です。19:00分頃にあと二話を公開するのでそちらも見てください。
木曜日。
文化祭まで、あと二日。
朝から教室は慌ただしかった。
「神崎!」
「ガムテープなくなった!」
「分かった。」
返事をして、倉庫へ向かう。
文化祭実行委員になってから、こんなやり取りは何度目だろう。
必要な備品を借りに行き、足りない物を確認し、クラスへ運ぶ。
その繰り返しだった。
◇
「ありがとう!」
ガムテープを渡すと、男子たちはすぐに看板作りへ戻っていく。
教室を見渡せば、数日前とは別の場所のようだった。
壁にはレンガ風の装飾。
窓際には観葉植物。
カフェの看板も、ほとんど完成している。
(あと少しだな。)
文化祭実行委員として見ると、細かい修正点はいくつもある。
だが、それでもクラス全員が少しずつ形にしてきた成果が見えていた。
◇
「神崎くん。」
声を掛けられ振り向く。
白石だった。
「これ、どこに付ければいいかな?」
手には小さな木製プレートがある。
カフェの案内板らしい。
神崎は教室を見回した。
「入口の横かな。」
「あ、そっか。」
「ありがとう。」
白石は頷くと、小走りで入口へ向かっていった。
少しして。
「神崎ー!」
今度は桐生が呼ぶ。
「こっち手伝って!」
「ああ。」
今日は一日中、誰かに呼ばれている気がした。
◇
昼休み。
本来なら休憩時間だが、教室にはほとんどの生徒が残っている。
それぞれ自分の担当作業を進めていた。
「神崎。」
桐生がカッターを動かしながら笑う。
「実行委員、大変だな。」
「まぁ。」
「文化祭終わったら倒れるなよ。」
「終わったら休む。」
「真面目だなぁ。」
そんな会話をしていると。
「神崎くん。」
また白石だった。
「脚立使う?」
「いや、大丈夫。」
「じゃあ押さえてるね。」
神崎が飾りを貼っている間、白石は脚立が動かないように両手で支えていた。
作業が終わる。
「ありがとう。」
「ううん。」
それだけ言って、白石はダンス班の方へ戻っていく。
(助かった。)
脚立は意外と不安定だ。
支えてくれる人がいるだけで作業はやりやすい。
それ以上でも、それ以下でもない。
◇
放課後。
体育館から音楽が聞こえてくる。
ダンスの最終確認が始まったらしい。
一方、神崎は教室でカフェの備品を確認していた。
コップ。
メニュー表。
注文票。
不足はない。
「神崎。」
文化祭実行委員長が教室へ入ってくる。
「各クラスの準備状況を確認するぞ。」
「はい。」
神崎はチェック表を手に取り、先生と一緒に廊下へ出た。
文化祭まで、あと二日。
成功するかどうかは、最後の準備にかかっている。
だから今は、それだけを考えればいい。
一週間ルールのことは。
忙しさの中で、ほんの少しだけ頭の隅へ追いやられていた。
次の投稿は9/16日です。




