あと7日 〜白石編〜
第三章スタートです。この1週間が第三章となります。長い間待たせてしまいすみませんでした。
今日は「あと6日」を3話公開しています。なるべく順番に見てください。
水曜日。
朝の教室は、いつもと変わらない賑やかさだった。
「美月、おはよう!」
教室へ入ると、生田が笑顔で手を振る。
「おはよう。」
白石も小さく笑って席へ向かった。
窓際では神崎が一人、読書をしている。
朝から誰かと話すこともなく、静かにページをめくっていた。
(今日も、いつも通り。)
それだけなのに、少し安心する。
神崎が学校を休むことなんてほとんどない。
ちゃんと教室にいて、いつもの席で本を読んでいる。
そんな当たり前の光景が、白石にとっては嬉しかった。
「美月?」
「えっ?」
「また見てる。」
生田が小さく笑う。
「ち、違うよ。」
「そう?」
「うん……。」
慌てて視線を逸らす。
神崎はこちらを見てもいなかった。
だからこそ、少しだけほっとする。
◇
昼休み。
文化祭まであと数日。
教室では、最後の確認があちこちで行われていた。
「カフェのメニュー表、ここでいい?」
「うん、大丈夫。」
「ダンスの立ち位置、もう一回確認しよう。」
白石もダンス担当の女子たちと集まって話し合う。
「神崎くん、昨日より踊れるようになってたよね。」
一人の女子がそう言った。
「うん。」
思わず頷く。
「いっぱい練習してたもん。」
「実行委員なのに大変そう。」
「でも真面目だからね。」
自然と笑みがこぼれる。
神崎は、不器用だけど手を抜かない。
できるようになるまで何度でも練習する。
そういうところを知っているから。
(応援したくなるんだよね。)
◇
放課後。
体育館。
ダンスの練習が始まる。
「五、六、七、八!」
音楽に合わせて体を動かす。
神崎も少しぎこちないながら、一つひとつ確認するように踊っていた。
以前よりずっと自然になっている。
「神崎くん。」
休憩中、白石は勇気を出して声を掛けた。
「昨日より上手くなってる。」
「そうか?」
「うん。」
「ありがとう。」
それだけ。
短い返事。
でも神崎は少しだけ口元を緩めた気がした。
(……気のせいかな。)
いや。
気のせいでもいい。
褒めたことを素直に受け取ってくれた。
それだけで十分嬉しかった。
◇
練習が終わる頃には、外は夕焼けに染まっていた。
「お疲れさま!」
「また明日ね。」
みんなが体育館を出ていく。
白石も鞄を持って昇降口へ向かった。
校門を出ると、少し前を神崎が歩いているのが見えた。
一人で、自転車を押しながら帰っていく。
(今日も頑張ってたな。)
その背中を見送るだけで満たされた気持ちになる。
話しかける勇気はない。
並んで帰れるわけでもない。
それでも。
同じ学校で、同じ時間を過ごせるだけで幸せだった。
白石は小さく微笑み、自分も帰り道を歩き始めた。
その頃。
神崎が「一週間」という約束を胸に過ごしていることを。
白石は、まだ何一つ知らなかった。
次の投稿は9/13日になります。いつも通り18:00公開です。




