文化祭 1週間前
文化祭まで後1週間です。
文化祭まで、あと一週間。
一年一組の教室は、放課後になると別の教室のようだった。
机は端へ寄せられ、床には段ボールや色紙が広がる。
「こっちテープ!」
「誰かハサミあるー?」
「看板もう少し左じゃない?」
教室中が慌ただしく動いている。
神崎悠真は教室前方で、女子の実行委員と準備表を確認していた。
「カフェ班は今日で装飾を終わらせる。」
「ダンス班は明日、最後の通し練習。」
「終わらなかった班は金曜日に続き。」
短く伝えるだけで、クラスメイトは自然と動き始める。
「了解!」
「よし、やるか!」
そんな様子を見ていた桐生が笑う。
「お前、最初よりだいぶ慣れたな。」
「そうか?」
「最初は"勝手にやって"って感じだったじゃん。」
神崎は少し考えてから答えた。
「みんな協力してくれるから。」
「俺がやることは少ない。」
「いや、それができるのがお前なんだよ。」
桐生は笑いながら肩を叩いた。
◇
一方、教室の後ろでは。
「美月、そのリボンお願い!」
「うん!」
白石と生田、陽菜たちが店内の飾り付けを進めていた。
完成したガーランドを窓際へ飾る。
「かわいい!」
「カフェっぽくなってきた!」
生田が満足そうに笑う。
白石も教室を見回した。
最初は何もなかった教室が、少しずつ文化祭らしく変わっていく。
「なんか楽しみだね。」
「うん。」
自然と笑顔になる。
◇
「神崎くん。」
白石が近付く。
「ん?」
「これ、どこに付ければいい?」
手には「WELCOME」の文字が書かれた大きな看板。
神崎は教室を見渡した。
「入口の上かな。」
「脚立使う。」
「分かった。」
白石が脚立を持ってこようとすると、
「俺がやる。」
神崎が先に持ち上げた。
「白石は下で支えて。」
「え、うん。」
神崎は脚立に登る。
白石は脚立の足をしっかり押さえた。
「もう少し右。」
女子実行委員が声を掛ける。
神崎が少し動かす。
「そこ!」
看板が固定される。
教室の入り口が、一気に華やかになった。
「おぉー!」
教室から拍手が起こる。
「いいじゃん!」
「文化祭って感じ!」
神崎が脚立を降りる。
「ありがとう。」
白石が笑って言う。
「支えてくれて助かった。」
神崎は短く答えた。
「こっちこそ。」
「落ちたら困るから。」
白石は思わず笑う。
「そうだね。」
◇
作業も終盤。
教室を見渡した担任が満足そうに頷く。
「いい感じになってきたな。」
「この調子なら本番までに間に合いそうだ。」
クラスから安堵の声が上がる。
「よかったぁ!」
「あと少し!」
夕日が教室に差し込む。
オレンジ色の光の中、飾り付けられた教室はいつもより少しだけ特別に見えた。
◇
帰り支度をしていると、生田が白石の耳元で小さく囁いた。
「ねぇ。」
「ん?」
「今日も自然だったね。」
「え?」
「神崎くんと。」
白石は少し照れる。
「普通に話せるようになってきたでしょ?」
「……うん。」
少し前なら、話しかけるだけでも緊張していた。
今は違う。
まだ緊張はする。
でも。
ちゃんと笑って話せる。
それだけで嬉しかった。
◇
教室の電気が消される。
廊下へ出た神崎は、完成に近づいた教室を振り返った。
「あと一週間か。」
ぽつりと呟く。
文化祭まで、あと七日。




